添乗とはという話②
どうも、ハツホです。
わたしは本屋が好きだ。本の虫というほどではないが、割と何時間でもいられる。最近はラノベの活字すら読むのがしんどいので、コミックエッセイをよく読む。職業エッセイがいい。身近な職業の知られざる裏側とか、あるあるとか、体験談とか、そういうのを知れるのが新鮮だ。
そうしたエッセイ本に大いに触発されて、このアカウントを立ち上げた面も確かにある。昔からだらだらと要点なくしゃべることに定評のあるわたしだが、文章にもそういった性格が正確に反映されていると実感する今日この頃だ。4本目の記事でまだ「体験談」の部分が出てこない。まだ目次でいったら「初めに」の部分だ。そのあたりはすっ飛ばして本文を読みだす派の人々にとって、今回の記事も退屈なものだろう。あまりに需要がない。しかも前後編構成とか誰得なんだ。私得だからいいのだ。
そういうわけで今回は、「添乗」を構成する「添乗本番」部分と「精算」についてお伝えしていきたい。なお9000字オーバーの大作のため、飽きたら申し訳ない。
添乗当日(起床~出発まで)
さて、添乗と言ったら文字通り添乗員の仕事のメインの部分だ。実際何をしているかを書き出す前に、先に「添乗三悪」について触れておこうと思う。
添乗三悪とは「添乗員の寝坊」「貴重品紛失」「積み残し」
これらは添乗員が絶対にやってはいけないとされている行為で、プロ添の場合、最悪干されて職を失うこともある。わたしは実は貴重品紛失だけやっちまったことがあるものの、他2つは幸いにして起こしていない。
いや、実は寝坊未遂ならある。修学旅行の場合、学校によっては旅程2日目以降の朝に起床放送をすることがあるのだが、その放送で飛び起きて(この時朝食開始30分前)血の気が引く音を聞きながら、人生で一番の機動力を発揮し朝食開始15分前に何食わぬ顔してスタンバイをしたのであった。いやあ、あの時はほんと死ぬかと思いましたね。
「積み残し」とは、お客さん(あるいは荷物など)をバスや乗り物に乗せ忘れる行為をいう。旅行業界の業界用語、口が悪くてすみません。とにかくこれは、一番やってはいけない行為とされて、やっちまったら最後しばらく干されることは間違いない。ちなみに添乗員が積み残されることもある。わたしだ。
添乗員の仕事の最たるところは「管理」という点だ。旅程管理・自己管理・貴重品管理・安全管理・時間管理……旅行の指揮命令者であり、中間管理職みたいなものだ。
そういうわけで、まず添乗当日の最初は寝坊しないこと。わたしの場合はスマホのアラームをスヌーズにして、かつ目覚まし時計を少し遠くの方に置いておく。こちらももちろん、大音量でスヌーズだ。
家を出る段階で、もう一度持ち物を確認する。貴重品を忘れていないか、必要なものは入っているか。確認、確認、また確認だ。それでも人は忘れ物をする。前泊ホテルにジャケットを忘れた時は笑うしかなかったし、寒かった。
旅行の出発地の集合場所へ着くまでにやっておきたいことがある。集合場所周辺にあるお手洗いや喫煙所の下見、天気の確認、高速などの渋滞情報、新幹線や飛行機の運行情報、できれば各観光地の今日の状況なども収集しておけるとデキる添乗員という感じだが、わたしの場合は大体電車でぼーっと流れる景色を眺めていた。よってお客さんとの合流時、渋滞がやばいとかいう情報を聞いて、顔で笑って心は真顔だ。
添乗当日(出発地到着~出発まで)
集合場所で業務を始められる状態になるのを「スタンバイ」という。スタンバイ後お客さんと合流したら、幹事さんや引率責任者がいる場合はその人たちと打合せをする。お客さんの当日欠席情報や、簡単に旅程のすり合わせ、細かい要望・確認事項などをヒアリング。VIPと呼ばれる、重要顧客(社長・お偉方、校長先生)へご挨拶も忘れない。大事なのは笑顔だ。笑顔があれば大体のことはどうにかなる。
ツアーの場合は、顔を知らないお客さんとここで初めて対面するため、目印となるもの(大抵社旗)を掲げて、参加者名簿を参照しながら点呼を取る。この名簿をきちんと管理しておかないと、のちのち積み残しだとか、トラブルの原因になるため注意を払う必要がある。
お客さん全員と集合出来たら、乗り物へ乗れるように誘導するのが添乗員の役目だ。旅程によって、バスであったり新幹線や飛行機と、選択肢は様々だ。いずれにしても、堂々とその乗り物まで案内できるように、誘導導線を下見してシミュレーションすることが重要だ。乗り物に乗ることを「乗せ込み」というが、この乗せ込みこそが添乗員の最初の見せ場であり、今後のお客さんからの印象を左右する正念場になる。ここでいかにスムーズに、かつスマートに座席まで案内できるか。乗せ込みさえ終われば添乗の8割は終わったようなものだ。
乗せ込みが終わればお客さんはほっと一息つけるだろう。新幹線やバス車内で朝食代わりに駅弁を広げる人、座席をより居心地よくカスタマイズすることに執念を燃やす人、早速寝る人、様々だ。そして添乗員は、休む暇がない。
添乗当日(出発)
バス旅行であれば、出発前に乗務員、つまり運転手さんやバスガイドさんと打合せを行う。どこでお手洗い休憩を取るとか、渋滞しているからルートを変えようだとか、ここの観光地ではこういう案内をしてほしいとか。バスが発車してしまえば、法令順守でみだりに乗務員へ話しかけてはいけないので、この段階で的確にすり合わせる必要がある。しかも簡潔に。添乗員の仕事は旅程管理、つまり定刻にバスが出発できるよう段取りをしておかなければならないのだ。いざバスが出発したあとも、マイクを使ってご挨拶、行程案内のアナウンス、バス内の注意事項を伝えたり。
最初の交通手段が飛行機なら、国際線はともかく国内線では機内を歩き回るのはCAさんたちの業務妨害にもなる。なので、お客さんが間違いなく座席に座ったことを確認した後は添乗員もおとなしく座席に座っている。気になることを確認したら、あとはスマホも機内モードであるからして調べ物もできないゆえ、体力温存おやすみなさいだ。
大変なのは新幹線・特急列車
東京駅発→金沢駅着を例に挙げてみる。まず大概の旅行会社は団体旅行における新幹線の「途中乗車」を許可している。つまりこの場合は東京駅発後、上野駅、大宮駅、時々高崎駅などなど、各所からぽろぽろ乗車してくるのだ。そのたびに添乗員は乗車口へお迎えにあがる。おもてなしのためであり、きちんと乗車されたか確認するためでもある。途中乗車のお客さんに挨拶をして、そのあと「車内販売」の営業活動を行う。新幹線の乗務員さんが押しているカートの販促ではない。
車内販売自体はどんな添乗であろうと付随する可能性はある。お土産や食事、観光地での体験などが多い。旅行前に払う旅費に含まれない、いわゆる「オプション」というやつだ。買う・買わないはお客さんの判断だが、いかに販売数を伸ばすか、みたいなところは会社の無言の圧力を感じるわけだ。
そしてこの車内販売の集計が厄介で、というのも申し込みの締め切り時刻が設定されている場合が多いためだ。お弁当など生ものは発注するのに締め切りが設けられるので、これに間に合うように集計をする必要がある。また、列車を降りた後の添乗員は大概多忙だ。可能な限り列車内で済ませておきたい。
目的地が北陸新幹線・金沢駅なら、軽井沢駅までには集金・集計まで済ませておきたい。東京駅から所要時間は一時間半だ。軽井沢から長野の間が勝負。なぜならそれ以降、北陸新幹線は怒涛のトンネルのターンに突入するため電波が途絶える。かといって電波の復活する富山駅を過ぎたら降車の案内を始めないとならない。上田がカギだ。
そして電話連絡が必要なのはオプション販売の取引先に限らない。本日宿泊のホテルに最終連絡をする必要があるし、あるいは細々とした各所へ連絡を入れる必要もある。頼むから電波よ途切れるなと願うばかりである…。
いろいろが一段落したら、ここでようやく添乗員も席に座れる。30分くらいだろうか…。トンネルを抜け、右手に日本海が見えてきたら準備をする。まずトイレに行っておく。
トイレは大事だ。このあとお客さんにトイレの案内をするのだが、先に行っておかないと永遠に行けない。この先2時間くらい行けないこともある。トイレは大事だ。
目的地につく30分くらい前を目安に、お客さんへ1回目の降車の案内をする。車内でお手洗いを済ませること、ぼちぼち荷物の整理を始めてもらうこと、ついでにごみ袋を手にごみの回収なんかもする。2回目は到着5~10分前を目安に、忘れ物をしないことを強調しながら降車の案内。なぜしつこく降車案内をするかというと、終点ならまだいいが、途中駅降車の場合に過去降り遅れるお客さんがいたからだ…。また、あんなに言ったのに忘れ物をすることもある。あの時財布を忘れた中学生、先生にめっちゃ怒られてたな…。
さあ、目的地に着いた。ここからは飛行機も同様の流れで、改札・出口付近にバスガイドさんが待っている。先頭をバスガイドさんにお任せし、添乗員は一番最後尾をついていく。ご高齢の方などは歩みが遅いことを不安に思われることもあるから、極力のんびり接するようにしていた。
バスに乗せ込んだら、ここでまた乗務員との打合せ。そして出発、以降はバス旅と同様だ。そして出発する段階で、最初の目的地へ到着時間などを電話連絡をする。これを「入れ込み(入り込み)」という。いかんせん観光バスがどこに行くにしても、受け入れ側に心構えをしてもらう必要がある。何十、あるいは百人以上が一斉に動くので、この入込みも大変重要だ。
添乗当日(観光地到着~出発)
ここまでくれば息がつけるかと思いきや、実はそうではなかったりする。次の目的地まで移動距離があるのなら少しゆっくりできるが、例えば「兼六園」に早速行きますとなったら大変だ。移動時間15分で着いちゃいますけど。着くまでに添乗員の挨拶、バスガイドさんの挨拶、行程案内……これだけでゆうに15分だ。しかも観光地なら、どんなところが見どころか、どういうルートを周ればいいか、おすすめ土産は何か、観光後の出発時刻、なんて案内したいことは山ほどある。加えて幹事さんや社長が挨拶しだすと、ハイ到着なんてこともあったりする。
こういう諸々を計算し、どこで何を案内するか、配布物を配るタイミングなど、一手に決定するのも添乗員だ。いかにスマートに旅行を演出するか、ここに添乗員の力量がかかっている。
さて、スマートに案内を終えた添乗員。観光地の駐車場にバスが入っていったらおもむろにシートベルトを外す(※よい子はマネしないでね)。バスガイドさんはここで、バスが後進するのを誘導したりする。「バックオーライ」というやつだ。バスが止まったら運転手さんへ労いの言葉を忘れない。そしてバスガイドさんに目配せして、添乗員は走り出す。
文字通り、走り出す。別に走らなくてもいいのだが、できれば小走りぐらいはした方がいいかもしれない。なぜなら入場チケットを買ったり、パンフレットをピックアップしたり、そしてその枚数を数えたりを、お客さんが到着するまでにしておかなければならないのだ。チケットなどは貴重品にあたるため、これを管理するのも添乗員の役目。ここでスムーズにチケット購入・配布物ピックアップができないとお客さんを待たせること、すなわち観光時間を削ってしまうことになる。だからできれば添乗員は走った方がいい(もちろん迷惑にならない範囲で)。
チケットを配布しお客さんがおのおの観光地へ散っていったら、バスガイドさんはお役目終了、バスに戻るなどする。添乗員はもう一仕事。施設や周辺を周って、お客さんの写真撮影のお手伝いや、おすすめの場所を案内したりとコミュニケーションを図る。お客さんの旅の思い出を作るお手伝いをするのも添乗員の大事な役目だ。
そして時期を図ってバスへ戻り、駐車場を借りている施設に挨拶や、何か精算が発生するならそういう業務を行ったり、次の目的地に入込みしたり、オプション商品の受け取り(積み込み)があるなら、購入したお客さんに渡さないとならない。
出発時刻の10~15分前からはバスを開けてもらい、お客さんのお出迎えをする。出発時刻少し前には、車内の人数点呼を行う。ここでしっかり数えないと積み残しが発生するので、最低でも2回はしておきたいし、たとえクラスの担任の先生が「全員います!」と言ってくれても自分で数えておきたい。先生、背もたれの黒いパーカーを生徒さんと見間違えちゃいけませんよ…。
お客さん全員が戻ってきたら、バスは出発。ここまできたらようやく添乗員もゆったり座席に掛けられる。もちろん次の配布物の準備や必要な電話連絡などあるかもしれないし、車内の様子を気に掛けておくことも大事だ。車内温度は適正か、何か困っている人はいないかなど。
そして旅程が遅れず・または早すぎず進んでいるか、その場合はどこで調整するかなどの確認や、次の目的地の出発時刻も早めに目安をつけておく。ゆったり座席につけたところで、実は見えないところで計算を巡らせているのだ。
添乗当日(食事場所)
旅の醍醐味と言えば食事もその一つだろう。添乗員をしていて何がいいかって、ご当地のおいしいものを食べられることを一番に上げる人は多いだろう。
そして添乗員はここでも働いている。入込みは2回くらいはしておいたほうがいいし、先方に席割をお願いするため人数やグループ内訳(掛け数)を伝えておく。これを「席割り」という。この席割りがスムーズにいくと、半人前程度にはなったような気がする。
食事場所についたら添乗員は可能な限り早く食事会場へ向かう。食事をするところなのでほこりをたててはいけないから、走ることは控える。そして席の確認。人数分の食事が間違いなく配膳されているか、伝えた掛け数通りに席割りが作られているか、アレルギー対応食は内容が間違っていないか……など。
そのうちバスガイドさんの案内でお客さんが会場に到着するので、添乗員の思い通りに席に座ってもらえるよう案内を行う。「2名グループの方はここからお向かい合わせでおかけください」「3名グループの方はこの席に3名でかけてください、お隣は1名参加の方のお席で相席になります」……
席にお客さんを案内することを「流し込み」というのだが、パズルのピースを埋める作業に似ている。最後までうまくはまったときは達成感があるが、どこかでずれて席が一つ飛んでいる、なんて時はすでに着席した人を立たせてやり直すわけにもいかないから、神経が尖る。たとえ社員旅行や修学旅行など、席割り不要の団体でも、親しいグループで固まりたいから席が一つ飛ぶ、なんてことはよくある。
そうして全員が食事を始めたら、バスガイドさんは食事に行ってもらい、添乗員はしばらく会場内を様子見する。団体の席というのは、大概どこも窮屈だ。少し椅子を引いたりすると、背中合わせの席の間の通路が消滅してしまう。そうするとセルフサービスのお水を取りにも行けないし、箸が落ちたら拾うこともできない。そういう困りごとがないか、あるいは食事の不備がないかを確認するためしばらく立ち会い、大丈夫そうなら自分も食事をとりに行く。
これは余談になるが、添乗員は大抵の場合、お客さんと食事場所が異なる。添乗員だって食事くらいはゆっくりとりたいし、何よりも添乗員・乗務員はお客さんと食事内容が異なる場合が大多数なのである。「乗務員食」という、安価なメニューが用意されており、これは大抵カレーとか、ラーメン、そば、カツ丼といった内容だ。添乗員は仕事でおいしいものが食べられる? 世の中そんなに甘くない。
また添乗員自身が食事をゆっくりとれるかと言えば必ずしもそうではない。というか大抵15分とかで食べ終えなければならない。これはお客さんの食事に立ち会っていたり、出発時刻前にはバス前でお出迎えをするため、必然的に添乗員の食事時間は短くなるし、またそうであるなら簡易食であるほうが望ましい。カレーとラーメンは飲み物だ。
添乗当日(ホテル)
旅の醍醐味の一つ、宿泊施設。ここでも添乗員の仕事はいろいろだ。まず到着前には施設案内が必要だ。大人の旅行の場合は部屋割り、宿泊案内の紙を作成しておき、これに則ってアナウンスをしたりする。宴会場(夕食・朝食会場)がどこか、何時から開始か、温泉の場所がどこで、営業時間はいつまでか、売店の場所・営業時間、宅急便を使う人は受付がどこでとか、翌朝の出発時刻は何時で、など。
到着したらそれぞれのお部屋に行っていただく。そのためにエレベーターの位置を案内したり、最近はあまり聞かないが、ツアーの時に必要そうなら一部屋ずつ訪問する「お部屋周り」を行うこともある。部屋で困っていることはないかとか。お部屋周りをしないまでも、お客さんの宿泊階の廊下を少しうろうろしてみたりする。
問題なさそうならホテル側と打合せをして、先に宴会場の確認などをする。席割り、社員旅行などの場合でカラオケなどの機材の有無・操作の仕方を確認したり、あとは館内のどこに何があるか、実際目で確認したり。そこまで終わって、ようやく添乗員も自室に荷物を置きに行ける。
よくお客さんから言われるのは、「添乗員もお客さんと同じ部屋に泊まれていいね」だ。いや~泊まれたらうれしいね…。
添乗員・乗務員には大概「乗務員部屋」が割り当てられている。これがなんともいえないのだが、ビジネスホテルのシングルルームみたいな部屋ならまだいい方で、何かが出そうな旧館の和室とか、倉庫みたいな場所に押し込められた部屋とか、はたまたトイレと洗面台すらない山小屋スタイルであったり、まあ仲間内でネタにする時には盛り上がるが、一晩明かしているときの気分はそれはもう盛り下がっている。かといってホテルの恥部みたいなところをお客さんに話すのも忍びないので、必殺曖昧なほほえみでかわしたりするのだが。
荷物を置いてゆっくりできるかと言えばそうでもない。宿の到着が早めで、夕食まで時間がある時は多少休憩できたりするが、17時宿着、18時半食事だったら、荷物を部屋に置きに行く時間すらないかもしれない。また、添乗によってはフロント近辺に「ツアーデスク」を設け、お客さん対応に添乗員が待機する場合もある。修学旅行などは特に多い。それに1日の様子を見て、翌日からのバスや乗り物の席を調整することもある。ツアーの場合は「日報」を作成せねばならず、これがまた時間がかかる……。
夕食会場には食事開始30分程度前からスタンバイする。この頃になると食事が運ばれて徐々にセッティングが完了するので、人数分の配膳が正しくされているか、料理の漏れはないかなどを確認する。また社員旅行など宴会系なら、ビールの本数は足りているかなども目を配る。食事会場が整ったらお客さんを席に案内する。ホテル側で人手があれば任せるが、大概人手不足で添乗員も誘導をする。
ツアーであれば、全員が席についてしばらく立ち会った段階で、その日の業務は終了だ。自分も食事をとって、温泉入って、寝る。
大変なのは社員旅行や修学旅行系で、宴会の場合はお酌に回ったり出し物の手伝いをしたり、はたまたバーカウンター(ビール、焼酎、水などがドーンと置いてある一角)でお酒作りをしたりする。慣れた添乗員はマイ栓抜きを持っていることもある。
大概宴会なら2時間で終了するので、あるなら二次会へ案内し、添乗員はそこでやっと食事にありつき業務終了。この時点で21時とかザラだ。こうして添乗員は太っていく。
修学旅行は先生方と同席で食事をとって、またツアーデスクで待機する。翌日生徒に配るものの準備や何やら細かい作業を行って、早ければ21時くらいに業務終了だが、夜の打合せに出なければならない場合は、睡眠時間よさらばってなもんだ。夜の打合せは生徒が寝静まった後、22時半~23時くらいから開催される。#働き方改革とは。
そして夜は更け朝が来る。朝は朝食時間の30分前に会場にスタンバイし、いつものように確認作業、立ち合い、自分の食事、そしてフロントが混む前にホテルの精算業務を忘れず行い、バスが配車されたら乗務員と打合せ、お客さんを乗せ込んで、2日目開始だ。
添乗当日(最終日)
最終日には帰りの駅(空港)到着前にお客さん全体にお礼のご挨拶をして、列車や飛行機に乗せ込みする。帰りの列車内では車内販売のお弁当が付くことも多いので、積み込みをしてお客さんへ配ってということもするし、帰りも途中の駅で下車するお客さんがいるなら、何やら車掌さんと密談をするため車掌室まで行ったりもする。帰着地(初日の集合場所)につけば、お客さんをお見送りするまでが添乗だ。
以上が、添乗当日の添乗員の仕事内容だ。書き起こしてみたらなんとまあ業務の多いことか。実際はこれらをいかにスマートにこなすかがデキる添乗員の証のため、お客さんはこんなに仕事していることに気付かないかもしれない。ともあれ、自分の家に帰りついたら毎回ばたんきゅーである。
精算
さて、添乗における仕上げが精算だ。精算というが、実際は報告業務といった方が語弊がないかもしれない。
まずは文字通り「精算」作業。打合せ時に受領した現金(添乗金)を、実際の収支と照らし合わせ領収書を添付し精算報告書を作成する。そして報告書、これは日報の作成や行程表に実際の時間を記録したものをまとめておく。そしてアンケートの集計だ。ツアーや一部の企業旅行などでお客さんに旅の感想を記入してもらい、それをまとめる作業だ。ちなみにこのアンケート集計が嫌すぎてツアー添乗をやめたのがわたしである。
会社に行く前までに以上の資料をまとめておき、出社したら企画担当者(営業)へ提出する。ツアー中のお客さんの声や、添乗員目線からの改善点・喜ばれた点などを報告する。
現金などのお金に関わる部分は経理に回され、そこで問題がなければ精算業務は完了だ。早ければ1時間程度で終了するが、とにかくここまで終わったらようやく1本の添乗が完遂となる。
終わりに
さて、実際添乗員がどんな作業をしているかということを、少しでも伝えられただろうか。今回はトラブルの類はほとんど紹介せず、業務内容に比重を置いて記したものの、まあこんなにきれいに添乗が終了することなんてほとんどない。そのあたりのトラブルに関しては、おいおい事件簿として記事にしていくこととして、次回もまだ「添乗とは」に関わる部分を書いていきたい。
次回は添乗員の繁忙期に絡めてツアーと社員旅行・修学旅行の違いをお伝えしていこうと思う。
今回もここまで長々お付き合いいただいた方、ありがとうございました。
トップ写真撮影地:八方尾根(長野県)
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