ブランディングとは動詞である。
1年ほど前、通勤電車のドア横にある広告に衝撃を受けた。
そこには「美しく走る。」の一言。
そしてドアの反対側には、美しい自動車の写真。
あまりの潔さ。そして、それで完成されていた。それ以上の言葉は不要だった。
「美しく走る。」とその自動車の写真だけですべてを物語っていた。
僕は運転は好きだが、特に車に詳しいわけではない。しかし、街中でふと見かけたときに直感的に「あ、XXXっぽい」と分かるブランドが一つだけある。
「マツダ」である。
さて、そんなマツダのブランドやデザインの舞台裏を物語る、マツダのデザイン本部長を務めておられた前田育男さんの『デザインが日本を変える:日本人の美意識を取り戻す』を読んでいる。
そのなかで紹介されるマツダデザインの美しさへの執念や、ブランドを育て上げるプロセスは実に勉強になる。
そうして感じたのが、「ブランディングとは動詞である。」ということだ。
「ブランディング」というと、企業や製品が世間の人からどのようなイメージを持って見てほしいかを考え、そのように見せていく戦略のように考えてしまいがちだ。
しかしそれでは表層的にすぎる。本質は、他者からどう見えるか、というところではない。
そうではなく、自分たち自身がどうありたいかを描き、そうあるべく厳しい基準を設け、自らを育て上げていくことが本質である。
すなわち、ブランディングとは自社にとって都合のいいように世間から見られるための戦略ではなく、自らを自ら定める基準を満たすように鍛え育てていくという行為である。
したがってブランディングとは机上でできるものではない。具体的な事業のなかで、実践のなかで自らを高め、「これがXXブランドです」と堂々と胸を張って言えるようになるための持続的な行動こそがブランディングである。
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