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ダイエットツアー

体重オーバーが5キロともなってくると、深刻な問題なのです。
新米薬剤師の美雪さんは、ここ数ヶ月、仕事に集中しすぎた副作用でしょうか。
少し太り過ぎてしまいました。
「薬剤師なんだから、痩せ薬でも自分で調合したら」
口の悪い同僚は、彼氏募集中の美雪さんの気持ちも知らず無責任なことを言います。
「薬で痩せたって、薬やめたら、また太っちゃう」
で、根本的な治療法を考えていた美雪さんは、近所の旅行社のツアーに
お遍路さんになってダイエット2泊3日の旅、
金曜日出発で日曜日のアナタは3キロ減量確実。
なんてツアーがあることを発見。
うーん、これは効果があるかも、でも、オバちゃんばっかりだったら
話し相手がいなくて寂しいかも。
でも、ちょっとの我慢でダイエットできるならと言うわけで、美雪さん、単身ダイエットツアーに参加申し込みました。
ツアーコンダクターの
「いえ、お若い女性の方もいますよ」
の言葉に一安心の美雪さんでした。
さて、出発の金曜日、旅行社に行くとツアーコンダクターのお姉さんが
お遍路さんのカッコをして待っていました。
美雪さんはお遍路さんグッズを受け取りました。
例の白い服ですね。
で、美雪さん、旅行社の用意した仮設の更衣室でお遍路さんに変身して、これからの二泊三日に期待に胸膨らませてバスに乗り込んだのですが。
美雪さんは唖然としてしまいました。
なんと、ツアー参加者は若いカップルばかりでした。
なるほど、皆さん、若干太めかなとは感じたのですが、みんなお揃いの白い服なんか着ちゃって、美雪さんは大きな劣等感を感じてしまいました。
さて、各地の旧跡をトボトボ歩いては、バスに乗り、また歩く歩く歩く。
その上、右を向いても左を向いても、カップルばかり。
その上、手なんかつないでるのもいる。
ええ!腕組んでるのも。
おいおい、そこの男、女の腰に手を回すな。
私たちは心を清める旅に出ておるの。
イライラの極致に達して空腹でグーグーの美雪さんの口に入る物は、山菜に豆腐ばかり、ご飯もふんわり一膳のみ。飲み物はシブーイお茶ばかり。
やっとのことで長い長い修行ツアーを終えて、日曜日の夕方、美雪さんは家に帰ってきました。
ひと風呂浴びて、アーアアーとアクビしながら、ヘルスメーターに乗った美雪さんは、いつもと違う数字あたりをユラユラ揺れている矢印を見てニンマリ。
そして、
「バンザーイ」
なんと2泊3日で5キロ減ったのであります。

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