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GEケーススタディ(人事制度)

数年も前に一度整理してみた内容ですが、

GEはジェックウェルチが最高経営責任者(1981-2001)の時、さらに業績を伸ばしたアメリカのコングロマリット企業です。家電から航空機のエンジンまで製造しています。

ここからはジェックウェルチが手掛けて業績を伸ばすことが出来た9ブロックの廃止についてその背景から話そうと思います。

1.9ブロック廃止の背景

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・産業がIT中心にパラダイムシフトしたことにより、スピーディな経営、変化に対応するには9ブロックは適切では無くなった
・長年管理のGEを支えてきた「9ブロック」と言う人材のランク付けは、個々が持っているポテンシャルを引き出すことが出来ず、個人の成長に制限を掛けていた

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2.9blockから評価レーティング廃止へ

9blockによる5段階評価(~2015)

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9ブロックの構成は、①優秀20% ②協力な貢献者+要改善70% ③ミスマッチ10%を解雇すると言った人事評価の仕組みである

3.9ブロックの廃止後向かった人事評価制度の方向は

評価レーティング無し(2016~) 

・社員の評価制度としてレーティングを付けず、何をどのように(GE信条)を
考慮してお客様/会社が重視する結果(インパクト)を評価し、昇給、賞与は直接決める

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4.GEの事業改革①

「不確実な時代で成長し続けるために」GEが身を置いている業界のパラダイムシフトにあわせて事業改革を踏み切った

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4.GEの事業改革②

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4.GEの事業改革③

常に変化し、先が見えない世界、私たちの働き方の指針が大きく変わります

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5.GEの事業改革詳細について①

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・米GE社が掲げる成長のための新構想。航空機のジェットエンジンや発電所のタービンシステム、鉄道車両、建設機械などをネットワークに繋げ、そこから、生み出されるビックデータを解析し、オペレーションの効率化や新たな顧客ニーズの発見につなげる取組みである。GE社はIoTビジネスを中心に据えて、既存事業の変革を図ろうとしている。

・昨今のビジネス環境は「VUCA」と呼ばれることがある。Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧模糊)の4つの頭文字からできている。

・加速度的な変化がこのVUCAを常態化する環境に如何に対応できるか?強い組織、強い人材が求められることは必然である。GE社もシリコンバレーにラボを作り、エンジニアを大量採用し、シリコンバレーの文化を積極的に導入している。


5.GEの事業改革詳細について②

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・米GE社はこれまで導入していた「シックス・シグマ」「ワークアウト」「CAP(チェンジ・アクセラレーション・プロセス)」という変革手法に加えて、「ファストワーク」という新たな製品開発プロセス手法を2012年頃から開始した。

・「ファストワークス」とは文字通り、「素早く働く」ことを意味する。システム開発でのキーワードである「アジャイル(俊敏さ)」と同義である。重厚長大企業の代表格であるGEに最も欠けていた「アジャイル」を求める革新的な取り組みといえる。

・「準備に時間をかけるのではなく、まずは作ってみる。顧客からは定期的にフィードバックを受け、必要あれば思い切って方向転換する」。

・まさに、デザイン思考的に「プロトタイプ」を作り、顧客とのコミュケーションの中で新たなインサイトを発見していき、プロダクト(またはサービス)の改善を図っていくプロセスを推し進めている。

・このようなアジャイルに対応する文化形成にとって、年2回の「9(ナイン)ブロック」評価がそぐわなくなってきた。期初に上司が部下と設定した目標も環境の変化により意味がなくなる。

GE社はカルチャー・チェンジに向けて、米ITスタートアップ企業やシリコンバレー系企業を調査・研究する。

6.意識改革のためにGEが手掛けた3つの秘策

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7.近年GEの業績が伸びず、人事制度の改革を強いられることになった問題について

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企業として、成果を追い求める姿勢、つまり、成果主義は当然捨て去ることはできない。しかし、これまでの目標管理(MBO)および評価システムは、成果を上げることに繋がっていたのか?

具体的な問題意識

①これまでのMBO-評価の仕組みは、社員が成果(パフォーマンス)をあげることを促進してきたか?
②年2回の評価フィードバックは、社員が成果(パフォーマンス)をあげることを促進してきたか?
③MBOで設定する「目標」は、誰のため、何のためにあるのか?
④上司が評価を決めるために使っている時間は果たして生産的なのだろうか?

最優先事項は、顧客の求める価値と会社にとってのインパクトであると再認識したのである。これが上記③
「目標」は、この「プライオリティへの注力」が重要となる。しかも、ビジネス環境の変化にアジャイルに対応するためには、この「プライオリティ」は変動する。よって、「プライオリティへの注力」にむけて、「目標」も変動する。年に2回の目標設定と評価では、パフォーマンスを上げることには寄与しなくなる。これが上記②
また、上司は部下の評価を決めるために、部下の査定のレポートの作成に多大な時間や工数をかけているが、「目標」が変動する状況のなかでは更なるレポート作成工数が発生する。これは全く生産的でない。これが上記④
結論として、これまでのMBO-評価の仕組みは、社員が成果(パフォーマンス)をあげることを促進できないことに考えが至る。これが上記①となる

8.GEの新人事制度についての概要

(数年前は変えたばかりで新人事制度と言ってよかったが、、とりあえず新人事制度とします)

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新人事評価(2016年~)
①No Rating(レイティングの廃止)
 SABCDなどのレイティングを付け、それを説明するためのプロセスを廃止
②No Curve(正規分布の廃止)
 評価の調整の際に、あらかじめ定めた正規分布率(ベルカーブ)に収めるのを廃止

9.新人事評価制度の運用 

<目標設定と1on1>

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上司と部下の接触頻度は、これまでは期初に多く、以降は頻度が下がる傾向にあった。それをGE社は以下のように転換する

①期初の上司と部下での「プライオリティの設定」
 期初に何を(プライオリティ)、どのように(GE Belief)を行うかを擦り合わせる。GE Beliefは、GE  Valuesが進化した求められるコンピテンシーである。プライオリティの設定基準は、会社やビジネスが重視する結果(インパクト)に依拠する

②上司と部下との「タッチポイント」
 「プライオリティの設定」後は、月2回程度の上司と部下の対話の場である「タッチポイント」を重視する
部下の活動の現状把握を行い、課題共有する
上司として、その部下の活動課題の解決に向けてのコーチングを行う
この対話を通じての「インサイト(本質的な洞察)」をリアルタイムに共有する
「プライオリティ」の変更があれば、このタッチポイントの場で行う

つまり、上司は部下を管理するのではなく、部下の成果に向けての活動をより促進する役割を担う、「パフォーマンス・ディベロップメント」が求められる

<評価と給与決定>

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評価
「タッチポイント」の結果を使用
①SABCDのレーティングは廃止
②部門評価会議にて、メンバの顔つきの組織図が広げられ、該当メンバーの報酬額を上長間で決定
③あらかじめ定めた正規分布率に収めるのを廃止
報酬額決め
①部門に報酬額原資が渡される
②上長間で、該当メンバーの「タッチポイント」を共有、議論し、報酬決定

10.GE新評価制度のまとめ

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少し長かったですが、以上です。

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