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予算がないお客さんを助けるデザイナーの交渉術

こんにちは。デザイナーの市角です。
普段はデザインや映像を作りながら、大学で准教授としてデザイン思考について教えてみたり、デザインの考え方とやり方を学生さんや企業、自治体さんに伝えたり一緒になって考えています。

その一環で、デザイナーがどんなふうに考えているのか、
思考プロセスを文章化したほうが良いよなと思いnoteに書いていくことに。

今回はデザイナーの交渉術についてお話します。

もっとも多いであろう、お客さんの予算がたりなくて困っているとき、デザイナーがとるべき交渉術!はじまり、はじまり〜。


いつだってプロジェクトは予算不足


デザインのご依頼をいただくとき、ありがたいことに「予算のことは大丈夫!安心してよ」と言ってくれるお客さんも多いです。

しかし私は基本的にそれを信じていません。笑 なぜならご本人も予想だにしていないトラブルが起きる、それがビジネスの世界だからです。笑


【よく聞くセリフ集】
・組織再編に伴い、プロジェクトの予算が削減されるんだ〜
・ごめん、今期じゃなくて来期から予算がつくことに、、、
・予想してなかったコストがわかったんだ!そっちにも予算さかないといけなくて…

以上の件、契約前にだんだん明らかになってきたり、すでに契約して作業に手を付けている場合もあります。

そういったアクシデント系以外でも、最小限の労力で最大限の効果を発揮したいとクライアントさんが考えるのはごくごく自然なこと。

すると、デザイナーが提示した予算とクライアントさんが考える予算が釣り合わないということが頻繁に起きるわけですね。


誰も損しない交渉をするには


そんな時に、「あ、、分かったっス….今回は…..ご提示通りの金額で…やらせていただきまス…………ス………」と消え入りそうな声で言うのはちょっとまってください。

全員が幸せになれる方法があるかもしれません。模索しましょう。

前回の記事でも少し書きましたけど、相手の依頼そのものが間違っている可能性をまずは疑います。

一番多いのは、達成したい目標に対して、依頼された制作物が過剰であること。例えば、、

・大掛かりなECサイトを作りたい=今の段階ではネットショップサービスでも十分。
・何十ページもあるコーポレートサイトを作りたい!=プロジェクトのLPだけ作って様子を見たほうが効率が良い
・多種多様なパッケージデザイン作りたい=同じデザインでパターンを変えたほうが統一感もあるし安上がりに

よーくお話を聞いてあげて、本当に達成したいことは何なのか?一緒に考えてあげましょう。

コストが低いのに膨大な制作物を作ろうと思うなら、時間をかけられなくなります。ミスやバグが多くなりデザインの質も当然低下。顧客にもデザイナーにも不利益をもたらします。やめましょう。

それでも!!どうしても予算が釣り合わないなら??


対価はお金じゃなくてもいい

ビジネスの基本は価値の交換。等価交換ですね。
デザイナーが提供する価値が100としたら、対価も100であるとき、取引は成立します。両方の価値が釣り合ったとき、お仕事は成立します。

でも対価が60しかどうしても用意できなくて、どうしても100の価値が必要なお客さんにどうしてあげたら良いか?

40分の対価をお金以外で探してあげることが考えられます。

そして物々交換こそ、商売の原点。本質がそこにあったりします。


お金以外の対価の例


シンプルなところでいうと、たとえばお客さんがお米屋さんなら、お米を5年分無料とか。居酒屋さんならいつでもビール無料とか。

SNSに強いお客さんの場合には、自分の作ったものの宣伝を手伝ってもらったりするとか。

ヨガや鍼灸などの健康、治療に関することをしてる人なら、体のメンテナンスをしてもらっても良いかもしれません。

旅行業者ならいつでも泊めてもらえる権利なんかをもらってもいいですし、コンサル業をしている人なら自分のキャリアについて相談してもいいですしね。

知識や技能を持っている人なら弟子入りして無料で教えてもらうというのもあり。人生を豊かにしてくれます。

また少し複雑ですけど、お客さん単品で完結しなくても良くて、お客さん同士をつなぐ方法も。例えば魚屋さんのデザインをしたけどお金が足りなかった。それなら、居酒屋さんのお客さんがいるので、無償でお魚を提供してもらえないか相談。居酒屋さんからお魚代として紹介料をもらう、みたいなことです。

こういった交渉は最初のうちは気が引けますが、相手の利益をしっかり考えることによって強気で提案できるようになります。相手のためになることを躊躇する理由はありませんからね。


そして、お客さんから「お支払いできないからどうしようかと思ったけど、そんな事でいいならいくらでも力を貸すよ!」なんて言ってもらえることもあります。

お金以外の価値の交換ができる人とは、深くて長い繋がりが生まれます。

お仕事が終わった後も、「最近困りごとある?手を貸そうか?」みたいにゆるいビジネスパートナーになれたりも。

実のところ、一番の報酬だと思うのはこういうお互いを助け合えるかけがえのない人付き合いだったりします。


「次の機会に埋め合わせするね」は危険ワード

交渉中、この言葉を聞いたら立ち止まってください。そしてちゃんとお断りしましょう。

お客さんも、そのときは本気なんです。ちゃんと埋め合わせをしようとしてくれる、誠実な人なんです。でも、ビジネスはいつだって思い通りにいきません。すべて計画通りに行かないもの。

だから、もしかしたらその埋め合わせの約束が果たされないかもしれない。

お客さんを嘘つきにしてはいけません。心の負担になります。

なのでこの言葉を聞いたときは、ちゃんと今現在で提供できる対価をいただき、それに見合った最小限の分量で、ハイクオリティのものを責任を持って作るのが全員幸せになる道です。


デザイナーが良いものを作ることが、お客さんにとって一番の節約

当たり前ですが、作るモノが少なければ少ないほど、かけられる時間が多いほど、より質の良いものを作ることができます。

そして質の良いモノはお客さんの役に立ちます。

表面的なコストダウンの話に流されず、お客さんのために交渉する習慣がつくと、新しい景色が開けるかもしれません。


私なんかはこういう交渉が楽しくて趣味になってたりします。笑
それはそれでめんどくさい人かもしれませんが、無駄なお金をかけずに良いものを作るためですから!笑


そんなかんじで毎週木曜日は、#デザイナーの頭の中  シリーズ書いてます!

デザインについてのお話、他にもありますので興味があったら。




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