戦略コンサルタントとアナリティクス専門家によって立ち上げられたデータインフォームド推進企業【株式会社ギックス】
資金調達額の推移
資金調達額合計は12億7400万円である。
(年度別の記載はなし)
企業概要
ギックスは、戦略コンサルタントとアナリティクス専門家によって立ち上げられた “データインフォームド(DI)”推進企業である。アナリティクスを活用し、あらゆる判断をデータに基づいて行えるように支援することで、クライアント企業の経営課題解決を実現している。データインフォームドとは、「データに基づく」という意味である。
事業概要
ギックスはクライアント企業の重要課題を理解し、競争力強化の道筋を検討する「Strategy」、膨大なデータを用いて網羅的体系分析や高度な予測と数理最適化を行う「Analytics」、仕組みに実装する「Technology」の3つの能力を保有する。それらを有機的に連携しクライアント企業のDI(Data-Informed:データを用いて考える思考態度)変革を支援する。また事業展開の中で得られた課題解決のためのノウハウや独自開発されたツール群を活用し、自社でプロダクト開発も行っている。同社は以下の3種類のサービスを提供している。
<DIコンサルティング>
業務上の判断をデータインフォームドにするための最良の方法を提案するコンサルティングサービス。最先端のアナリティクスを用いることで全件・全量・全粒度データ*を判断材料として活用可能にしている。どのようなデータが存在し、それをどういう風に用いていくべきか、そして加工方法、集計方法、蓄積方法を、さまざまな角度から検討し、実際に分析する。
<DIプラットフォーム>
DIコンサルティングを基に、データインフォームドな判断を業務に織り込むためのデータプラットフォームを構築し、データをタイムリーに蓄積・処理するデータ基盤を提供している。GCPを主体とするクラウドベースのデータ基盤とすることで、可用性と拡張性を高め、円滑な業務を推進している。
<DIプロダクト>
DIコンサルティングやDIプラットフォームでは大手企業に向けたサービスを一品一様で提供しているが、一方で顧客となる業界や業務領域で共通する課題が検出されることがある。この場合のために、共通課題を普遍的に解決できるプロダクトを開発している。マイグルやトチカチといったツールがそのプロダクトの一例である。
*分析対象のデータを一部サンプルとして抜粋したものではなく、課題解決に関連した全ての期間、単位、種類のデータのこと。
ビジネスモデル図解
以下の通り、株式会社ギックスのビジネスモデルを図解した。
事業における強み
主要取引先としては、JR西日本・アサヒGHD・三菱UFJ銀行の大手3社が挙げられ、2021年6月期は上記3社で売上割合約6割超である。3社いずれも2020年6月期から、2022年6月期まで継続的な取引先となっており、安定的な顧客基盤を有している。クライアント企業の変革を共に、長期的に目指していく形態が強みであるため、その性質上、特定の企業が高い売上割合を有している。
DX推進が謳われる中、デジタル・IT業界の需要は高まっていくためさらなる事業の拡大が期待される。
市場規模
【対象市場】
ギックスはDI事業領域におけるコンサルティングサービスが主力事業であることから、ITコンサルティングサービス市場を調査対象として選定した。
【市場規模】
IDC JapanがまとめたビジネスおよびITコンサルティングで構成される「国内コンサルティングサービス市場予測」によると、2020年のITコンサルティング市場規模は前年比1.1%増の8623億円になり、2025年に1兆2551億円に達するとみられる。
また、デジタル関連ビジネスコンサルティング市場は、2020年に前年比29.3%増の1,337億円になり、2020年~2025年のCAGR (年間平均成長率)30.1%で高成長を維持し、2025年に4,986億円に達するとIDCでは予測されている。
デジタル関連のビジネスコンサルティングとITコンサルティングは、コンサルティング業界の中でも特に大きく成長する業界であると思われる。
*デジタル関連ビジネスコンサルティング:ビジネスコンサルティング市場の内、クラウド、ビジネスアナリティクス、モビリティ、ソーシャルといった第3のプラットフォームの導入/活用、あるいは、同プラットフォームを通じて提供されるIoTやコグニティブ/AIシステム、サイバーセキュリティなどの導入/活用に関わる支援サービス。
【ベンチマークとなる企業】
日本電気株式会社、アクセンチュア株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社など。
マネタイズに関して
【業績推移】
【事業全体の収益性】
BtoB:JR西日本(28.5%)・アサヒグループホールディングス(19.8%)・三菱UFJ銀行(14.0%)が主なクライアント企業である。
()内は第9期事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合を示す。
【キャッシュポイントの額と頻度】
同社におけるデータ分析の新サービス「graffe(グラーフ)」の場合、初期費用250万円で、月額料金は、データ1000万行当たり2万5000円と低額である。
【固定費】(自2020年6月1日至2021年6月30日)
労務費 143,803,000
経費* 61,833,000
*経費の内訳は地代家賃・減価償却費・通信費・その他を含む。
【変動費】(自2020年7月1日至2021年6月30日)
外注費 162,503,000
経営層
代表取締役:網野 知博
取締役:田中 耕比古
取締役:花谷 慎太郎
取締役:田村 誠一
常勤監査役:清水 明
監査役:原澤 敦美
監査役:熊倉 安希子
スキルマトリクス
ビジョン
ギックスは、「あらゆる判断を、Data-Informedに。」を目的として掲げるデータインフォームド推進企業である。
戦略コンサルティングのケイパビリティと高度なアナリティクスのケイパビリティを融合した新しいタイプのプロフェッショナルサービス集団として、クライアント企業の経営課題解決、競争力強化のために判断業務のアップグレードを支援している。
人事課題推測
まとめと考察
ギックスは、売上高営業利益率及び売上高成長率を経営指標としており、クライアント企業に高い付加価値を提供することを目標とし、「従業員一人あたりの売上高」の増加を挙げている。
現在の主要顧客は、JR西日本・アサヒグループホールディングス・三菱UFJ銀行と優良企業だが、この3社で売上の6~7割近くを占めており、1社でも外れると大きな損失となるだろう。他方、上記3社同様、長期的な関係を築くことができる優良企業をさらに見つけることができれば、より高い安定感と利益率が期待できる。
同社の役員体制に関しては、スキルマトリクスから、会計・法務・人事の分野の人材が少なく、ITや事業開発経験者を多く抱えていることが判明した。本件、同社の成長戦略や資本政策上のガバナンス構成であるか否か、公開情報からは見受けられなかった。
人事情報に関しては、社員のうち技術陣は24名と少なく、同社も述べているようにIT分野のエンジニア不足などの人的リソース不足の問題が懸念され、利益率を高めるためには事業のみならず人材確保も重要視すべきだと考えられる。
さいごに
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【免責事項】本調査は弊社長期インターン生により作成されています。また、本調査は、現在弊社が入手し得る資料及び情報に基づいて作成したものですが、弊社は、その資料及び情報に関する信憑性、正確さを独自に確認しておりません。本資料において一定の仮定を用いた試算を行っている場合、その試算結果は仮定に基づいた概算であるため、別途詳細な検討が必要です。