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手術の日

 朝になると看護師さんがやって来て手術の準備が始まった。ベッドの後ろにガスボンベを積んだ。何ガスだろう、空気か酸素だろうか。

 入院してから3日目で食事は配膳されたら都度完食なのだが、お通じも便意も全くない。看護師さんにそのまま手術に行っても大丈夫かと聞かれた。手術前には浣腸で腸を空にするという話も聞いたことがあったが脚の手術の場合は関係ないのかもしれない、そのままでいいことになって手術室に向かった。
 私は普段は便秘とはほぼ無縁だ。外泊すると食事と生活リズムが変わるのと慣れない場所で気が張って、数日は便秘になることはよくあることなのだが、今回はとにかく特別な状況だし、便意があればオムツに排便なのに抵抗があって、私の脳は便意を抑え込んでしまったのかもしれない。

 手術前オリエンテーションによれば、手術の始まる時間は11時ごろと書いてあったので夫に10時半ぐらいまでに来てくれるように頼んでいたが、朝になったら時間が早まるとのこと、間に合うかしらと看護師さんが気にしてくれたが、幸い早めに来ていて手術前に会うことができた。

 手術室の外の廊下まで来たら、吸い込む麻酔の量を調節するためらしいが、紙の筒をくわえて息を吸わされた。
 「麻酔の説明聞きました?」と看護師に聞かれて、「いいえ、聞いてないです」と言うと、そこで麻酔の効果や副作用について説明が始まった。今さらここでやるか、とも思うが病院側としては後から何かあった時に説明した事実がないと責任問題になるから無理矢理でもやるのであろう。聞いていたら、麻酔の後もう目覚めないかもしれない不安が沸々と湧き上がり、説明なんてどうでもいいから少しでも長いこと夫と話したい、どこかに触れていたくり、毛布の下から手を出して手を繋いだ。

 手術室に入った、がらんとした広い部屋だった気がする。麻酔用のマスクが口にかぶさって何度か呼吸したその後目が覚めた時は元の廊下にいて手術は終わっていた。担当の先生と夫がいて「うまくいったよ」と言われてレントゲン写真も見せてもらった。手術にどのぐらい時間がかかったのか、手術が終わって麻酔が切れるまでどのくらい経っていたのかわからないが、病室に戻り、私がベッドに落ち着いた後もしばらく一緒にいて良いらしく夫を残しておいてくれた。麻酔から覚めてまた夫と話ができるのが嬉しかった。

 手術後は食事がでないことを看護士から聞いたようで、ヨーグルトとかちょっとした食べ物を買っておいてくれてそれを枕元の冷蔵庫に入れてくれた。ということは、テレビカードも頼んでいたのかな。

 頼まれたものはスーツケースに入っていた。ショルダーバッグはそのまま。そのほかに紙箱があって、何かと思ったらクリスマスリースだった。夫は職場用に通販で注文していたそうだが、私用にしたらしい。「お花買ってもお水替えられないでしょ、鉢植えってわけにもいかないからちょうどいいと思って」

 写真:入院期間中ずっと、自宅に戻っても最近までは部屋に飾っていた。

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