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天狗が語る「いいね!」反作用問題(後編)

小学生時代、極端に絵がうまい友人"神童"は「絵がうまいね」とほめられても喜ばない子でした。「ほめられたからって、ただ単純に喜ばない」のは、なぜか? という不可解なテーマの続きです。

一方で、ほめるのが下手な人、というのがいます。ある日、当時の上司が作業中のぼくに言いました「キミは、コツコツ仕事をしてえらいね」と。

いや……やってない、やってない! コツコツ仕事してたら、今これやってない! もう締め切り過ぎてるよ!

この上司は打ち合わせの席で、あるイラストレーターさんに「最近はすっかりマンガ家さんですね」と言って不信感を抱かれたこともあります。

イラストレーターさんがマンガを描くようになるのって、けっこうたいへんなんですよね。マンガは"流れ"で見せるものであって、ほどよく簡素化する必要があります。1枚1枚それぞれに強く目を引くことが求められるイラストと、マンガの1コマ1コマは価値観が異なります。意識を変えて、まさに「木を見て、森を見ない」にならないよう注意しないといけません。

まだ1作しかマンガを描いておらず、試行錯誤の途上にあったイラストレーターさんとしては「見る目のない人だな」と思うことでしょう。しかも、これからイラストの発注をしようという席ですから、なおさらです。

実際、イラストレーターさんは後日、その上司のことを「なんとなく信用できない」と言っていましたから、深刻です。このとき、ぼくはようやく神童の気持ちが少しわかったような気がしました。

「ほめるの、難しい」

多かれ少なかれ、そう感じた経験がある人は少なくないと思います。逆に言えば、ほめられるのも難しい。

これは言葉としての評価だけでなく「商品の販売数をどう受け止めるか」などにも言えることです。

これまでの経験として、自分が「良い」と思うものはあまり売れず、「あまり良くない」と思うものはけっこう売れる、ということが度々ありました。そして、あまり売れない「良い」ものの評価・感想は嬉しいものが多く、よく売れた「良くない」ものの評価・感想はそれほど嬉しくないことが多かったのです。

そういえば、手塚治虫といえば「鉄腕アトム」が代表作と言われますが、ご本人はアトムの自己評価は(世間が言うほどには)高くないことをどこかで話していました。また、SF作家アイザック・アシモフも「夜来たる」が同様で、自己評価が高いのは別の作品であることを述べています。

ぼくの場合、このnoteで「これは最高の出来!」と思うのは #140字小説 『目覚まし時計』ですが、評価は低めです。うーん。

評価が「多い」ものを繰り返し、評価が「少ない」ものをやめるようにしていけば、人気を得たり、売上げを増やすことは可能でしょうし、世間はそうやって「ビジネス」をしているんでしょう。それはわかります。

でもそれをやってしまうと「自分を失う」ことになるんですよね。あるいは「自分を騙す」か。どちらも心を病みかねません。

それともここは、「手塚治虫やアシモフに近づきつつある!」と天狗になって心を落ち着かせておけばいいんでしょうか!?

――という残念な冗談はさておき。

SNSの「いいね!」は言葉をともなわないので真意を汲み取れないのですが、noteの「スキ」はちょっと違います。

こうして参加してみると、noteは当初思っていたよりずっと良いコミュニティでした。その理由のひとつは、書き手が多く集まっている稀有な場所だからだと思います。

記事に「スキ」してくれた人のnoteを読めば、その人の価値観や最近の関心事がわかりますから、言葉にせずともスキの「意味」がわかる場合があります。それに、こちらも「スキ」するような記事、書き手に出会う機会も少なくありません。

twitterだって同じような状況のはずなんですが、あちらはなんとなく一方通行になりがちなんですよね……。noteのユーザーは「読む気」がある人がほとんどだけど、twitterは「言いたいだけ」の人が多い感じでしょうか?

ともあれ、そんなこんなでnoteの記事にいただいてる「スキ」は、評価の意味を正しく認識したり、評価のズレを補正したりできるものとして大いに重宝しています。「ほめられたからって、ただ単純に喜ばない」ことで一呼吸置ければ、冷静に読み取ることができる……気がしています。

ただ、時間があるときに丁寧に見ようと思っているせいで、通知を貯めこみがちになっているのが悩みどころ。

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100超えちゃうと逆に時間とれないんですよね……これは良くないです。

というわけで、いただいたコメントへの反応が遅れることなどが増えていましてごめんなさい。

でもなんとか、がんばります。がんばれます。

ぼくならできると、天狗は今でも信じているのです。

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