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 人は皆、生まれてくる時に何らかの「人生の宿題」を背負っている。その宿題をやらないと、別の誰かが代わりに、その宿題をやることになる。

子供の頃、親から受けた虐待が少年犯罪につながることが多い。
研一の父は髪結いの亭主だった。
定職に就いたことがない
ずっと、研一のお母さんが美容院をやって家計をささえて来た。
当時の美容院は、繁盛していた。
最新の設備を整え、若い美容師さんを何人も雇って
研一のお母さんは美しく輝いていた。
 
あれは小学校2年生の時の雨の日だった。
お父さんが雨傘を持ってきた。
研一は、
「来るなって言うたやろ」
と怒って言った。
きっと若くてキレイなお母さんに傘を持ってきて
欲しかったのだろう。
それに、ほかの子は皆お母さんが傘を持って来るからだ。
研一のお父さんは気の弱い人だが、
酒に酔うと、幼い頃から研一に暴力を振るった。
今で言う幼児虐待だった。
そんな境遇で育った研一は、弱い者いじめの天才だった。
強い者には、絶対手を出さない。
むしろペコペコしていた。
研一は中学2年から学校に来なくなり
いくつかの凶悪事件を起こした。
 
18歳の時に強盗傷害で捕まった時、
取調官が幼少の頃の生活を質問すると、
研一は小さな子供のように泣いたという
「パパが叩くんや」
・・・・・
 
研一を救ったのは、お母さんだった。
被害者に責任を問われて、失踪してしまったお父さん
の分までお母さんはひとりで頑張った。
何度土下座したか分からない。そして、
「申し訳ありません。あたしが仕事ばっかりして、
あの子見てやらんかったからです。みんな、あたしが
悪いんです」
を何度言ったか分からない。
釈放された研一を出迎えたのは、もうキレイではない
年老いた母と店員のいなくなったボロボロの美容院だった・・・
 
人は皆、生まれてくる時に何らかの「人生の宿題」を
背負っていると思います。
その宿題をやらないと、別の誰かが代わりに、その宿題を
やらなくてはならなくなります。
その別の誰かとは、たぶん、自分自身が一番大切に
思っている人や大切にしなければならない人です。
自分がやるべきこと自分ができることは、
自分の人生の中でやってしまうべきなのです。
そのような姿勢があれば、
たとえ、やり残したことがあったにしても、
それは単なる遺物ではなく、
次の世代にとって夢や希望の証となるはずです。
 
研一は、今、お母さんと二人で美容院をやっています。
 

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