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服も髪型もダサい姉が、一流の美容師である件

私の姉は美容師です。

「人の印象は髪型できまる」と言い張る姉はしかし、自分の見た目には頓着がない。

美容師のくせにだ。いつもおじさんのようなショートスタイル。切ってくれる人がいないから近所の美容室にいくとこうなるという。姉が美容師であることは、見た目にはわからないだろう。 

服装はさらにひどい。いつも母や私から服をもらい、無造作にそれを着ている。いつか私がコートを新調したときなどは、

姉「7万!?それが??そんなん買うなんて信じられへん」
私「でも長持ちするしな。10年着たら元取れるやんか」
姉「それやったらわたし3,000円のコート10年着るわ」

という調子でシワシワのダウンを着たりする。正直、スタイリッシュという言葉とは程遠いのが姉である。

その姉だが美容師としての腕はかなり良い。姉のカットを受けた人のリピート率が高いことがその証明。理由は単純で、「どこの美容室?」と周りの人に言われるから気分がいいのだ。自分の感覚以上に他人からの評価で気分はあがるもので、なかには他人に「その髪型はどこの美容室でできるんですか?」と街ナカで声をかけられた人までいるという。私がボブにしたときも、少なくとも周りの3名が「その髪型うらやましくて」とボブにしていた。残念だなと思うのが、その誰もが、思い通りのボブになっていないことだ。
その話を姉にしたついでに、「切るのうまいよね」と褒めた時のこと。姉はいった。

「私がうまいんじゃなくて、みんなが下手なんや」

やや目を剥いている私の髪に手際よくハサミをいれながら、姉は続けた。
姉はあくまで基本に忠実にハサミをいれていること。気をつけなければいけないのは、同じヘアスタイルにしたくても、アタマが違えばヘアカットの方法がかなり異なること。毛量や生え方が違うから考えて切らないといけないからちょっとコツがいるけどそこがおもしろいんだということ。初めて自分でカットした相手が二回目来てくれたときは、伸び方なども把握できて、どんどん切りやすくなるということ。そしてそれは専門学校でマネキンアタマで練習してるときにはわからないということ。さらに、就職した最初の美容室ではきちんと教えてくれる人がいなかったこと。(見習いというカテゴリだった姉は、まともに昼も食べれず、トイレもいけず膀胱炎、夜中の2時に毎日帰宅。で身体壊して親の忠告を受けいれ、退職)2店舗目の小さい美容室のマスターの技術を見て学んだということ。「美容師ですきバサミを乱用する人が多いねんけど、そこですきバサミは違うやろ!というところで使いよる」「私はハサミは3本で十分、たまに美容室で見かける腰ベルトに電気工事士のごとくハサミ備えている人は意味が分からん」とも。

美容師の世界や技術というのは、不器用な私は理解がないが、職人技であることは間違いない。私の夫も、妹の夫も、私の義母までも、それまで今ひとつだった髪型が、今では姉のカットにより垢抜け、妹の夫などは職場での受けがよくなり、10年以上通った美容室をやめて、姉を選んだ。切ったその日の見た目が良いのはもちろんであるが、特に凄いのは、数週間たって髪がのびても、髪型にエッヂがきいている感じがある点だ。

「やり方はあるねんけど、これは修行でしかないわ。私は上手い人に出会えて、近くで見て盗めたことが一番よかった。こういう切り方はどうしたら実現できるんや?って毎日思いながらうまい人を見て、人さまのアタマで試し続けて、少しずつ分かるようになった」

姉はいま自宅の一階を改装し、美容室としている。1名ずつで予約制だが、相変わらず、クチコミで人が絶えない。

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いい美容師に出会うのはわりと簡単ではないようで。

かくいう私も大学生頃まではいわゆる街のオシャレ美容室に行っていた。伸びきった髪を切りたくて、どんな髪型が似合うかプロに相談したいキモチで、担当してくれた30そこそこの女性美容師さんに「今日はどうしますか?」と聞かれ「実は決めていなくて・・・」と10代の私が申し出た時に言われた衝撃な一言。

「そう言われてもこっちも困るなあ・・・」

えーー!まじか。美容師に相談すんのあかんねや!

その人が美容師としての能力と志が低かった可能性が高いことが今ならわかるが、ドキドキしながら美容室に行く10代の少女が、二度と美容室には行きたくないと思うには十分の経験。結果、何ともいえないスカスカなセミロングに仕上がった自分をみて「あ、いい感じです」と無理に笑って、なかば泣きそうになりながらチャリこいで帰ったことはわりと忘れられない思い出。それ以来、美容室という場所にいけなくなった。お金を払って嫌な思いをなぜしなきゃならない。しかも、カット後の髪はしばらく、鏡を見るたびちょっと悲しくなるからやるせない。

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友人の三十半ばのキャリアウーマンたちは、いい美容師に出会うのは難しいとみんなが口をそろえる。しっくりくる美容師に出会えている人は、そういないらしい。たとえば電車に乗っていると、老若男女の7,8割が、なんだかなという髪型ではあるのを目にするため、あんまり上手でない美容師が多いというのは頷ける。

これを美容師の人がみたら怒るかもしれないし分かってくれるかもしれない。理想のヘアカットしたかったらどうしたらいいのか。姉の見解はこうだ。「理容師は、ちゃんとうまい人多い、ハサミの扱いちゃんと知ってる」

信じるか信じないかはあなた次第ですが。。(アドバイスも雑い)あとは、美容師も見た目じゃないかもしれない、という可能性で選んでみる、でしょうか。

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