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2月3月は苦行月

初雪を病室の窓から見て、「明日退院だ」とちょっとさわやか気味になっていた2月。
あれは始まりの始まりで、私の腸はイレウスの再燃をしつこく繰り返し、今は4回目の入院中。初雪どころか、桜の便りも病室で聞いた。
たった2か月の間に4回って(涙)。
特に3月は、3回目と4回目の間の、4日しか出勤できなかった。
(その4日で桜を見ることはできた。)

もうどの入院がどれだったか分からなくなってきて、先日はシャワーの後、無意識に前回の入院の病室に戻ってしまった。
勢いよくカーテン開けたら自分のじゃない私物があり、自分ではない患者さんがいて頭が混乱。
たまたま彼女がよくお喋りするイレウス仲間で、爆笑してくれたから良かった。

その都度けっこう差はあるけれど、イレウスの痛み苦しみはかなり辛い。
3回目の時はなかなか症状きつくて、「3回目」ということにも、コロナ渦面会禁止で背中をさすってくれる家族に会えないことにも心が折れそうで。
やっと痛みが落ち着いた日に看護補佐さんに洗髪してもらったら、思わず号泣してしまった。
「なんか久しぶりにほっとして泣けてきた~、気持ちよかった~、ありがたいわ~」と言いながら涙が止まらなくなっていると、優しき看護補佐さんも「〇〇さん、頑張ってるもんね。えらいよ、えらい」と一緒に泣いてくれた。

痛みが去ると、今度は長く続く絶食が地味にしんどい。
イレウス管を入れている時は、不快感がオプションで付いてくる。
良い本を読んでも、映画を見ても、その面白さより食べることへの渇望が上回る。最初の入院で飲まされた激マズの栄養剤でさえ懐かしい。
私のGoogle mapは「治ったら食べに行きたいお店」のマーキングだらけになり、写真フォルダは「治らない間、作ってみんなに食べてもらって自分を満足させる」用のレシピのスクショだらけになった。
末期癌だった時の父が、もう食べ物は受けつけない体なのに、常に何かを口に入れたがっていた。今は気持ちがよく分かる。
かのソクラテスさんは、人は生きるために食べるのであって食べるために生きてはならんと言ったそうだけど、ソクラテスさんも絶食してみ?と思う。
人は生きるために食い、食うために生きる、だ。ハイパーハードボイルドグルメリポート派だ、今私は。

2か月の間に30日以上絶食で、食事解禁になっても流動食に毛が生えたくらいのもしか食べられなくて(絶食のあとはめちゃくちゃ美味しいのだけど)、小学生の頃の体重になってしまい初めて足がふらつく感覚を味わった。

今度ちゃんと振り返って書くつもりだけど、2月3月は苦行のような時を過ごすことがなぜか多い。
「はぁ・・・苦行月だな」と思ったとき、去年「6月は一年で一番好きな月」「11月はご褒美月」と、自分が2回も月を讃えたことを思い出した。

一番好きな月とご褒美月があるんだから、「苦行月」があってもしょうがないか。むしろなんだかメリハリのある人生みたいで、いいじゃないの。
と、すごく腑に落ちたので、6月と11月に賞を授けていた去年の自分を盛大に褒めたい。
それにイレウス蟻地獄にはまる前に、大騒ぎのクリスマスも忘年会も、コロナ渦でずっと会えなかった海外住の妹や友人との再会も、娘の二十歳のお祝いも成人の日のお祝いも、全部できた。なんてラッキーだったのか。

私にとっての朗報もある。
私の不在時、せっせと料理を作っていたのは夫一人。
ほとんど家にいないし家事をろくにしない娘たちが、食事作りに参戦するようになったこと。
長女は夕食作り、次女は自分のお弁当は自分で作っている様子。
夫と娘二人、時間はバラバラでもわりと楽し気に手作りご飯を食べているようだ。
たまに写真を送ってくれるので、「おお、ちゃんと食べてるね」と嬉しくなる。

スパニッシュオムレツ風、米粉ホワイトソースのグラタン
冷蔵庫ストック野菜全部投入麻婆、鶏のクリーム煮
韓国風ご飯
ハンバーグ(お弁当の分も)
シンガポールチキンライス風
イギリスコテージパイ風
ロールキャベツ
肉野菜炒め 何かの肉巻き

この入院が終わったら、腸閉塞専門外来のある病院にセカンドオピニオンに行くので、私が無事そこへたどり着けるよう、今は主治医と看護師さんにしっかり管理してもらってる。
マーキングした美味しそうなお店はさておき、まずは家族の普通ご飯が食べたい。

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