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絶望の淵からひびく真実の叫び:シオラン『生誕の災厄』

ルーマニアの作家、エミール・ミシェル・シオラン。

その代表作である『生誕の災厄』は、どこまでも自分の気持ちを偽らず正直につづった、魂を揺さぶる作品です。

ペシミズムと反出生主義を主軸にした本で、生きること、人間、慣習、世界...

そのすべてに呪詛を吐きつけ、人間の存在そのものを問いただすシオラン。

彼の言葉は、時に鋭く、時にユーモラスに、読者の心に深く突き刺さります。

今回は、本書から学んだ3つの視点をご紹介します。


1. アフォリズムという表現の魅力

『生誕の災厄』は、アフォリズムという独特な表現形式で書かれています。

アフォリズムとは、短い文章で人生や社会に関する真理を突いた警句や箴言のこと。

パスカルの『パンセ』、ラ・ロシュフコーの『箴言集』、ニーチェの『愉しい学問』など、名著とよばれる作品にも多く見られます。

本書では、人間の本質や社会の矛盾、生の虚しさなどを、アフォリズムという形で鮮やかに描き出しています。

その鋭い洞察と簡潔な表現は、深く考えさせられるだけでなく、時に心を軽くしてくれることもあります。

2. 虚無と絶望に満ちた世界

シオランは、この世に何の意味も希望も存在しないと断言します。

彼は西欧社会を「いい匂いのする腐敗物、香料入りの屍体」と表現するなど、その徹底的な批判は読む人を圧倒します。

しかし、シオランの言葉は決してネガティブだけではありません。

むしろ、虚無と絶望に直面することで、真の自由とは何か、生きるとはどういうことなのかを問いかけているように思えます。

たとえば以下のような言葉。

「私は何もしていない。そのことを承認しよう。だが私は、時間が過ぎゆくのを眺めている。————時間を埋めようとするのよりは高級なはずである。(旧版p.8)

この生きづらい世の中、いろいろな人から自分の考えを否定されても、シオランだけは肯定してくれる。

そんな懐の深さに読者は共感し、救いを見出すのです。

3. 生きるという苦痛を受け入れる勇気

タイトルにもなっていますが、シオランは「生誕こそが死にまさる真の災厄」だと考えます。

つまり、人間という存在に対して「生まれなかった方がよかった」と徹底的に否定。

彼は、人間は生まれながらにして不幸であり、生きることは苦痛でしかないという考えを貫きます。

しかし、彼は決して死を肯定するわけではありません。

むしろ、生きるという苦痛を受け入れ、それでもなお自分の人生を生き抜くことを求めているように思えます。(シオラン自身も84歳まで生きました。)

強烈なのが、「一冊の本は、延期された自殺だ。(旧版p.134)」という言葉。

彼は、本を読むことは、現実逃避ではなく、むしろ死への恐怖と向き合う行為であると捉えています。

そして、「何もわざわざ自殺するには及ばない。人間はいつも遅きに失してから自殺するのだ。(旧版p.46)」という言葉は、多くの人の救いになるでしょう。

ぼくたちは皆、いつか必ず死ぬ。

しかしだからこそ、まずは生きる苦しみを受け入れることで、限られた人生を歩む準備ができる。というメッセージを受け取りました。

まとめ

生誕の災厄』は、読む人に答えを与えるような書ではありません。

むしろ、あなた自身に問いを投げかけ、考えさせてくれます。

ペシミズムや反出生主義に興味がある人、人間の本質について深く考えたい人、偽りのない、真実の言葉を求めている人、心に突き刺さるような読書体験を求めている人におすすめの一冊。

シオランの言葉は、時に難解で、時に刺激的。

簡潔ながらも力強い言葉は、ぼくたちに考えさせられるだけでなく、生きる意味について改めて問いかけてくれます。

真摯に人生と向き合いたい人にとって、かけがえのない一冊となるでしょう。

本書を通して、あなた自身の生き方について改めて考えてみると、新しい発見があるはずです。

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