見出し画像

卒業制作日誌 (19)

どこの美大も卒業制作展をやる季節になったので、それを見に最近はよく出かけている。同じ専攻だったりとか、同じ素材を使っている作品を見比べてみると、それぞれの美大が力を入れているところの違いがわかったりして、面白いなと思う。

東京造形大学のアニメーション専攻の展示は、本当にあらゆる面でクオリティが高くて圧倒された。アニメーションそのものの技術や、演出、練り上げられた展開やテーマ。これだけすごい作品が作れるって、一体どんなカリキュラムなんだ…と思って調べてみて、愕然とした。私が卒業制作で苦しんでいた技法を、一年生のうちに学んでいる…!!しかも全員めっちゃうまい………当然、私よりもずっと………

正直言って、かなりショックを受けた。私が精神的に追い詰められ、休学せざるを得なかった原因の一つは、確実に自分の技量不足から来ている。もしも、アニメーションの考え方だけではなく、技術や方法そのものも大学でもっとしっかり学べていたなら、ここまで病むことはなかったんじゃないか…

こんなこと考えたってしょうがないんだけどさ、と前置きしつつ、このことを友人にこぼしたら、そりゃ受験生の時点じゃわからないよと答えが返ってきた。確かにそうだ。よくわからないけれどきっと大学はいいところなんだと信じて、がむしゃらに走っていたあの頃の自分に、このことを話しても言うことなんか聞かないだろう。それに、なんだかんだで私は自分の学科を気に入っている。他の大学とか学科に通っている自分の姿はイメージしづらい。

それでも、やはり思うところはある。卒業制作のベースになったのは、休学中に制作していた小さい規模の作品だった。一年卒業を遅らせた効果があって、やっと人に見せられるような作品が作れるようになったのだけれど、休学費がそれなりにしたのは痛かったなと思う(他の大学と比較してもマジで高すぎ。親にポンと出してもらう金額ではない。そもそも、精神ぶっ壊した人間にお金のことで悩ませないでくれ〜〜〜!!!!)。

勉強代、といえばそうなのかもしれない。あのとき、私は今すぐにでも休まなければならない状態だったし、休学する以外の選択肢はあり得なかった。休学したことを後悔はしていない。だけど…いくらなんでも、回り道をしすぎたような感じがする。自分のやりたい表現を早いうちに見つけて、技術を磨くことができたら、今頃は、もっと面白くて人を惹きつける作品が作れていたかもしれない…

最近、私の作品の魅力とか独自性ってなんなんだろうな、と考えることが多い。同世代の人が作った優れたアニメーション作品を見ると、自分の作品って下位互換に過ぎないのでは、という気持ちになる。作品を通して次はあんなことをやってみたいとか、こんなことを表現してみたいとか、そういうワクワク感よりも、もっと頑張らなければと焦る気持ちのほうが勝っている。

卒業制作をコンペに出すために、細かい箇所を修正してブラッシュアップしなくてはならないのだけれど、作品に向き合うのが怖くて、なかなか作業が進まない。もうすぐ学外の会場で行われる卒業制作展も、人に自分の作品を見られるのがやっぱりちょっと怖い。自分で参加を決めたものの、早く終わってくれないかなと少し憂鬱になっている。

悩んだって仕方がないのはわかっている。それでも、臆病でいることがやめられない。

大学のカリキュラムがどうこうとか、自分の作品のクオリティが高いとか低いとか、いくら悩もうが、作品自体が完成していることに変わりはない。それに、卒業審査会で私の作品を好きだと言ってくれたり、評価してくれた人は、ありがたいことに何人もいた。悩みのほとんどは、結局は妄想に過ぎないし、過去は取り戻せないし、今は目の前の事実を受け止めて励みにしていくしかないのだと思う。

大学生活は一応まだ残っている。わずかな時間で、悩む余裕がなくなるほど何かに没頭したりとか、忙しくしたりとか、あるいはどこかに旅行したほうがいい気がする。心を整えて、もう少し冷静に過ごしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?