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訪問看護の魅力とは?

訪問看護って何をするの?

一般的に言われる訪問看護とは、「看護師が利用者の自宅まで伺って、病気や障害に応じた看護を提供すること」です。看護の内容は、予防的ケア・リハビリ・病院で行われるような医療処置・終末期ケアなど多岐にわたります。
看護師が一人で訪問しますが、訪問する看護師独自のケアを行っているわけではありません。前提として「主治医からの訪問指示書」、「利用者・家族の希望」、「ケアマネジャーが作成したケアプラン」などがあり、これらに沿って看護計画を立て、計画的に訪問看護サービスを提供します。
よく、転職サイトや求人募集の謳い文句として「自分のやりたい看護ができる!」とか、「理想の看護ができる!」とありますが、それを見るたびに、う〜〜〜ん……となってしまいます。訪問看護は、看護師のやりたい看護を提供するのではなく、利用者さんや家族が望む療養生活・健康(健康とは、必ずしも『治る』『元気になる』ことではなく、病気や障害を抱えながらもその人が心身ともに快適な状態で暮らせること、だと思っています)を実現するための看護を提供します。
私が訪問看護に魅力を感じるのはまさにこれで、「暮らしの中で看護を提供すること(生活が前提にあること)」が最大の魅力だと感じています。主体は利用者であり、家族(戸籍や血の繋がり関係なく)であり、看護の対象は「地域の中で暮らす生活者である」という視点です。医療者はあくまでも黒子に過ぎません。
医学的な視点と生活を支える視点、両方から対象をサポートできるのは看護師冥利に尽きると感じています。

訪問看護の職場ってどんなところ?

訪問看護で働いてみようかな?と思ったときに考えるのが、「どんな訪問看護ステーションを選べばいいの?」ということです。
訪問看護ステーションといっても、事業所ごとに規模や特色(得意分野)が異なり、看護師3人の小規模ステーションから看護師十数人の大規模ステーション、小児特化・精神看護特化・終末期の利用者が多い・リハビリの利用者が多いなど、ステーションごとに個性があります。また、経営母体が医療法人なのか株式会社なのか、といった違いもあります。
病院のような医療設備はなく、ステーションの内部は一見すると「一般企業の事務所」といった感じです。デスクがあり、パソコンや電話機があり、コピー機がある。そこにスクラブを着た看護師がいなければ、医療者が働く職場には見えないかもしれません。
ステーションの立地は、医療施設内の一角であったり、アパートや一軒家を借りて事務所を構えていたりします。

訪問看護は働きやすい?

気になるのが、訪問看護は働きやすいのか?という点です。
私の実感を述べると、病院勤務に比べると圧倒的に働きやすいです。
訪問看護ステーションの多くは、土日祝日を休業日としています。ただし、機能強化型をとっているステーション、終末期の利用者が多いステーション、大規模ステーションなどは、シフトを組んで365日営業のところもあるようです。
私はこれまで、中規模ステーション(地域内ではそこそこ大きい医療法人が経営母体)で1年、小規模ステーション(株式会社)で3年働いていますが、いずれも土日祝日・年末年始は休業です。どうしても必要な方には訪問する場合もありますが、基本的にはお休みです。
また、時間外の電話相談や緊急訪問に対応する「オンコール当番」ですが、基本的に正社員=オンコール当番あり、と考えてよいでしょう。
まれに、「正社員でもオンコールなし」というステーションもあります(24時間体制をとっていない、あるいは、オンコールをする・しないを選択できるステーション)。
さらに、子育て世代にとっては、急な休みに対応してもらえるか・子供の行事に合わせて休暇が取りやすいかなど、「休みの取りやすさ」は大きなポイントです。
人員基準ギリギリの小規模ステーションの場合、なかなか休みを取りづらい……という声も聞きます。

働き方に柔軟性がある

休みが取りづらい……という声がある一方で、訪問看護で働きはじめて驚いたことのひとつが、「スケジュールの柔軟性」です。
基本的に、利用者ごとの訪問スケジュールは決まっています。「Aさんは毎週月曜日の10時から」とか、「Bさんは毎週火曜日と金曜日の14時から」といった具合です。訪問スケジュールは看護師の都合ではなく、利用者さんや家族の生活リズム・他の介護サービスとの兼ね合い・受診予定などを考慮して計画されますので、勝手にスケジュールを変更することはできません。
……とは言っても、看護師の都合でスケジュール変更をお願いすることが、実際はあります。例えば、「子供の行事参加のため休みをいただくので、火曜日の訪問を水曜日に変更してほしい」「参観日に出てから出勤するので、午前の訪問を午後にしてほしい」などです。そのようなときは、利用者さんやケアマネジャーさんに相談して、訪問予定を変更することもあります。頻繁に変更をお願いするのは避けるべきですが、大抵の利用者さんは「いいよ〜行っておいで〜」と快く承諾してくださいます。
病棟のように1ヶ月のシフトが出たあと、急遽シフトを変更してもらう後ろめたさよりも、訪問看護でスケジュール変更をお願いするほうが気が楽なのは私だけでしょうか……。

訪問看護4年目の私が考える、働くうえでのメリット・デメリット

メリット①:働き方の柔軟性

「スケジュールの柔軟性」でもお話した通り、訪問看護はスケジュール管理も仕事のひとつなので、利用者さんの状態が最優先ではありますが、ある程度のスケジュール調整が可能です。
また、私の知っているステーションでは「登録訪問看護師制度」があり、空いている曜日・時間を事前に登録しておき、スポットで訪問看護に入る(単発バイトのような)ケースもあるようです。

メリット②:人間関係のしがらみが少ない

基本的に一人で訪問するため、病院・施設勤務に比べて職員同士が顔を合わせる機会が圧倒的に少ないです(良し悪しですが)。自分のペースで仕事がしたい、大人数で働くのが苦手……という方には合っていると思います。

メリット③:よほどのことがなければ、時間通りに働ける

訪問看護の時間は、あらかじめ30分未満・60分未満など利用者さんごとに決まっています。その時間内で、必要な看護ケアを行うのです。
ナースコールがなく(たまに社用携帯に電話が入ることはありますが)、一対一の看護ができ、時間の区切りもあります。
訪問したら急変していた、いつもと様子が違うので主治医やケアマネジャーに報告するなどのイレギュラーが生じることはありますが、よほどのことがなければ時間通りに訪問、定時退社できています。

メリット④:移動時間で気持ちの切り替えができる

訪問看護では、利用者さんから次の利用者さんへと、車や自転車で移動します。
私は、この時間がけっこう気に入っています。利用者さんのお宅へ向かう途中に、「先週はこんな状態だったから、今日はここを確認しよう」とか、訪問後の車中で「今日はこんなこと言ってたな、私の声かけはあれで良かったかな」とか、一人カンファレンス(反省会?)みたいなことをやってます。
移動中に感じる風や雲・草花など、季節の変化も楽しみのひとつです。

デメリット①:汚部屋、虫問題

訪問看護に足を踏み入れて、それほどデメリットを感じていない私ですが、施設内勤務と一番異なるのが、「汚部屋」「虫」の問題ではないでしょうか。
汚部屋・虫・カビ・異臭……住環境が良いとは言えず、訪問するのに覚悟が必要なお宅もあります。スリッパ、替えの靴下を常備しています。

デメリット②:季節や天候の影響を受けやすい

施設内勤務と違い、訪問看護は外を回る仕事です。
大雨・強風・大雪・暑さ・寒さ対策は、安全に訪問看護をする上で重要な仕事のひとつです。大雨の中かっぱを着て訪問することもありますし、雪の降る日は車にチェーンを巻いたり、事前にスタッドレスタイヤに交換したり。天気予防は常にチェックしています。
そして、意外と大変なのが夏場の訪問入浴。一般家庭の狭い浴室で、ユニフォームの上にエプロン・長靴(現在であればマスクも)を装着しての入浴介助。大げさではなく、滝のような汗をかきます。脱水注意!(化粧も落ちる)

デメリット③:けっこう体力勝負

訪問看護は、基本的に看護師一人での訪問です。
おむつ交換、体位変換、移乗介助など、基本的に一人です(ご家族の協力を得られる場合もありますが、すべてのの家庭がそうとは限らない)。腕力・筋力・ボディメカニクスを発揮して、利用者さん・看護師両者の身体的負担を最小限にケアを提供します。大柄な利用者さんの訪問に入るときは、スライディングシートを持参したり、ご家庭の大きめのごみ袋をお借りしたり(利用者さんの身体の下に敷いておくと体位変換がスムーズに行なえます)して、腰を痛めないように注意しています。

まとめ

訪問看護をはじめてまだ4年目。
奥の奥まで理解しているかと言われたら自信のない私ですが、訪問看護は本当に楽しいですよ。ひとつめのステーションを退職して、一旦看護の仕事から離れていた時期もありましたが、復職するときに選んだのは訪問看護でした。
繰り返しになりますが、訪問看護の魅力は「暮らしの中で看護を提供すること(生活が前提にあること)」だと思っています。
医療設備の整っていない「生活」の場で、いかに看護師の知恵・技を駆使して看護ケアを提供するか。看護師の主体性、スキルが試される場でもあるのです。

日々学び、成長できる訪問看護を、これからも続けていきたいと思っています。


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