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レビュー『ひとりで,考える 哲学する習慣を』

「岩波ジュニア新書」をごぞんじでしょうか。

岩波書店が出している本で、入門的内容を学ぶことができるシリーズです。

「ジュニア」と名前がついているので子供むけかと思いきや、じつは大人むけでもでもあります。

公式ページにも「ジュニア新書は小中学生から大人世代まで,幅広く読める入門新書です」と記載。

分かりやすい本が多く、あたらしいことを学ぶさいは「岩波ジュニア新書」を活用しており、個人的に好きなシリーズ。

そして、今回お気に入りの本がひとつ増えました。

それが『ひとりで,考える 哲学する習慣を』です。

「アクティブラーニング」「探究的な学習」といった、自分で「考える」学習がますます重視されるようになった現在の教育。

しかし、そもそも「考える」とはどういうことなのでしょうか?

教育のあり方が大きく変わる中、この問題について立ち止まって考える必要があり、本書では豊富な事例をもとに、著書の意見がつづられています。

ひとつの事例としてとりあげられていたのは、フランス式の子育て。

フランスでは赤ちゃんがぐずっても、すぐにはあやさないそう。

それは、赤ちゃんに「孤独を味わう時間」を与えているから。

そして、すぐにあやしてしまうと、待つことができない、我慢のできない子になるとの考えからです。

子供を育てた経験はありませんが、ぐずっている赤ちゃんがいたらすぐにあやしてしまうと思うので、こういう考えもあるのかと驚かされました。

赤ちゃんをすぐにはあやさないというのは、一見無責任にもおもえますが、実は赤ちゃん個人を尊重しての行動です。

他の事例でとりあげられていたのは、4時間にもわたる哲学の試験があることで有名な、フランスのバカロレア(高等教育の修了試験)。

そもそも、バカロレアは、高等教育の終わりに、教育が完成したかどうかをチェックするため、1808年にナポレオンによって作られました。

バカロレアに合格した生徒は、好きな大学に行くことができます。

バカロレアでは人物評価のテストがあり、初期は面接を行っていたのですが、学生数が増えて対処できなくなってしまいました。

そこで代わりに導入されたのが哲学のテストで、ここでは「ひとりで考える」ことが求められます。

ひとりや孤独は、マイナスに捉えられがちな日本。

しかし、「選んだ孤独は良いもの」とし、静かに自分と向き合い、考えることがこれからは必要であると著者は語ります。

著者の小島俊明さんは1934年に岐阜県で生まれた詩人・俳人。

早稲田大学文学部フランス文学科を卒業後、同大学院にて文学修士号を取得。

東京家政学院大学の名誉教授でもあります。

本書では、著者の専攻分野であるフランスの事例を多数紹介しながら、「考える」について語られます。

「他人と比較しない。自分は自分。自分で考えたことに自信を持ち、責任を持ち、自分を信じて、強く生きるのです」という言葉が印象的で、自分で考えることの大切さを伝えたい!という思いが伝わってくる本でした。


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