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入院中に出会った人

今回の入院、これまでの最長記録を更新してしまった(昨日で1か月半)。そういえば、最後に固形物を食べた記念日からはちょうど4か月。

4か月前のご飯(このときも入院中)。
病院食は美味しくて好き。また食べたい。

カーテンと壁とベッドと医療機器に囲まれた狭い世界。
病室の窓の向こうには隣の棟の緑化した屋上が広がっていて、なぜかハクセキレイだけがたくさんいる。たまにイソヒヨドリ(シュッとして美しい)の姿。

こちらハクセキレイさん(フリー素材から)

ハクセキレイって、その動きと一本線の入ったお顔がどうしてもアホっぽく見えて(ごめん)、見かけるとちょっと愉快な気持ちになる。病室の窓際まで飛んできてくれると結構嬉しい。
彼らのせわしない動きは、窓の外の生き生きした世界が変わらず通常運転であることを教えてくれる。
いや、最近は暑すぎて生き生きというよりダルダルみたいだけど。
通常運転の方々、酷暑の中本当にお疲れ様です。

窓のこっち側で運転停止の私だけど、ふだん得難いような出会いもあった。思いがけない再会や、かけてもらった貴重な言葉も。
あらためて心に刻んでおこうかと思う。

出会った人

イレウスの苦痛に撃沈していた入院したての時、お隣のベッドの患者さんは足を怪我したらしき若い女性だった。
カーテン越しのお隣さんの声は、いつも元気で朗らかで心地よい(病棟においてそんなことは滅多にない)。
看護師さんにも、食事の配膳やお部屋のお掃除に対しても、その都度ていねいに感謝を表す。そして車椅子を軽やかに走らせ、日々リハビリ病棟に通っている様子。

体調が回復した私は声をかけてみた。
それで親しく話すようになって知ったのは、彼女のはつらつとした声からは想像できなかった怪我の重症度。
車にはねられてしまった彼女は、足の切断はぎりぎり免れたものの一生もとの足の動きを取り戻せないかもしれないと告げられていた。
事故に遭うその瞬間まで、当たり前にあった日常が一瞬で奪われてしまい
「一生歩けなくなるかも、働くこともできなくなるかもっていう恐怖と不安で本当にしんどかった」
それでも今の自分にできることに向き合おうと気持ちを切り替えることに集中したという。
「とにかくリハビリを頑張って、できる限り足の機能を取り戻そうって前向きになれてきたところ。ほんとにやっとそういう気持ちになれた。体育大学卒なのがリハビリに役立ちそう(笑)」
彼女が身の回りのケアに感謝して気持ちよくお礼を言えるのは、今自分のいる場所について腹をくくったからこそなのだろう。
病棟に咲いた花のような彼女の声は、前向きであろうとする証なのだろう。

歩くこと。食べること。当たり前すぎることがお預けになってしまった私たち。
できなくなったことが強烈なほど、「できること」に強い光が当たるよね。
ある意味すごく見つけやすいんだからさ、できることだけを見てお互い頑張ろうねと誓い合った。
彼女はその後リハビリ専門病院に転院。緑豊かな場所です♪と報告してくれた。彼女ならどんどん前進していくと思う。
いつか病院じゃない場所で会えたら嬉しい。


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