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食べられなかった私と歩けなかった彼女

もう1か月以上前だけど、彼女と再会した。
いつ脱出できるのか見当もつかない、痛いし苦しいしさんざんな日々に、ちょっと良い思い出を作ってくれた彼女。

病気を経てからは、会いたい・行きたいの気持ちを熟成させるのはやめた。ぱっぱと会って、ぱっぱと行くことにしている。
この勢いで30年ぶりの高校1年生の同窓会にこぎつけた。
楽しかったから、ついでに高校2・3年生の同窓会も企画中。

彼女との「病院じゃない場所で会う」約束もちゃんと果たしたい。
耐えて踏ん張っていた私たちのあの時間を、ご褒美時間で労ってあげたい。

ご飯に誘ったら、私がご飯を食べられることにすごく驚き喜んでくれた。
お店と日にちを相談して1週間後に、約10か月ぶりの再会。
それぞれ「歩行」と「食」という、当たり前にあったものを奪われ(彼女には交通事故の加害者がいるから、心の持ちようは私の数百倍壮絶だと思う)、それが無期限かもしれない恐怖と闘っていたけれど。
遠くのパーキングから歩いてお店にやってきた彼女と、ピザやパスタをシェアできた私と、外は土砂降りの雨でも人生に祝福されたような午後だった。

同室にいた激しい患者さんのネタ話から、どんなリハビリを経て回復したのか、そんな話をした後、将来の展望も話してくれた。
仕事のつてがあり、海外移住を視野に入れて計画を練っているとのこと。
大きな事故だったので、治療や痛みから解放されたわけじゃない。
再手術も控えている。
それでも病室でおしゃべりしたときと同じく朗らかに明るい未来の話をする彼女を、私はやっぱり花のような人だと思った。
お菓子か何か手土産を‥‥と思い、いや彼女にはお花だなと思い直し、みずみずしいグリーンのあじさいを買っていったんだけど、正解だった。

雨でお互い車で来たので食事だけ楽しんだけれど、どっちもワイン好きなことが判明したので次回はお酒付きで会う約束をした。

この日は消化なんて気にしない気にしない





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