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1年の中で好きな月

最初の化学療法を受け、退院して、一週間家でぐだーっとなっていた。
治療から7日目の早朝、目覚めたときに鳥のさえずりがきこえて、突如散歩スイッチが入った。
どこも痛くないし気持ち悪くもない。歩けそうな気がしたので、そのまま出かけてみた。

アジサイは満開、クチナシからは甘い芳香。
ドクダミの陣地は一気に広がってる。
アスファルトの隙間からそろって起立するピンクの花たち。
巣立ち雛はもう親から自立したのか、世界に馴染んだように見える。

早朝で人目がないからクンクン香りを吸い込みまくる。


「ヒルザキツキミソウ」という名前だった。

6月のグレーの空の下で、草木の緑と匂いが際立ってる。
キラキラザワザワする春が去って、いつのまにかみんな、しっとりと大地に落ち着いている。

療養に入る私に、仲良しの元同僚が「これから緑が濃くなり生命力で溢れる季節のように、どんどん体調良くなってください」とメッセージをくれた。ほんとだ、彼女の言う通りなんて生命力に満ちた季節なんだろう。
なんて素敵な季節に、今、私は散歩してるんだろう。

6月の夕方は前から好きだった。明るくておだやかでご褒美のような時間。ビールと焼き鳥が1年中で一番似合う時間。
でも今日のこの朝。こんなギフトに今まで気付かずにいたとは。

夫は湿気がどうの曇り空がどうのと6月の悪口が多いが、私は1年で一番好きな月はと聞かれたら、これから6月と答えようと思った。
そういえば、生命力のかたまりみたいな我が親友は夏至の日が誕生日。
そうか、なるほど。これからもずっとそばにいてもらおう。

6月を褒めたたえながら帰宅した私は、とてもとても気分がよかった。
さあこれから朝ご飯なのだ!





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