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HYUGA PRIMARY CARE #1在宅訪問薬局事業 

創業すぐの2008年から開始し、現在も当社の柱事業である「在宅訪問薬局事業」は福岡県太宰府市で「きらり薬局」を開局したことから始まります。
上場時にちょうどコロナ禍であったこともあり、”コロナの患者さんにお薬を届ける画期的な薬局”と評されたこともありました。
実をいうと、普段は通院できるけれども体調がすぐれない時だけ薬を持ってきてほしいという方を訪問することはほぼありません。
私たちが訪問するのは、普段より在宅療養をされている方々になります。
今回は、街で見かける薬局とはどのように違うのかという視点で、事業の紹介をしてまいります。


薬剤師がおこなう在宅訪問サービス

普段より在宅療養をされている方々の多くは、介護支援、医療的ケア、ターミナルケアを必要としています。身体的に自分で動くことができず、自宅療養が必要な状態で、医師が医学的管理が必要と認めた場合のみ「在宅患者」として支援を受けることができます。日本は75歳以上人口と高齢単独世帯が増えており、在宅患者への支援ニーズが年々高まってきています。
また高齢化に伴う国民の医療費負担は年々増加しており、政府としても財源確保を目的に長期入院による療養から在宅療養・生活への移行を進めています。※詳細は下記記事をご覧ください。

当社事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2022)より抜粋

訪問診療を受ける在宅患者は2021年時点で約90万人となっており、そのうち8割が75歳以上の高齢者が占めています。現在(2023年3月末)当社は8568名もの在宅患者の支援を行っています。訪問診療を受ける方全員が薬剤師の在宅訪問を受けている訳ではありませんが、在宅患者の100人に1人が当社サービスを利用していただいていると認識しております。

取り組んだきっかけ

創業者である黒木は、創業以前より高齢化社会が進むことに伴い、薬剤師が在宅訪問する需要は必ず増えると感じていました。当時は病院やクリニックの傍に立地する門前薬局が主流です。薬剤師が自ら動かなくても、患者は待っていても来る時代。来局が難しくなった方を訪問する薬剤師はいたものの、あえて在宅患者を獲得に行くような薬局は皆無でした。
黒木がある介護施設を訪問すると、施設の看護師が入居者全員の処方箋を持って薬局へ取りに行き、施設で数時間もかけて配薬しているケースがありました。その業務に追われ本来の看護に充てる時間が奪われていたのです。
いくつもの施設に足を運ぶことで、薬局で待っているだけでは気づけなかった、患者の元へ薬が届き服用するまでにいくつもの問題があることが見えてきました。
また創業して間もないお正月、他の薬局が閉まっている中、黒木が在宅療養中の末期がん患者さんに医療用麻薬(がん特有の強い痛みを抑える薬)を届けたことがありました。待っていたかのようにすぐに投与され、その後息を引き取られました。その時亡くなった患者さんのご家族より「あなたが薬を持ってきてくれなければ、私の妻は人生の最期を痛みに苦しみながら死んでいた。本当にありがとう。」と号泣しながら感謝を伝えられたのです。

このようなことがきっかけとなり、
・在宅医療の現場では見えない部分で薬に関し困っている方がいる。その方たちを自らが動くことで見つけ出し、薬局として支援する。
・支援は24時間365日対応とする。
・そしてこれらの支援を日本の当たり前にする。

をビジョンとしてとらえるようになりました。

介入することで何が変わるのか

前述しましたが、当社は現在8568名(2023年3月末)もの方を薬局として支援しています。薬剤師が訪問することで、どのような効果があらわれるのか紹介いたします。

・薬を一包化・カレンダー管理をすることで、薬がしっかり飲めるようになり、結果体調が改善し服用薬が減った。
・1日3回飲んでいた薬を1日1回型製剤に変更することで、服用回数が減り同時に飲み忘れも減った。結果、体調が安定するようになった。
・必要性の低い薬を医師に提案し削減。服用の負担と医療費削減に貢献できた。中には結果体調が改善したケースも。
・薬の飲みこみが悪い方の内服薬を貼付剤へ変更することで、支援する施設スタッフの手間が減った。
・輸液や持続皮下注射に対応することで、入院せずに終末期を自宅で家族と一緒に過ごせた。

このように症例を挙げるときりがありませんが、体調が安定・改善すれば入院を回避できます。また医師との連携でさらにその率を上げることができます。利用者が入院してしまうと売上が上がらなくなるため、これは介護施設にとって最も重要なことと言えます。
薬剤師が在宅医療に介入することは、患者さんだけでなく、ご家族などの支援者、その方に関わる介護事業者、更に加えると医療費削減に繋がるため国にとってもメリットがあることなのです。そのため、2年に1度の調剤報酬を見直す際、在宅医療に取り組む調剤薬局に対して、加算措置が講じられています。これは診療報酬においても同様です。在宅医療に取り組む薬局とそうでない薬局との点数分配は大きく差が開いています。

市場概況/経営戦略

在宅患者の多くは高齢者であり、また要介護(要支援)認定者であることがほとんどです。日本の要介護(要支援)認定者は686万人*を超えています。それを踏まえると、介護度が高いにも関わらず在宅医療(訪問診療・在宅訪問薬剤管理指導)を受ける方は1割程度しかいないことがわかります。常時介護が必要となる要介護3以上の方は236万人*であるため、今後3割程度の方がサービスを利用する可能性があるとみています。現在出来ていない理由として在宅医療の普及が追い付いていないことが挙げられます。高齢化が進むことでさらにこの市場は拡大していきます。
(*令和5年3月分介護保険事業状況報告(暫定)より)

当社事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2022)より抜粋

またこの市場には高い参入障壁が存在します。国が在宅医療を推し進めているにも関わらず、新規で参入するには店舗出店・運営管理・人材育成の面におけるハードルがそれぞれにあるのです。

店舗出店における障壁

街でみかける薬局の多くは「門前薬局」と呼ばれ、外来患者の来局が期待できる医療機関の近辺に出店しています。そのため、競合薬局と立地が近接していたり、立地が重要なため出店コストが高くなる傾向があります。
私たちが手掛ける「在宅訪問薬局」は立地を選びません。半径3.5kmの商圏内に対象となる在宅患者数(想定)を確認しドミナント方式で出店します。

当社事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2022)より抜粋

「在宅訪問薬局」は24時間体制で在宅訪問対応・薬剤管理することにより
「門前薬局」にくらべ高い報酬料となっています。在宅医療は国策としても進められており、対応できる薬局はより高い報酬が得られるような仕組みとなっているのです。
また契約を締結し”かかりつけ”となるため人的繋がりが強くなり、患者のQOL向上にも貢献します。そして最期を迎える時まで長期にわたり支援します。サービスに満足いただいていれば、外的要因で患者が離れていくリスクは少ないと言っていいでしょう。
しかし在宅訪問の実績をあげることが出来なければ、外来処方箋による売上に頼ることになります。門前薬局モデルでない場合は独自で患者獲得する施策が必要となり、収益性の面では厳しくなります。

当社事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2022)より抜粋

運営管理における障壁

ではどのように在宅訪問の実績をあげているのでしょうか。店舗の特徴としては、調剤室を広くすることで大量の調剤業務を効率よく対応しています。
様々な疾病を持つ患者に対応するため、外来型薬局に比べると医薬品の種類・数量共に多く在庫しています。また医薬品の置き場に加え、調剤工程が多いため作業を行う充分なスペースも必要となります。外来型薬局はこのスペースが限られているため対応が困難となります。

当社事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2022)より抜粋

在宅患者の薬は一包化してお渡しすることがほとんどです。機械化を進めることで調剤過誤を軽減し、過去数万人の在宅患者に対応してきた経験から服用する人に合わせた個別対応(カスタマイズ対応)を行っております。この個別対応は大変手間がかかるため、その分人員を必要とします。患者の過ごす環境や身体状況の変化にも対応していかなければいけません。調剤だけでなく訪問に割く時間も必要となります。そのため、在宅訪問薬局は従来の薬局と比べ倍の人員が必要となります。
外来型薬局が個別対応・在宅訪問するためには対応ノウハウを持つこと人員を確保することの両方が必要となるのです。人員を単純に倍にするだけでは、人件費がかさむだけに終わってしまいますので、訪問の効率化なども併せて取組みを行っています。

当社事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2022)より抜粋

人材育成における障壁

在宅訪問薬局の薬剤師は、カスタマイズされた薬を届けるだけではありません。在宅患者やその方を支援する様々な職種の方々と連携しながら、最適な処方となるよう尽力します。そのため外来型薬局に比べると介護の知識も必要となりますし、相手とのコミュニケーション力・折衝力・営業力も求められます。元来、薬剤や医療の知識をメインに評価されてきた薬剤師にとっては大変ハードルの高い業務です。当社では約半年~1年がかりで戦力となっていきます。

当社事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2022)より抜粋

障壁を越え、高い収益率を実現

薬剤師による在宅訪問は市場拡大によりニーズは増えています。しかし調剤薬局は多く存在するも、様々な障壁があり従来の外来型薬局ではその対応・参入が難しい状況があります。
全国の調剤薬局における、在宅患者数の割合平均は店舗当たり全患者の約1~2%と言われています。当社は患者の約半分が在宅患者です。
また2021年の医療経済実態調査(厚生労働省)から調剤薬局の営業利益率平均は6.5%であることが分かります。比べて2023年3月期における当社在宅訪問薬局事業の営業利益率は11.4%であり、高い収益率を実現しています。
私たちは在宅訪問に力を入れる薬局のパイオニア的存在として、今後も「きらり薬局」のチェーン展開を拡大していきます。

”24時間365日、頼れる薬剤師へ相談ができ、自宅に薬も届いて安心して療養できる。”ーーーそんな社会の実現を目指してまいります。


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