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106_『PASSION』 / 濱口竜介

濱口竜介による、大学院時代の修了作品。率直な感想としては、修了作品としては高過ぎる完成度を誇るものの、映画作品としての完成度は低い。

『ハッピーアワー』のような作品を生み出すところからも、この監督は物語そのものよりは、コンセプトあるいはダイアログ、もしくは象徴的なシーンの想起から作品を作り始めているように思う。

だからなのか、言いたいことはよくわかるものの、物語としてそれを上手に言い切れていないというか。だからこそ、作品後半で突如出てくる「本音ゲーム」という独自ルールのゲームによって強引に物語が展開していくのは、少し無理があって、見ているのが辛い。

これは『ハッピーアワー』もそうで、こちらも後半に出てくる謎のセミナー的なもの(そしてこのシーンがやたら長い。そもそも映画も317分もあるのだけれど)で、ひたすらに思考が語られる。

結局のところ、物語そのもので語ることができていない。

もちろん、逆説的にはだからこそ、濱口竜介のオリジナリティとなっていて、評価も高いことも理解できるけれど、そうなのであれば、映画とは?という疑問に辿り着いてしまう。

映画とは?難しい質問であるけれど。

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