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【読書】 面白い人になるためのノート術 『あなたを天才にするスマートノート』

ダ・ヴィンチに憧れる者として「天才」というキーワードに弱く、『あなたを天才にするスマートノート』を手に取った。

著者はYouTubeでも活躍している「オタキング」こと岡田斗司夫氏で、氏が10年以上の歳月をかけて磨き上げた「ノート術」と、その身につけ方が公開されている。

「面白い人」になるためのヒントが満載で、すぐに日常に取り入れるほど刺激的な本だったので紹介したい。

天才の条件

本書で印象的だったのが、「天才」の定義がされていることだった。

岡田氏のいう「天才」はいたってシンプルで、以下の式で表せる。

天才 = 発想力 + 表現力 + 論理力

「発想力」「表現力」「論理力」の3分野に秀でている人のことを天才と呼び、天才は数万人に1人の割合しか存在しないとのこと。

さらに面白いのが、「発想力」「表現力」「論理力」の全てにすぐれていなくとも、2つの分野に卓越すれば、大成することができるという点だ。

例えば、「発想力」と「表現力」が優れていたら「面白さ」が武器となり、テレビで活躍する芸人さんが典型的な例となる。

「発想力」と「論理力」が卓越していたら「企画力」に優れた人となり、ホリエモンや孫正義のような人が当てはまる。

「表現力」と「論理力」が優れていた場合は「説得力」があり、マイケル・サンデルや池上彰など、今起きていることをうまく説明することができる。

そしてこれら全ての「発想力」「表現力」「論理力」を、たった1冊のノートで鍛えることができるのが「スマートノート」だ。

スマートノートの全貌

スマートノートで鍛えるのは、秀才の人たちが目指す「効率よく正しい情報にたどりつくための賢さ」ではなく、目指すのは天才の領域で、地道に練習を重ねて身につける「肉体化された思考」だ。

いいかえると「私によれば世界はこう語れる」という「世界観」を築き上げることがスマートノートの目的だ。

また、本書を読んで共感したのが、世の中の多くのノート術は「段階性」が欠けており、いきなり一つのノート術をマスターできないとしている点だ。

他のノート術とは反対に、スマートノートでは段階を踏み、1フェーズごとに少しずつマスターすることができる。

第1フェーズから第7フェーズまであり、次のフェーズにいくための「クリア要件」もあるのでわかりやすい。

準備編

まずはノートを用意しよう。

岡田氏がオススメしているのはB5ノートで、理由は日本のどこでも手に入れることができるからだ。

ノートを使う理由は、スマートノートでは「手書き」を重視しており、図や上下左右への書き足しなど、ノートは自由自在で、発想のリミッターを外すことができるからだ。

また、スマートノートでのノートの使い方として特徴的なのが「ノートの右側から埋める」ということ。

これは左側を空白に残しておくことにより、その空白をもったいなく思い、埋めたくなるように自分を仕向けるためだ。

第1フェーズ:5行日記

第1フェーズは簡単で、**ノートの右側に「毎日5行だけ、やったことを書く」**というもの。

例えば以下のように書く。
6/2
・ランチでビックマックを食べた
・母親と電話で話した
・晩御飯はカレーを食べた
・映画『シン・ウルトラマン』を映画館で観た
・村上春樹の『ノルウェーの森』を100p読んだ

注意点は「嘘は書かない」ということだ。

左側のページには感想、反省、出来栄え、連想したことなど、なんでもいいので書くことができ、別になにもなければ書かなくても大丈夫。

次の日には、前の日の5行日記の下に書き足していこう。

そのページを使い切ったら、次のページに移る。

第1フェーズのクリア要件は**「一週間、毎日5行日記を書く」**ことで、書けるようになったら次のフェーズへ移動しよう。

忙しくて書けなかった曜日があれば、休みの日に、その曜日の分の5行日記を埋め、一週間分を埋めることができたら、次のフェーズに移動しても良い。

第2フェーズ:行動採点

第2フェーズもシンプルで、第1フェーズでやりはじめた5行日記の右側に**「0-5の間で点数をつける」**というもの。

マイナスの評価をしないのは、ネガティヴに引っ張られないようにするためだ。

評価軸は以下の通り。
・5:思い出すだけで顔がニヤつく
・4:楽しかった
・3:普通
・2:楽しめなかった
・1:つまらなかった
・0:ダメだ、思い出したくない

注意点は、5と0を乱発しないことで、週で数回程度、1日に多くて一回程度に抑えておく。

この目的は、極端な評価をせずに自分の行動を客観視することで、「論理力」を鍛えるためだ。

毎日評価をすることで、自然と点数が低いものを「無意識」に避けるように行動するようになる。

たとえばダイエットをしている時に、夜お菓子を食べるという「太る努力」をしないようになる。

採点の低かった行動を繰り返さない方が、毎日を楽しく過ごすことができる。

「無意識」というのがポイントで、反省や後悔はしなくてもいいので気が楽だ。

第2フェーズのクリア要件は**「5行で書ききれなくなる」**ことだ。

第3フェーズ:論理訓練

このフェーズから少し難易度が上がり、毎日見開き2ページを使うことになる(左ページは埋めなくても大丈夫)。

「論理力」は肉体的な訓練なので、毎日書くことによって鍛えることができる。

第3フェーズでのポイントを列挙する。
・「5行日記」をやめてもオーケー
・翌日に持ち越さないこと
・ノートはいつも持ち歩く→思いついたらすぐに書く
・右ページはなんでも書く、毎日埋める
・今日のお題を決めて、論理的に上下左右
・左ページはできれば面白いことを書く
・最後に自分の結論を書く

第3フェーズのクリア要件は**「平均して週に2日以上2ページ」**書くことで、クリアすれば第4フェーズだ。

それぞれのページのキーワードは、右ページは「言語化、論理、プレゼン」で、左ページは「連想、発想、クリエイティブ」となる。

以下、右と左のページの使い方について詳しく説明する。

右ページ:お題を上下水平展開

右ページには2段階あり、最初の段階でやることは「今日のお題」を思いつくことだ

「感じたこと、思いついたこと」をなんでもノートの右ページに書く。

読んだ本の感想や、面白かったことや腹が立つことでもなんでもオーケーだ。

できるだけ、その下に「なぜそう思ったか」とその理由を書いてみよう。それが「考えること」につながる。

ポイントは人に話せるように具体的に書くということだ。

また、後々役に立つかもしれないので、全く関係ない連想も書き残しておこう。

2段階目は**「お題をもとに上下水平に考える」**ことだ。

最初の段階で書き出したお題からいくつか選び、お題を中心に書き、そのお題から上下左右の位置に以下の考えを書き加えていく。

①下:「なぜ?」と自分に問うこと。

ここはすでに最初の段階で終わっているかもしれないが、何回も「なぜ?」と自分に問い、深堀りしていく。

まずは最低3回は深掘りすることを目指そう。

深掘りが済んだら、「なぜ自分は気になるのか?」にも答えてみよう。

②上:「ということは?」「どうなればいい?」と一段階抽象的に考えてみる。

ここでも3回深掘りし、推測、解決冊を考えてみる。

深掘りできたら、「自分が今日できる解決策の一手」についても考えてみよう。

③左:時間を遡り「過去はどうだった?」と同様のパターンを探す。

④右:類似と連想で「ほかに似たことは?」ないかを探す。

最後に、ノートの空いている場所に**⑤「私は今、こう考える」**を書き出してみよう。

ここでは自分の感情を入れることによって、自分だけの論理を構築することができ、他の人と同じ答えになるのを防ぐことができる。

間違っていてもよいので、自分なりの結論を持つことが大切だ。

この訓練が、第7フェーズで必要な「強い主体性」を育んでいく。

週に3回、上記の5つで右ページを真っ黒になるまで書き込みができれば、一年程度で人に負けない論理力が身に付くとのこと。

あと、「頭をよく見せたいノートにしてはいけない」という注意も重要だ。

結論っぽいことや決め台詞ををいきなり書かずに、どれぐらい「頭が悪いかのごとく足掻き」、ジタバタと肉体訓練を積めるかが大切となる。

左ページ:なんでもOK、またはツッコミ

左ページの使い方は大きく分けて以下の3つだ。
①右ページの続き
②図解や要点のまとめ
③面白いこと

①は、右ページが埋まってしまった場合に、左ページに続きを書くことを意味している。

③は、無茶なことや極端なこと、単なるギャグなど、面白いことを書くことだ。

この面白さを目指している点がスマートノートの特徴でもあり、第4フェーズで他人に伝える際に役に立つ。

というのも、話が面白くなければ、人は自分の話を聞いてくれないからだ。

面白くなるとは、人とは違った論理体系を身につけることで、間違っているけど魅力的な理屈を持っていることを指す。

ここで、具体的にどんなものが「面白い」かという例を上げる。
・失敗談や、具体的経験
・的確なたとえ話→小学生にもわかるように書いてみる
・「要するに」抽象化→キャッチコピーのように、ひとことにまとめてみる
・無茶なギャグやダジャレ
・むりくりイラスト化、替え歌→愛のあるツッコミ
・キャラ化→キャラクターに代弁させるとどうなるか?

気楽さが大切なので、左ページは書けない日があっても大丈夫だ。

第4フェーズ:他人に話す

第4フェーズは他人にノートで考えた内容を話すことだ。

左のページをホワイトボードがわりに使用し、相手に見せながら書いてもいい。

このフェーズはかなりの論理力強化フェーズとなる。

それは、人に話す際には、準備、反省、再トライと、かなり理屈っぽく行動しないと成果がでないからだ。

第1と第2フェーズは自分の無意識の部分とのコミュニケーションで、「セルフカウンセリング」の機能を持っており、自分の感情、つまり感情的内面について気づきを与えてくれる。

第3フェーズでは論理的思考を通じて自分のアドバイザーになることができるので、「セルフマネジメント」の役割を持ち、理性的内面を探求することになる。

対して第4フェーズは「他者とのコミュニケーション」を司っている。

また、相談にのる時もこの第4フェーズは当てはまる

例えば、悩みを相談された場合、まずは相手の話を右のページに箇条書きをする。

ノートに書き出すことによって、頭を「記憶すること」ではなく「解決すること」に使うことができるようになる。

右ページの内容を、相談相手と見ながら、左ページに、相手が言いたかった要点をまとめたり、図解をする。

そして右ページと左ページをいったり来たりし、右ページに事実関係、左ページにお互いが合意した内容や解決策が残ることになる。

第4フェーズのクリア要件はなく、スマートノートを続けていれば、第5フェーズは自然とやってくる。

第5フェーズ:脳内リンク

この段階は、他のフェーズと違い、何か具体的にやることがあるわけでなく、スマートノートを続けていると、急にやってくる「状態」を指している。

具体的には、小さな「わかった!」という恍惚体験がやってくる状態を指す。

このフェーズのキーワードは「発想力」で、いままで書いたことが脳内でリンクし、新しい発見や視点が生まれる。

重要なのは、脳は「工業」ではなく「農業」であるという点で、スマートノートを「ひたすら続ける」ことによって、ある日「わかる」がやってくる。

スマートノートを農業に例えると、以下のようになり、第五フェーズは収穫の時だ。
・開墾:第一フェーズ
・日当たりと水捌けの配慮:第三フェーズ
・日々の手入れ:第四フェーズ
・害虫の駆除:第二フェーズ
・収穫:第五フェーズ

ノートのバックナンバーは腐葉土を作る作業でもあり、決して無駄にはならないので、毎日2ページを使うことを楽しく地道に続けていくことが大切だ。

第3フェーズを続けていると、早い人では1週間から10日で脳内リンクが始まり、左ページが書けるようになるとのこと。

それでも、あっというまにアイディアが枯れ果ててしまい、左ページを書けなくなる日がくるが、上の農業の例を見ると安心だ。

脳内リンクもサイクルがあるので、スマートノートつづけていれば、再度脳内リンクがおこり、アイディアがあふれてくる時期が来る。

よって、左ページを書けなくなる日があっても、それは正常なことなので、左ページが書けなくても落ち込まないことが大切だ。

第6フェーズ:統合・見識

第6フェーズは統合の段階で、誰にも真似ができない、自分だけの、面白い意見を作り上げる。

このフェーズでは「見識」」がキーワードとなる。

面白くなるためには、意見や仮説(第3フェーズから書き出してきた)が大切で、これらをスマートノートで集めだすと、「見識」が生まれる。

「見識」とは「自分の立場」や「そう思う根拠」を指しており、一言でいうと「私はこんなやつだから」というものだ。

その「見識」は、**「①教養」、「②立場」、「③判断」**の3つでなりたっている。

「①教養」というのはアカデミックな場所で確立している知識体系のことで、「〜論」と呼ばれるもの。

「①教養」があれば、歴史的視点や地理的視点を自在に操れ、脳内の知識に遠近感を持ってアクセスできる。

「①教養」を得るためには、まずは「知識」を得て、「人格」で解釈し、研究や熟成を重ねることが大切だ。

「知識」はネットや本からの情報を、自分の好き嫌いのフィルターでとりこんだものを指している。

「人格」はとりこんだ情報を、どう解釈するかというスタンスのことを指している。

楽観主義者や、ひねくれものなどだ。

問題は「①教養」だけ磨いても、「発信者の顔が見えない」ので、つまらない人と思われてしまうことだ。

そこで必要なのが、「②立場」と「③判断」だ。

「②立場」というのは、そう思う根拠を指しており、具体的には「日本人の、35歳の、男の俺としては」のような立ち位置のこと。

立場があれば、「言えること」と「言えないこと」が存在し、例えば東芝の社員だと、東芝の商品に関して正直なことは言えない。

「③判断」は「主体的な決断」を指しており、「俺はこうします」というもので、例えば環境問題については、「俺は割り箸を使わない」というのも「主体的な決断」だ。

この立場や判断に正解なく、考えている途中でも構わないので、立場や判断をいつも発信するようにすれば、見識も育ってくる。

考えている途中でオーケーというのは、**「いろんな意見かあるのはわかっている。でも俺は〜ということで一応落とし前をつけているんだよ。あとはまだ考え中なんだ。」**といっても大丈夫ということだ。

第7フェーズ:世に出る

ついに世に出る段階だ。

頭の中で理屈を組み立てるだけではなく、リアルな世界で、自分の論理や表現、発想を活かしていく。

ネットなどでデビューするのに必要なのは、この第7フェーズか第6フェーズが望ましいとされている。

その理由は、見識がない状態でブログなどを書いても、面白く書くことができず、反応も薄い結果となってしまうからだ。

ブログは表現の場なので、基本的に面白いことしか書いてはいけない。

この第7フェーズは**「強い主体性によって一つの人格にまとまっている」状態をさし、詳しくいうと「この世界に対する責任感」や「関わろうとする意志」**だ。

「この世のなかで、自分に関係のないことはない」という、自己の拡大を指している。

また、この第7フェーズで得ることができるのは「脳内世界」で、これは言い換えれば「もう一つの地球」だ。

この**「もう一つの地球」をつくることがスマートノートの最終到達点で、そこは世界観(わたしによれば世界は〜である)の塊**といえる

おわりに

本書を読むまで、ノートを使うのをやめてnotionに全てを切り替えようかと思っていた。

というのも、いままでたくさんのノートを書き溜めていたが、それらを見返すことがなく、無駄に部屋のスペースを取っていたからだ。

しかしスマートノートを学び、ノートは「記録して後で見返すもの」ではないという発想転換に至った

それは、ノートは頭を鍛え、面白い人になるためのものであり、ノートをあとから検索する必要なく、過去に書いた内容が思い出せないなら、ノートにもう一度書けばいいと指南されており、ただ書くことの継続が天才への道だと学んだからだ。

さらに、スマートノートによって自分の世界観を築き上げれば、「人よりも早く新しい情報を得なければ」という不毛な競争に巻き込まることもない。

スマートノートを地道に続けて、他人と同じものを見ても面白い感想が自然と出てくるような「面白い人」や「天才」を目指そうと思う。

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