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データドリブン:暗黙知と形式知

こんにちは。HRDX & Co. 代表の ノノミヤ チヒロです。
今日は、Udemy講座 【職場の失敗あるある】事例でわかるDXの進め方 のテキストから一部抜粋して、「暗黙知と形式知」の解説記事をお届けします。

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■ SECIモデル

SECIモデルは、知識の創造と共有を説明するために用いられる理論で、"Socialization(共同化)", "Externalization(表出化)", "Combination(連結化)", "Internalization(内面化)"の4段階から成ります。

暗黙知と形式知を往復しながら、人から人へ知識や技能を伝承することで、共有の知見・ノウハウを行うことができます。

難しく感じるかもしれませんが、料理に例えてみると、すっきりわかりやすく理解できます。上図の左上から時計回りの順に、「共同化」→「表出化」→「連結化」→「内面化」→「共同化」の順に見ていきます。

■ Socialization(共同化):暗黙知 → 暗黙知

まず、母から子に家庭の料理を教える場合を例に考えます。母の中に「暗黙知」として身に付いている、家庭の料理の作り方を、一緒に料理を作ることで、子は経験から直接学びます。この段階では、まだ言語化されていない暗黙の知識(感覚やフィーリング)を共有しています。

■ Externalization(表出化):暗黙知 → 形式知

次に、子は、自分が学んだ料理の知識や技術を、レシピとして他人に説明します。例えば、「我が家の唐揚げの作り方です!」とクックパッドに掲載する場合がそうです。この過程で、暗黙の知識が言葉や文字といった形式に変換され、明示的な知識になります。

■ Combination(連結化):形式知 → 形式知

次に、子は自分なりにレシピをアレンジして、レシピを更新していきます。例えば、「母から習った唐揚げの作り方に、アレンジしてみました」と言って、新しいレシピをクックパッドに更新する場合がそうです。

こうして、形式知に形式知が結び付き、新しい形式知が生まれます。

■ Internalization(内面化):形式知 → 暗黙知

次に、クックパッドを見た人が、そのレシピを学び、実際に試してみることで、その知識を自分のものにします。この段階を経ることで、学んだ知識が再び暗黙知となり、実際に使える知識として、伝承されます。

■ Socialization(共同化):暗黙知 → 暗黙知

最後に、クックパッドのレシピから学んだ人が、家庭内で家族でそのレシピの料理を一緒に作ることで、家族に共有します。こうして、再び暗黙知として伝承されていきます。

この循環により、単純に料理のスキルを伝承するだけでなく、新しい料理の創造へと繋がります。SECIモデルは、このようにして知識が個人から集団へ、そして再び個人へと循環し、組織全体の知識基盤が拡大していくプロセスを説明しています。

■ 叡智と感性

「暗黙知の形式知化」というと、人のもっている暗黙知(勘・経験)が、すべて形式知(言語・データ)に置き換わるというような、冷たい印象をもつかもしれません。ですが、「勘・経験」の中には、「言語・データ」に置き換えられるものと、「叡智・感性」として伝承するものがあります。

これについては、以下の獺祭のエピソードがわかりやすいです。(参考文献を元に筆者にて作成。)

山口県の山奥で誕生した純米大吟醸「獺祭(だっさい)」は、日本のみならず、欧米やアジア諸国でも高く評価される銘酒です。蔵元の旭酒造は、杜氏(とうじ)の勘と経験に頼らず、データと機械による数値管理の酒造りを実現し、日本酒業界に革命を起こしたと言われています。

ただし、人間の仕事を否定したわけではありません。たとえば、お米を洗う工程では、洗米後の米の持つ水分を高い精度で厳密にコントロールする必要があり、最新の洗米機をもってしても、その精度は出せないセンシティブな仕事なので、機械化すれば工程を短縮できますが、あえて人の手で洗米を行っているそうです。

獺祭のお酒造りは、美味しい日本酒を作ることだけを追求し、機械任せるべきこと、人に任せるべきことを見極めた結果、今のやり方にたどり着いたそうです。

参考文献:Harvard Business Review2021年3月号
データと機械と人の力で最高の日本酒を造る
純米大吟醸「獺祭」はどのように生まれたのか
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/7415

■ 人間とAI

人間とAIの関わりは、暗黙知と形式知という視点で理解することができます。暗黙知は経験や感覚を通じて得られる知識であり、人間特有の叡智や感性に根ざしています。一方、形式知は言語化や数式化が可能な明確な知識で、AIが処理しやすい形態です。

人間は、直感や創造性、共感能力といった暗黙知に基づく作業に優れています。これらは現時点でAIが模倣しにくい領域であり、人ならではの価値を生み出す源泉です。例えば、芸術の創作や非言語的コミュニケーション、倫理的な判断などがこれに該当します。

一方、AIは大量のデータからパターンを認識し、複雑な計算を高速に実行する能力に長けており、形式知に基づくタスクにおいて人間を補完、時には超える性能を発揮します。例えば、データ分析、パターン認識、予測モデリングなどがAIの得意とする領域です。

このように、人間とAIは互いの能力を補完しあう関係にあります。暗黙知に基づく人間の創造性や感性と、形式知を処理するAIの能力を組み合わせることで、新しい知見の創出や問題解決が可能になります。人間がAIを指導し、AIが人間の仕事をサポートすることで、両者は共存しながら進化していくことができるのだと思います。

AIの時代だからこそ、人にしかできない仕事、人ならではの叡智と感性とは何かを見つめ直すことが重要だと思います。

日ごろから書を読み、芸術に触れ、思索を深めることで、AIに飲み込まれないだけの知性と感性を身につけること、AIのアウトプットを見極める審美眼を磨くことが、AIの時代に生きる私達に必要なことだと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

HRDX & Co. 代表
ノノミヤ チヒロ


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