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「私の工学で世界は変わる」。奈良女子大の新学部開設から感じる、高等教育機関としての矜恃と使命。

新学部の開設情報を見ていると、何となくその時々の時代の流れや変化を感じとることができます。今回見つけた2022年4月に設置構想中の学部もそんななかの一つ、どころか、それだけに収まらない強い志のようなものを感じて、個人的におぉっ!と思いました。

見つけたのはこちら、奈良女子大学に女子大初の工学部が開設するという記事です。近年、共立女子大学や武庫川女子大学、園田学園女子大学などで相次いで経営学部が新設されました。これまで女子大といえば資格取得や教養教育に強い印象がありましたが、そのイメージがだいぶ変わりつつあることを、これら経営学部の新設ラッシュで強く感じていたのですが、今回の工学部の新設はさらにこの上をいくインパクトがあります。

なぜ、女子大の工学部新設にインパクトがあるかというと、単純な話なのですが、工学部に進学する女性が圧倒的に少ないんですね。下の図を見ていただけると一目瞭然なのですが、工学の女性比率が15.4%(学部)で全専攻分野のうち最下位。次に少ない理学が27.9%(学部)なので、この段階ですでにダブルゲームにちかい差をつけられています。

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男女共同参画白書 令和2年版より

工学系に女性が少ない理由は、いろいろと言われています。代表的なものを挙げると、自動車や飛行機、ガンダムなど、工学のイメージに直結するものは男の子が好きなものが多いから、とか、女性研究者が少なくてキャリアパスが見えにくいからとか、工学部に女性が少ないことがすでに広く知れわたっており、そのせいで余計避けられているとか。以前、このnoteで中央大学理工学部の新・女子学生のみを対象にしたプレ入学式を取り上げたことがあります。こういった女性に特化したイベントがあるのも、裏を返せば女性が少ないことの証だといえます。

あけすけに言ってしまえば、工学部はもっとも女性に不人気な学部です。おまけに文系学部とは違い、設置するには施設・設備も必要でコストもかさみます。あと言わずと知れたことですが、今は超少子化。そんななか、女子大が工学部をつくる、しかも日本に二つしかない国立女子大のうちの一つがそれにチャレンジする。これって人が来るから新学部をつくろうではなくて、これからの社会に女性エンジニアが必要だから新学部をつくろうという発想だと思うんですね。とても健全で、とてもメッセージ性があります。工学部開設のキャッチコピーが「私の工学で世界は変わる」なのですが、この私は受験生であるとともに、奈良女子大自身を指すのではないでしょうか。

これまで新学部の開設は時代の要請に大学が合わせるというイメージが強くありました。しかし、今回の奈良女子大の工学部開設は、大学が教育機関という立場から、今後あるべき社会をつくっていこうという意志を感じました。これぞ高等教育機関の矜恃です。応援の意味も兼ねて、最後に工学部開設のPVをご紹介しておきます。ぜひご覧ください!


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