突き抜けたリーダーが育つしくみ ~なぜ、経営人材と新規事業が続々生み出されるのか?~

■著書の紹介
サイバーエージェント 突き抜けたリーダーが育つしくみ
なぜ、経営人材と新規事業が続々と生み出されるのか?
著書:上阪 徹

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■なぜ本書を読んだのか

「指示待ちに社員はもういらない。自分で考え、自分で働き、決断できる人材がほしい」
バブル崩壊以降、日本は低成長の時代が続いている。その間に、世界の経済は大きく伸び、日本は経済的存在感を大きく落とすに至っています。どうすれば、この低成長から脱却できるのか。その重要なテーマの1つに。人材採用、人材育成があると考えている経営トップは少なくありません。そしてリスプラでも今後、そういった人材が必要になってくると思います。

細かいルールや制度はありますが、会社の業績が伸び悩むときにそれを打破するための意見や行動しようという動きが自分たちから中々でてきていないというのを最近思い、採用・育成に強いサイバーエージェントはどういった取り組みをしているのかを知るために本書を読むことにしました。

■会社の成長を支えてきたのは「人事の考え方」

①明確な採用の軸「会社に合う人かどうか」

サイバーエージェントは、創業の時点から人事が極めて重要だと考え、採用に力をいれていたそうです。しかし、2000年に上場をし、資金調達もできて大規模な採用ができるようになったが、その肝心の採用に大失敗したそうです。

人事の世界では有名な、人材のスペシャリスト、取締役人事統括の曽山さんはこう言っています。

「新卒採用も行っていたが、当初は中途入社が中心だった。幹部も自分たちも20代半ばだったので、採用できる人たちといえば20代後半、有名大学卒の大企業勤務者ばかり。こういう採用が最もウエイトが高かった。そかし、これが採用側のミスだった。」

当時のネットバブルにのっかってくる人も多く、入社動機がバラバラだったそうです。大企業で20代半ばだとマネジメント経験もない人、インターネットビジネスを知らない人も多く二重苦がある上に、創業期から会社にいる、やる気のある20代半ばの社員が下につく。与えられたポジションの中で、当たり前のように上司は上司としてふるまいます。しかし、仕事を分かっていないので、命令しても結果はでない。部下は歯向かえず、あきらめると業績はあがらず全体の業績もでない。
さらにそこからどうなったかというと、第二新卒など、結果を出してやる気のある20代若い人たちがまず辞めていき、チーム全体の業績も上がらないので上司にも負担がでて彼らも辞めていったそうです。

2000年からの3年間、年間の退職率は30%。単純計算で、3年でほとんど入れ替わってしまうほどの退職率です。リスプラは7期・8期は15%前後だったので、その倍の割合で入れ替わりが起こっていたことになります。

この大失敗から、サイバーエージェントでは、人事戦略を大きく方向転換し、
採用でなにより大事なことは、「会社に合う人かどうか」という軸にしています。

優秀や有能というよりも、一緒に働きたい人を採用しようと決め、そこにこだわるという意思決定をしたそうです。

②決断経験を得られる良質な環境が人材を育てる

採用の軸ともう一つ、重要な出来事があったそうです。

2003年の夏、サイバーエージェントの役員は初めて役員合宿をしています。退職率の高さが業績に響いていたからです。そこで、「長く働く人を奨励する文化」にしようと、色々な制度ができたそう。このときに決まったのが、”21世紀を代表する会社を創る”というサイバーエージェントのビジョンです。
このあと、人事部門の強化で曽山さんは人事に抜擢されています。理由は当時営業部長で、すべての事業部長とパイプがあったことと、人事っぽかったからだそうです。

人事本部長に就任した曽山さんは、様々な人事制度をつくり実行していってきます。その中で経営陣と徹底的に議論したのが、人材育成でした。

どうやって人材を育てていくのか?やはり研修が大事になるのではと最初社長の藤田さんに投げていきました。しかし、藤田さんからはこう返ってきたそうです。
「でもさ。俺らって研修で育てられてないじゃん」
たしかに、ほとんどの会社が「そうはいっても研修をやりましょう」となっている中で、藤田さんの言っていることも一理あると考え、育つ環境をどれだけ作れるのか、のほうが重要だと思ったそうです。
ちょうど、2003年、新しいネット広告の専門会社が社内に立ち上がり、その社長を務めたのが、現在専務の岡本さんです。岡本さんは新卒で入社して若くして社長になる第一号だったでそうです。

その岡本さんが、会社経験を通じてものすごく成長し、環境が人を育てるという藤田さんの言葉から、なにが大事なのか考え導きだしのたが「決断力」ではないかということです。

その決断によって、どれだけ価値のあるものが生み出せるかで、ビジネスはもちろん。その人の人生も決まる。必要なのは、胆力を高め、判断能力を高め、俯瞰力を高め、優れた決断をする力。研修がダメなのではなく、決断力が育つ環境をどれだけ作れるかこそ、圧倒的に重要だと思ったそうです。

曽山さんはこれを「決断経験」という言葉にし、「決断経験を得られる良質な環境」を作り続けていれば人は育つ。採用力も高まると考えました。

そして、それを制度ではなく、風土となる事例をつくっていくことに注力しています。

■すべてのこだわりは「採用」から

サイバーエージェントは、採用の大失敗の経験を経て、採用の軸を「会社に合う人かどうか」に定めています。そしても求める人物像に「素直でいい人」があります。しかし、素直でいい人かどうかを見分けるのは容易ではありません。

そこでサイバーエージェントは、面接だけで人材を採用している企業が多い中、インターンシップや懇親会など、カルチャー理解や社員理解をしてもらう取り組みにかなり力を入れています。なので、勝手に合う人材かどうかスクリーニングされていくそうです。素直で、変化に柔軟に対応していけそうな人が残っていく仕組みになっています。

象徴的なもので、新卒採用プロジェクト「YJC」というものがあります。これは、「いい人材を自分たちでちゃんと採用する」という略だそうです。
採用への現場の協力の重要性は以前から浸透していたが、本業の仕事があるなかで、現場も忙しく、採用は人事がやればいいではないかという感覚になってしまいます。そこで決議されたのが「YJC」だったそうです。

そこから生まれたものとして、インターンシップを経験しないと内定できないというものです。リスティングプラスも21卒では、多くの役職者や新卒に協力してもらい面接官などを担当してもらいましたが、これは一般的によくあるものです。YJCはこれでは終わらず、現場が欲しい人材を採用するためにチームを作り、そのチームがインターンシップの企画から運営、さらには選考まで担う役割をしており、人事は、このプロジェクトが円滑に回るようにコーディネーターをしていきます。

現場と一緒に進めるからこそ、人事主導では思いつかなかったようなインターンシップ企画が生まれます。例えば、データアナリストを採用したければ、実際に使っているデータを使い仕事を経験するものや、広告の企画を考えるインターンシップなど社内の情報を使ってリアルな仕事を体験してもったり、非日常の中で人間性が明らかになるキャンプ型インターンシップをしたり、仮にサイバーエージェントの志望度がそこまで高くなかったとしても経験する価値のあるインターンシップがたくさんあります。そして社内の情報を使ってリアルな仕事体験をしてもうことで、学歴などの経歴からは見えてこない優秀さがわかったり、イベント的な何かをやってもらうことで、そこから人間性がみえてきたりします。

そして、もちろん採用は大事ですが、その後の育成があってこそ、というのがサイバーエージェントの考え方です。組織を「採用戦略本部」とし、「採用から育成まで一気通貫する」という新しい戦略づくりです。

なかでも興味深いのは、若くして社長になった人、役員になった人に同じパターンがいないというところです。採用でも型があったほうが楽ですが、そうはしないそうです。なぜなら、型を作りすぎてしまうと、同じような人ばかり採用されてしまうから。今はあえて、いろいろな目線から見て採用しているそうです。手間はかかるけど。

しかし、求める人材、もっと言えば将来にポテンシャルを感じられる人材として、共通の項目があり、「逃げない・やりきる・自ら発信する」です。

辛いとき、苦しいときに逃げない。挑戦していればいるほど。ぶつかる壁も大きくなる。そこで逃げてしまう人がいる。一方で失敗しても逃げずにずっと向き合い続ける人がいる。雲泥の差がでます。
リーダーになれば当然これが問われ、自分で意思決定し、自分で最後まで責任を持つ覚悟がいります。これが決断経験を増やしていくことにつながるのです。

そして、やりきること。市場や競合、背景は様々ですが、その期間に自分がどう向き合っていくのか、どんな風にやりきろうと自分で努力するのか。仮に失敗したとしても、チャレンジの機会を得て経験させてもらったことを決して無駄にせず、会社のために次に必ず活かすという気持ち。

最後に、自ら発信する。自分でどう努力したかはもちろん重要だが、周囲に知られる努力をする、発信する努力がとても大事になります。こういう事業をやりたい、経営者になりたい、そういう発信をしないとチャンスはめぐってきません。そして自分にどんな強みがあるのかなども発信することが必要です。そしてそれを受け止める場をサイバーエージェントはもっています。

■今自分にできること

本書を読み、サイバーエージェントの採用・育成が強いというのを改めて認識しました。今まで、ネームバリューや企業規模が違うということで逃げていましたが、サイバーエージェントも採用の大失敗を経て今があります。

まず私がやらなければいけないことは、現場の仕事を理解すること周りを巻き込むことです。先日、オウンドメディアディレクター採用で即戦力レベルでと言われたときに、どんな人材が当てはまるのか分かりませんでした。オウンドメディアチームがどんな仕事をしていて、どんな戦略を立てているのか、その上でどんな人間性が必要なのかを考えないと、無駄に母数だけ集めて時間だけがかかります。
まずは来週増本課長に時間をいただき、オウンドメディアチームの取組みや方向性を確認します。今後も同様に、必要なポジションがでたら、現場の声を聞く時間を必ず設け、私がまず一番に事業のことを理解している状態にしていきます。

もう一つ、新卒採用についてですが、22卒からもっとインターンシップに力を入れていきたいです。1つ考えているのが、内定者にそこをやってもらうことです。先日、マナラの内定者が営業に来ましたが、内定者が新卒選考に関わったり、ティール組織の研修をお願いしている会社も内定者が行ったりしています。リスプラハウスで行っている、非言語やプレゼンなどの研修も内定期間中に行い、広告などの専門スキル以外の力は入社前に身に着けることでより早く現場へ移行できるのではないかと思いました。こちらはもう少し他社のリサーチも行っていきます。