ASDはコミュニケーション職に意外と向いている、と思うことがよくある。
ASD(自閉症スペクトラムやアスペルガー、呼び名はさておき)者はコミュニケーション職に向かず、一人でできる仕事に向いている……そう思ったことはないでしょうか。少なくとも私は自分が ASD だと知る前から「自分はコミュニケーション職に向いていない」と思っていましたし、いまもかなりそう思っています。でも 案外向いているのでは と思うこともあります。
そこでこの記事では、ASD 当事者の私が生きていて「 ASD 的だけど、コミュニケーション職が上手くいっているな~」と感じたエピソードを2つ紹介します。以下2点をみなさまにお届けすることが目的です:
- ASD 当事者が、 「コミュニケーションに苦手意識がある」という理由で興味のある仕事を諦めるのを防ぐこと
- 周囲の人たちの、彼は十分コミュニケーションが取れているから ASD のはずがない といった誤解を防ぐこと
【補足】
「ASD は みんな コミュニケーション職に向く」というつもりはありません。また、大前提として「人は働くべきである」とも思っていません。しかし、世の中には自閉症的傾向がきっかけとなって自尊感情を傷つけられ、本当の気持ちに反してコミュニケーション職を避ける人もいるのではないでしょうか。私はそうでした。あくまでも本記事は上記2点の目的の限度でお話していますのでご留意ください。
安藤さんのいるメガネスーパーでメガネを買った話
最近、メガネを買いに妻と一緒にメガネスーパーに行きました。
担当してくれた店員安藤さん(仮名)は、かなり饒舌・多弁で、いわゆるマシンガントークです。私の興味などお構いなしにウンチクを語りまくります。ブランド、誰々が設立、どこに工場がある、会社の担当者と会ったことがある、眼鏡のレンズの厚みが揃うように片目だけコンタクトレンズを付けている……。
かなりコッチ系な人ですが、私と妻はその日の帰りに「買うなら安藤さんのいる店で買いたいね」とか言ったりして、その翌々週、無事安藤さんのいる店でメガネを買いました。
なぜかというと、ウンチクを語りまくる安藤さんがとても楽しそうだったからです。こだわりが爆発していました(教えてくれた内容は覚えていませんが)。あと、「お客様が入店して最初にオススメしようと思ったのがこのメガネ、2回目に入店されたときにオススメしようと思ったのがこのメガネ」と提案してくれました。愛と熱意を感じましたし、オススメは妻に好評でした。
QA(質問対応)が好きな話
私は BtoB の IT 研修講師として新卒システムエンジニアのかたたちに IT を教えたり、研修教材を作ったりしています。そんななかで、案外自分の自閉症的傾向が役に立ちます。「自分のこだわりMAXの講義を皆が聞いてくれて幸せ」というのは言うまでもないので、QA(質問対応)について話します。
私は QA が好きです。一定以上の品質もあると思っています。それはなぜかというと、一定の型を守るように心かげているからです:
- 質問してくれたことへの感謝を控えめに伝える
- 相手の発言を遮らずに最後まで聞く
- 適度に控えめな相槌を打つ
- 質問を要約して復唱し、聞きたいことと一致しているか確認する
- 疑問を抱いた背景(きっかけ)に対して共感を示す
- 最小限の結論を述べる
- 理由を述べる
- 質問の回答になっているかを尋ねる
- 補足を述べていいか尋ねる
- 相手が「もういいかな」というオーラを出すまで補足を続ける
この型はもっと改善できるかもしれませんが、それは置いておいて、ひとまず質問者の話を遮ることも、聞かれたことと答えがズレることも、求められていない知識自慢をすることも、 仕組み上起きません(実際には、起きることもあります)。
QA という何が起きるか分からないコミュニケーションに対して、パターンが適用され、世界が分かるようになっていく。そうなると私はいつも本当に嬉しくなります。目の前が整理整頓され「おお、おれたち、分かり合えたね!」という気持ちになります。
愛・熱意・型で、なんとかなるといいな
まとめっぽいことを言うと、ASD 傾向のある人でも 愛・熱意・型 の3つで案外コミュニケーション職はなんとかなったらいいなと思うのですが、いかがでしょう?
少なくとも私は「定型発達的な柔軟なコミュニケーションが取れる」ことをあまり店員に求めていません。多少非定形(?)でも、愛と熱意が伝われば、その人を信じます。私も柔軟さは諦めて、愛と熱量で押すようにしています。愛と熱意だけでは「自分の想い」を相手に伝わらないなら、型が役に立ちます。目の前の相手に合わせるのではなく、「人間に合う型」を使う と、なんとかやっていけています。
「本当は家電が大好きだけど、コミュニケーションが苦手だから、販売員はやめて、なんの興味もない◯◯を仕事にしよう……」と思っているひとの参考になれば幸いです。ASD とコミュニケーションについて、想いがあればぜひ教えてください。
※ とはいえ「 BtoB はキツイ!」と感じることは結構あります。それはまた別な機会にお話させてください。
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