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レビュー 『知的トレーニングの技術〔完全独習版〕』

偉人たちの知的方法について、うまくまとめられた本がないかと探していたのですが、ついに見つけました!

それが本書、『知的トレーニングの技術〔完全独習版〕』です。

森鴎外や南方熊楠、アインシュタインからレーニン、ヴァレリー、レヴィ・ストロースまで、あらゆる分野の知識人を引用し、彼らの知的生産術が明らかにされています。

文学や社会科学の分野だけではなく、自然科学も含めて、知的な活動を行いたいという人にとっては一見の価値あり。

勉強好きな人や、ブログや出版など、知的アプトプット力を高めたい大学生や社会人にも役立ちます。

現在自宅に1000冊以上の本があるので、住居スペースを圧迫しており、本を売ろうか電子化しようかと迷っていました。

しかし、本書の以下の部分を読み、海外移住など、よほどのことがないかぎり、本を手放さないと決めました。

「読まなくとも持っているということが、いつでもつかえるという可能性を提供してくれる点にある。物的所有は知的所有の第一歩なのだ。思考はいつなんどきその本を必要とするかわからない。まさか夜中に図書館は利用できない」

ミニマリストの人たちからは反論を受けるでしょうが、本を手放す=知的怠慢ともいえるかと思います。

本の内容ですが大きく二部構成となっており、第一部が準備編、第二部が実践編です。

第一部の準備編ではおもに、志、人生計画、心構え、やる気、知的好奇心といった、「精神的条件」にフォーカス。

また、大辞書、師と友人とライバル、蔵書と書斎といった、「物質的条件」についても言及しています。

第二部の実践編では、第一部で用意した知的資源をフル活用し、実際に読み、考え、書くための手法が紹介され、批判的思考の秘訣にまで踏み込んでいます。

著者の花村太郎さんは、1947年に長野県で生まれ。

早稲田大学・文学部を卒業し、東京都立大の人文科学研究科修士課程を修了。

その後、都立高校教諭、関東短期大学教授などを歴任されています。

本書は著者が33歳のときの作品。

難しいことは書かれておらず、とてもわかりやすい内容です。

なによりも驚かされるのが著者の博覧強記ぶり。

明治文学から現代思想・現代文学まで渉猟しながら、知的アウトプット術を展開する様に一種の爽快感を覚えます。

本書の中で取り上げられる書物も、人文科学から自然科学まで多岐にわたり、ブックガイドとしても楽しめると思いました。

知についてのあらゆる方法が幅広く記されており、ここまでの「お得感」を感じたのは久しぶりです。

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