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レビュー『恐怖の哲学 ホラーで人間を読む』

怖いものに惹かれてしまうのはなぜだろう?

そんな疑問から手に取ったのが本書。

ホラー映画を題材に「怖さの仕組み」をユーモアを交えつつ解説している好著です。

本書の魅力は、恐怖を定義、分類し、さまざまな先行研究や理論の長所と欠点を指摘しつつ、結論へとすすむ点。

「これからの哲学は、脳科学、生物学とシームレスにつながるべき」と語る著者は、哲学や認知科学、脳神経科学と多様な知識をふまえて「恐怖の正体」に迫っています。

怖いはずのホラー映画を、人はなぜ楽しめるのか。

ときに恐怖と笑いが同居するのはなぜか。

そもそも人はなぜ恐れるのか。

そういった疑問から、ホラー映画・SF映画をもとに「人間の意識とは何か?」という問題にまでふみこみ、「意識の表象理論」という最新理論も紹介されます。

人間の複雑さを読み解くのに参考になります。

そして驚かされるのが本自体のボリューム。

448ページもあり、通常の新書の2倍はあります。

長ければいいというものでもありませんが、大のホラー好きという著者の情熱がつたわってきます。

かなりの分量であるはずなのに、楽に読み進めることができ、それは著者独特の語り口に秘密が。

独特の語り口が親しげで読んでいて楽しく、思わず声に出して笑ってしまうような場面も。

著者の戸田山和久さんは、科学哲学専攻の名古屋大学大学院教授を務められている人物。

そんな著者が「なぜぼくたちは多彩なものを恐れるのか?」という質問に答えてくれるのが本書です。

おなじみのホラー映画を分析し、哲学から心理学、脳科学までと多様な知を縦横無尽に駆使し、「恐怖の実態」に迫っていきます。

冗談をまじえつつも論理的に執筆されており、わかりやすかったです。

哲学の魅力を再確認させてくれる本で、映画ファンには新しい視点を与えてくれる一冊。


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