採用ブランディング

■書籍
知名度が低くても"光る人材"が集まる 採用ブランディング
著者:深澤 了

■はじめに

採用市場が今、コロナウイルスによって変化の一途をたどっています。
合同説明会は、きなみ中止、説明会や面接はオンラインになり、大手企業が新卒も中途も採用数を激減させはじめています。就職氷河期へ突入するという予想が現実味を帯びてきています。

この数か月で、採用は売り手市場から一気に買い手市場へと変化し、中小企業への応募数は増加し、採用したい企業にとって非常に有利な状況になりつつあります。

実際に、6月中旬からエン転職でコンサルタントの中途募集を始めた弊社も、掲載からわずか1週間たらずで応募数が200件にも上りました。

しかし、ここで懸念されるのは、母集団が増えたことでミスマッチが増えることです。入社しても結局、辞めてしまう人が増える負のサイクルが生まれることです。

そうなれば企業側のかけた予算、労力も無駄になり、求職者にとっても履歴書に無駄な経歴が1行追加されてしまいます。コロナ以前の「集まらず、採用もできず」よりもタチの悪い状況と言えるでしょう。

■「採用ブランディング」なら人材も利益も得られる

採用活動で、多くの人がまずすることは、採用メディアのサイトへの登録と、そこからの採用情報収集です。現在、人材を募集しているほとんどの企業では、いわゆる「採用メディア」を中心に据えた採用活動が行われます。
新卒であれば、「リクナビ」「マイナビ」「エン・ジャパン」などが有名で、既卒採用であれば「リクナビNEXT」「マイナビ転職」「doda」などがあげられます。これらの採用メディアが主軸となった採用フローが一様に形成されているのです。

企業の採用フローステップは、次の5つです。

①採用メディアへの登録
②説明会の開催
③選考(面接)
④内定
⑤内定者フォロー

②は中途採用では省く企業がほとんどですが、ほとんどの企業が企業の規模や歴史、業種、業態にかかわらず、右へ倣えとばかりに一様に採用メディアを中心としたこの採用フローの形式をとっているのです。これでは差別化にならないので、いつまでたっても採用できず、マッチングの精度も低いまま。大手企業と同じやり方ではなく、自分たちらしい採用を組み立てることが、結局は効率的で本質的な採用に繋がるのです。

また、従来のこの採用フローでは、大手企業にはいつまでたっても勝てません。では中小企業は優秀な人材獲得を諦めるしかないのかというと、そうではありません。

秘訣は「戦う場所を変えること
労力も投資できる財力勝負になりがちだったレッドオーシャンから抜け出して、他社との差別化が見事になされた唯一無二の存在として、勝負に勝てる「ビクトリー(差別化された市場)」の場で採用フローを行うのです。

採用ブランディングで最も重要なことは「採用コンセプト」を作り出すことです。コンセプトは採用活動全体を貫く軸。つまり何を一番に伝えるのか、どこで勝負をするかを決めることが大切になってきます。

そして採用にはブランディングが必要になります。「ブランディング」という言葉は最近よく耳にしますが、
ブランドとは、商品や会社の希少性、信頼性を認知してもらうための証がブランドであり、そのブランドを形成するために必要な考え方がブランディングです。

ブランディングは「コピーやデザインが媒体間で統一されたプロモーション」ととらえられている傾向がありますが、これは本来の意味とはずれています。デザインをプロモーションするのはブランディングの一側面でしかありません。ブランドをつくるためにはどうしたらいいか、そのための施策や考え方などをすべてを指した言葉がブランディングなのです。

ブランディングという概念があるのは、企業は継続性をもたなければいけないからです。定期的に売上を上げ、継続性のある会社として存続させる。そのために、自社が提供する商品やサービスがほかと異なる価値を持ち、顧客の信頼に値する証として「印」をつけることは、長きに渡って差別化され、認知度を高めるうえで極めて有効な手段だからです。

「企業は人なり」
かつて松下幸之助が言ったように、会社を存続させるための最たる要因は"人"です。だからこそ、会社の存続は採用のかかっています。採用こそ中長期的な成果が求められるものなのです。

■採用ブランディングで施策に一貫性を生む

「採用ブランディング」とは、「採用市場におけるファンづくり」にほかなりません。

ブランディングが「売れ続ける仕組みづくり」を意味するように、ブランディングと名の付くものは「継続性」がなくてはなりません。採用ブランディングは、「ファンをつくり続ける仕組みづくり」でなければならないのです。

採用において、ファンをつくる手法には、ナビ媒体掲載、HP、パンフレット、ワークショップ、面談など、多くの施策がありますが、個々の施策を単体として質のよいものにしても採用で勝ち抜くことができません。

しかし、多くの企業がこれら採用フロー施策を、イベント、パンフレット、面談などの単体として考え、単一的な形にする、こなすことで精一杯なのが現状です。

勝利をもたらすのは常に「一貫性」だそうです。強い理念を踏まえたコンセプトを柱にした一貫性が、採用フローにおけるすべての施策にあるか。ここが勝負の分かれ目です。一貫性があることで、ブレない行動の連鎖が起こります。すべての施策は採用ブランディングという土台の上に成り立たなければなりません。理念ありきで一気通貫、共感を生む施策の構築。採用ブランディングの概念で全体像をとらえれば、採用は効率的に、ファンの獲得、人材獲得に繋がります。

そして、応募者に理念が一貫して伝わっていくには、会社の中に一貫性がなければなりません。一貫性には「縦の一貫性」と「横の一貫性」2つの方向があります。

経営とは「理念」があり、それを基に「戦略」が生まれ、「現場」で体現されていくピラミッドの形です。頂点にある理念が川下の現場まできちんと浸透している、つまり縦の一貫性がある企業こそ成長ができる、と様々な書籍で言及されています。なので、入口の採用の時点で理念に共感している人を入社させることができれば、すでに素地を持っているため、入社後の教育がしやすく、現場から理念を実現していくことが容易になります。つまり「縦の一貫性」が生まれやすくなるのです。

そして見落とされがちなのが「横の一貫性」です。これは、現場の部署間や従業員同士でコミュニケーションがとれ、同じ目的を共有し訴求できる状態を指します。それぞれの部署が好き勝手に動いていれば、当然一貫性は生まれません。採用ブランディングだけではなく、ブランディング全般にいえることですが、この「横の一貫性」が非常に重要となります。

受け手にとっては、見たもの聞いたことや、接する現場での印象がそのまま企業のイメージとなるため、現場が「横の一貫性」を持ってコンセプトを伝えていかなければ、いつまでたってもイメージが脳内で形成されず、ブランドの価値が向上しません。採用に関わってもらう人の言動やツールの一貫性が要となります。

「横の一貫性」なくして採用ブランディングとはいえません。全社員が自社の強みを異口同音に語れてこそ、採用市場で確実な効果がだせます。

そして、本物の採用ブランディングの真偽を見抜く簡単な公式があります。

B=(b×c)v

B=BLANDING BUILDING(ブランド構築)
b=behavior(従業員の行動)
c=communication(HPやプロモーションなどの非人的部分)
v=vison(理念・価値観)


にわかと判断できるのは、効果的な話し方、行動などb(従業員の行動)だけの変容を指している場合や、「今の時代は動画ですよ」「デザインのクオリティを高くしてブランディングしましょう」「採用プロモーション(マーケティング)が重要です」などと言って、c(プロモーション)の、しかしも各論部分だけを語っているものです。

v(理念)がないのはもってのほか。それは結局、自社の決定的な差別化要因で戦うことにならず、ブランディングにはなりません。

採用活動における従業員の行動と、採用ツールを主にした採用コミュニケーション、そこには必ず理念を伴った採用コンセプトが貫かれている。b、c、v、どれも欠けることなく公式が満たされれば、確実な効果がでます。

■「21の法則」で欲しい人材が効率よく採用できる

本書にのっていた21の法則をご紹介します。

①全社横断のチームをつくる
②自分たちの強みをとことん信じる
③会社の弱みは隠さないけど工夫する
④採用基準はとことん具体的に
⑤ぺルソンは超理想を描く
⑥ペルソナは言葉と絵で詳しく表現する
⑦ペルソナのインサイトを考える
⑧自社の強みは3つに絞る
⑨コンセプトは採用活動の命
⑩採用スローガンは腕のいいプロに任せる
⑪採用フローはコンセプトに忠実に
⑫自社を人物化する
⑬採用の各施策を連動させる
⑭「採用→教育」から「教育→採用」
⑮ぺルソンがいそうなところを攻める
⑯コンセプトに紐づけて話す
⑰理念共感が活躍人材をつくる
⑱社長は最大の差別化要因
⑲内定直前の理念共感度で決まる
⑳遊ぶだけではダメ。会社理解が深まるフォロー
㉑経験値不要であれば新卒を狙う

■まとめ

20卒や21卒、中途採用など多少フローや選考に進める人を変えてみたものの、全体的には従来の媒体からスタートするやり方で現在も採用活動をしています。

採用もマーケティングと同じだな、もっと考えて他社と差別化をしないといけないと思いつつ、後回しになってしまっている現状がありました。

コロナウイルスにより、買い手市場にはなりましたが、今後働く人口の減少や、買い手市場でも優秀な人材を意図的に獲得できなければ会社の成長スピードが遅くなってしまうと思うので、まずは、採用コンセプトを決めるところを行います。

そのために、本書で書かれていた21の法則を考え、①全社横断チームをつくるは、採用委員会を今後つくって人事だけではなく、全体をもっと巻き込んでいくような取り組みをしていきたいと思います。


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