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第2章【経営戦略として活かす人的資本経営】会社の弱みへの対応について

企業における人的資本情報の整理・可視化や、自発的成長の実現、企業価値向上等を軸として、今回は【経営戦略として活かす人的資本経営】という題目で、人的資本を中心にご説明する内容です。

こちらは当社代表の平康慶浩が2023年6月自社セミナーにて講演した内容を全3回にわたってご紹介する記事です。中でも、本記事は「第2回」となりますので、ぜひ他の全ての記事もご覧いただけると嬉しいです!

【第1章をまだ読んでいない方はこちら】

特に本記事では、人的資本情報の可視化の具体例や、会社の弱みへの対応についてお話いたします。

*本記事は5分程度で読むことができます。


業種別に強みとなる人的資本の例

第1章では、会社の強みと弱みを踏まえた上で、それに対応した人的資本情報を可視化する、という内容をお話しました。
この項目では、セレクションアンドバリエーションが支援させていただいた実例をご紹介します。

飲食店のケース

まずは、ビジネスモデルに強みを有する飲食店の例を紹介します。

同飲食店の強みとしては、エリアごとに多様な業態で集中して出店すること、24時間営業であることが挙げられます。つまり、1つのエリアに焼肉店、イタリアン、飲み屋等を展開するような手法です。また、24時間営業にすることで、あらゆる客層へのターゲティングが可能になることもメリットです。

こういった強みを持って成長していた会社ですが、出店速度と店舗別収益性の低下が課題になりました。

そこで実際に人的資本情報の可視化を行った結果、次のようになりました。

上図の右側の情報を可視化したところ、リーダーシップと採用・異動・離職に問題があることが判明しました。
リーダーシップに関しては多面評価をしていなかった点や上司の問題などがあり、離職については「飲食店だから離職が多いのは当たり前」という考え方が根付いていたことが問題でした。

また、管理職はコスト管理のみが徹底されており、従業員の教育やモチベーション配慮ができていない割合が高いという問題もあったため、管理職の入れ替えと教育の徹底を行うことで、経営改善をしました。

自動車部品製造業者のケース

同社は、ビジネスモデル以外すべてが自社の強みであると仰っていました。
強みとしては、2代目経営者によるリーダーシップ、固定取引先との長年の付き合い、まじめで実直な従業員と組織風土が挙げられます。
一方の弱みとしては、将来の売上縮小があります。将来的に車に乗る人が少なくなることが、自動車業界における懸念点です。

そこで実際に人的資本情報の可視化を行った結果、次のようになりました。

結果として、後継者計画、リーダーシップ、ダイバーシティが課題であることがわかりました。
また、自発的でない組織風土かつワンマン経営で、現経営層に対する次世代経営層の信頼が極めて低いことがわかりました。

これらの課題に対し、経営層候補および管理職における中途採用の強化と、後継者の意識改革と教育強化を徹底しました。

弱みへの対応は置かれた状況によって変わる

弱みの本質を見極める

人的資本情報の可視化によって判明した弱みに対して直接対応するのではなく、その原因となっている本質に対して対応を考えることが重要です。

上図にあるとおり、原因への対策としてリソースマネジメントとモチベーションマネジメントの2つの観点があります。
これらは人事の基本の概念であり、会社を維持・成長させるためには、その会社に適切な人材を配置し、その人材のモチベーションを高めることが必要です。
ではより具体的に、これらをご説明します。

リソースマネジメント

リソースマネジメントは、社内で必要なスキル・技術を確保する取り組みのことを指します。
この際、既にいる従業員の教育をするのか、もしくは新たな人材を採用するのか、この2つの選択があります。また、より細かく言うと人材の置き換えや退出(退職)も挙げられます。

これらのメリットとデメリットは上図のようになります。

例えば、経営陣が人事部に「即戦力となる人材を採用して」と頼んでも、人事側はその程度がわかりません。どれくらいの能力なのか、何人必要なのかなど考える必要があり、これがリソースマネジメントの重要な部分です。

「退出」は、人を切る、退職させるということになりますが、あまり日本では議論されていない内容です。
しかしながら、組織を維持・成長させるという観点において有用であるため、このようなことも理解した上で適切なリソースマネジメントを行いましょう。

モチベーションマネジメント

モチベーションマネジメントは従業員に期待する行動を促すためのモチベーションを上げるための施策であり、金銭報酬・安心維持・内発動機・本能刺激の4つがあります。

金銭報酬に関しては従業員の仕事が報われた感覚がわかりやすいなどのメリットがありますが、一方で長期的な動機付けとしては難しい点があります。

安心維持は、「この会社にいたい」という気持ちを維持・増加させる仕組みです。長期的な離職防止につながり、金銭報酬等とのバランスを考えることが必要です。

内発動機は、従業員のチャレンジを引き起こすための仕組みです。経営層、管理職が部下へ高圧的な態度であったり、強制するような指示が多い場合は従業員のチャレンジは発生しにくくなってしまいます。

そして本能刺激は、営業部門において個人の成績を表示しておくことにより従業員のやる気が無意識に上がることが例として挙げられます。

施策のマッピング

リソースマネジメント・モチベーションマネジメントを今までご説明してきましたが、この中でとるべき施策は、予算や緊急度の度合いで検討を進めるとよいでしょう。

以下の図は、予算や緊急度を軸にした施策のマッピングです。

ここで重要なのは、これらの施策をなるべく多くとることです。
緊急な施策と長期的対応の施策を同時にとることもよいですし、必ず複数の施策を行いましょう。

まとめ

本記事では、人的資本情報の可視化の事例や、リソースマネジメント・モチベーションマネジメントについてご説明いたしました。

第1・2章を通じて、会社の強み・課題を理解し、それに合わせて人的資本情報の可視化を行い、弱みを特定し、その弱みの根源に対してリソースマネジメントやモチベーションマネジメントを行っていく、という一連の流れがご理解いただけたかと思います。

また人的資本情報の可視化の事例については、第1章を読んでいただけるとより理解が深まると思いますので、最終章の第3章とあわせて、そちらもご覧いただけると嬉しいです!

【第3章はこちら】

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