驚きの組織カルチャーをもつスキルのフリーマーケット【株式会社ココナラ】のビジネスモデル調査と人事課題推測
最終更新日:2024/4/5
当noteでは、各企業のビジネスモデルを分析しています。
また、取締役会のスキルマトリクスを分析し、コーポレートガバナンスコードに沿った経営の実践度を確認しています。
セレクションアンドバリエーションでは、さらなる事業価値増大に向け、特に中堅規模の上場企業におけるスキルマトリクスのあるべき姿を提言し、現経営層のさらなる活躍、そして次世代経営層育成に向けたボードサクセッションの仕組みの導入を支援しています。
資金調達額の推移
⇒累計25億6,700万円を調達
調達した資金の多くは、利用率向上のための広告宣伝費やプロダクト機能拡充・技術開発のための人件費に充てられた。
企業概要
事業概要
ECサイトを通じて"知識・スキル・経験"を売り買いできるスキルマーケットを提供している。
また、最適な弁護士を探すことができる検索メディアサービスや、レッスンやハウスクリーニングなどの対面サービスを予約できるサービスも提供している。
ビジネスモデル図解
事業における強み
1. モノではなくコトのプラットフォーム
ココナラでは、ビジネス代行(調査や執筆など)や相談といったコトの売買が行われている。個人間でモノを売買するオークションサービスやフリーマーケットサービスとは異なり、サービスをつなぐプラットフォームとなっている。
2. 出品の自由度の高さ
プラットフォームには240種類のカテゴリーが設定されており、出品内容も自由に設定できる。価格に加え、フリーワードでオプションを設定できるため、出品者は自分のオリジナリティをアピールできる。
3. リピーター顧客の獲得
中期的に安定した継続購入を実現している。ココナラで一度サービスを利用したユーザーは、複数カテゴリーから購入する傾向がある。これは、出品の自由度が高く、サービスの多様性に富んでいることと関係しているだろう。
市場規模
該当市場として、CtoC(個人間の取引)市場およびスキルシェア市場を選定した。
【市場規模の推定】
国内CtoC市場:1兆1,800億円(2019年)
⇒中でも、家事代行・ベビーシッターの市場規模は50億円(2019年)であり、3年で3.8倍(13億円)に伸びており、注目されている。
スキルシェアの市場:9,743億円~1.9兆円(2030年予想)
スキルシェアサービスの認知度向上と、ユーザーの利用意欲の向上に伴って、市場規模は最大で1.9兆円と予想される。
【市場全体のトレンド】
今後さらなる市場の拡大を目指すためには、ターゲット層の拡大が必要不可欠だと思われる。若年層をターゲットとしたCtoC市場は、物販分野を中心に順調に展開してきた。そこでCtoC市場では、サービスを利用していない中高齢層をターゲットとする動きがある。
今後、米国と同様の労働環境が整備されていくならば、国内のスキルシェア市場は拡大する余地を十分に持っている。総務省情報通信国際戦略局情報通信経済室 (2017)によれば、日本におけるスキル×シェアの利用率は3.7%であり、米国29.6%と比較して低い状況である。つまり、ココナラのマーケットシェアもスキルシェア市場が拡大する限り、拡大余地があるといえる。
また、近年国内の長時間労働の見直しが進んでいるため、スキルシェア市場において出品者側にも購入者側にもニーズの変容が見込まれる。
残業削減による収入減に対して副業で収入を増加したいという出品者側のニーズと外部のスキルを活用することによる残業削減という購入者側のスキルシェアの活用ニーズが創出される流れがある。
【ベンチマークとなる企業】
ランサーズ、SKIMA、Askbe
マネタイズに関して
【事業全体の収益性】
2017年以降、前年比150%以上の伸び率で着々と営業収益が増加している。
【キャッシュポイントの額と頻度】
出品者のサービス提供完了時に、取引金額の25%を手数料として得る。
しかし、出品者の取引金額が5万円を超える場合には、取引金額の手数料が25%より下がるため(具体的な%は不明)ココナラが得られる手数料は段階的に低減する可能性もある。
主要事業であるcoconalaにおいて、出品者は「制作・ビジネス系」では500円~100万円、「相談系」は500円~10万円の範囲で価格設定が可能である。
【固定費】
人件費、広告宣伝費、システム費
【変動費】
不明
【事業に関する考察】
一般消費者のターゲットのうち中高年層に対して、ココナラの事業の根幹であるスキルや代行サービスを提供できる余地があると考えられる。
市場規模(推定)より、
➀国内CtoC市場では家事代行・ベビーシッター分野における伸び率が著しいこと
➁スキルシェア市場では中高年層にサービスを訴求できる余地があること
が分かった。これら2点を踏まえると、労働環境にある中高年層には、日々の暮らしをサポートとなるような家事代行サービスのニーズや、休日の趣味となるような体験アクティビティやエンターテイメントのニーズが潜在していると考えられる。
ココナラは、モノの売買ではなくコトの売買を提供している企業であるため、ターゲットの潜在ニーズを満たすようなサービス提供が期待できる。
経営層
代表取締役会長:南 章行
代表取締役社長CEO:鈴木 歩
取締役:新明 智
執行役員CFO:中川 修平
執行役員 事業開発担当 兼 戦略担当:石川 善洋
執行役員 CHRO 兼 経営企画担当:佐藤 邦彦
執行役員 開発担当:村上 正敏
CTO:石原 佳典
常勤監査役:矢冨 健太朗
監査役:服部 結花
監査役:石原 一樹
スキルマトリクス
【ガバナンスに関しての考察】
取締役の多様性には偏りが見られ、経営陣に女性が1名しか存在しないことが懸念点として挙げられる。
一方で、事業成長やリスクマネジメントの項目では適度な分散が見られる。リスクテイク経験や高度IT専門性に長けた人材も多いため、今後さらなる事業の発展や、技術開発・機能拡張にも順応できる可能性が高いと思われる。
ミッション・ビジョン・バリュー
ミッション
個人の知識・スキル・経験を可視化し、必要とする全ての人に結びつけ、個人をエンパワーメントするプラットフォームを提供する
ビジョン
一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中をつくる
バリュー
One Team, for Mission
Beyond Borders
Fairness Mind
人事制度設計
【採用】
・新卒採用:無
・中途採用:有
・媒体 :自社HP、Wantedly、転職サイト
・採用職種:マーケティング、法律相談、カスタマーサクセス、デザイン、プロダクト開発、プロダクトマネジメント、HR、R&D、バックエンド開発、開発基盤、フロントエンド開発、アプリ開発
・求める人物像:ココナラのビジョンに共鳴している人、ココナラの目指す世界観に合う人。仕事をする上で大事にしているバリューである、”One Team, for Mission”、”Beyond Borders”、”Fairness Mind”を備えた人
【等級・配置】
記載なし
【評価制度】
・成果評価(ミッション達成レベル)50%
・行動評価(バリュー実践レベル)50%
【報酬】
・報酬水準:平均年収 613万円
・表彰制度:MVP・バリュー賞、グッジョブボーナス、リファラルインセンティブ
【教育】
・人材育成委員会(従業員と上長・組織長が、キャリアプランや育成方針を会話する)
・勉強会参加支援
・資格取得支援
・書籍、備品購入支援
・適切なデバイス貸与、ITヘルプデスク
【その他、福利厚生など】
・社会保険(ITS)、労働保険完備
・フードデリバリー、フリーアルコール
・各種費用負担(人間ドック、婦人科検診、予防接種)
・オフィスドラッグ、仮眠室完備
・ココナラかかりつけ医(産業医)
インターン生による考察
公式HPには、入社後の評価制度や教育制度、福利厚生について十分な記載があった。バリュー評価制度では、成果と行動を同等に評価する点に関心を持った。R&Dやプロダクト開発では、中長期的な取り組みの結果、サービスの創出につながる。ココナラは技術職の採用も多いことから、数値で見える短期的な成果のみに着目するのではなく、日々の行動プロセスにも重きを置いているのだと推察される。
一方、報酬体制については記載がなかったことから、同業種と比較して給料が高くない可能性や、本人のスキルや経験ベースで給料が決定される可能性が考えられる。
※この記事は弊社長期インターン生が分析、編集しました。
※スキルマトリックスの基準が違えばご連絡ください。
調査担当:SAY
さいごに
スタートアップ・ベンチャー企業に必要な人材マネジメントについてはこちら
弊社代表平康によるCGCとスキルマトリクスに関する記事はこちらから
【免責事項】
本調査は弊社長期インターン生により作成されています。また、本調査は、現在弊社が入手し得る資料及び情報に基づいて作成したものですが、弊社は、その資料及び情報に関する信憑性、正確さを独自に確認しておりません。本資料において一定の仮定を用いた試算を行っている場合、その試算結果は仮定に基づいた概算であるため、別途詳細な検討が必要です。