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神奈川大学の『神大スタイル』から感じ取る、これからの学内広報誌の在り方と必要な視点

学内向け広報誌をどうするか問題って、みなさん知ってますか?
急にわけのわからない出だしで書いてみたのですが、近年、オンライン化が進んだことで、学内広報誌をオンライン化しようとか、オンライン化したものの見てもらえないのでやっぱり紙に戻そうかとか、そういった悩みをちらほらと聞くようになってきました。今回、神奈川大学のキャンパスマガジン『神大スタイル』のリニューアルのプレスリリースを見て、この問題の解決につながるかも、と思ったので、今回はこちらについて取り上げたいと思います。

”学生(若者)に伝える”強い意志を感じる情報発信

まずは、『神大スタイル』が何者なのかというところから話をはじめたいと思います。こちらは昨年度まで年4回発行していた在学生向け冊子で、今回大幅リニューアルを経て、発行数を2回にしぼり、代わりにウェブマガジンとInstagramの開設を行いました。新たにできたウェブマガジンを見て、おっ!と思ったのは、大胆なレイアウトです。これはスマホ版を見るだけではわからないのですが、PC版を見ると一目瞭然。ものすごく尖っているんですね。

神大スタイルWEB トップページ

はい、こんな感じ。レイアウトがスマホに特化していて、PCについては二の次になっています。学生たちはスマホでしかサイトを見ないのだという強い意志を感じます。内容については、ゼミ・研究室紹介、エリア紹介、卒業生紹介など、極端に尖ったものはないものの、どれも写真がすごくきれいなのが印象的でした。最たるものが、「レンズ越しのキャンパス」という、フォトグラファーが神奈川大学のキャンパスを切り取るという企画です。なんというか、学生に伝わるのは“テキスト”ではなく“ビジュアル”なのだという、これまた強い意志を感じずにはいられません。

神大スタイルWEB レンズ越しのキャンパス

冊子か、ウェブか、の前に考えなければいけないこと

コンテンツやデザインについて、ざっとレビューしてみたのですが、このサイトの興味深いところは、実はそれだけじゃないんですね。PC版のサイトトップを見るとわかりやすいのですが、ページの左側に『神大スタイル』の公式Instagram、右側に『神大スタイル』のデジタルパンフがかなり目立つかたちで載っています。さらにサイトをスクロールすると「#朝活NOTE」というInstagramのリールがいくつも載っているコーナーが設置されています。

神大スタイルWEB #朝活NOTE

Instagramとデジタルパンフの主張具合を見ていて感じるのは、そもそものところから、サイトのみで情報を伝えようとしているわけではないということ。3つの媒体を最大限に活用し、有機的につながることで学生に情報を届けようとしています。

『神大スタイル』(冊子)に、ウェブマガジンと公式Instagramの紹介を大きく掲載

いま、多くの大学では、情報発信媒体を、冊子にするか、ウェブにするかという視点で悩んでいます。神奈川大学のアプローチはそれとは逆で、冊子の発行回数を減らして、代わりにウェブとInstagramを増やすというアプローチをとりました。

『神大スタイル』の内容から察するに、大学側に何かしらの強い意図(ゼミを活性化させるとか、留学する学生を増やすとか)があって、それを実現するためにやっているのではなく、純然たる大学と学生とのコミュニケーションツールです。であれば、発行回数を増やして波状攻撃のように強く訴えかけることより、回数は減っても媒体を増やすことで、できるだけ多くの学生と接点をもつ方が目的に沿っています。もちろんこれは『神大スタイル』にとっての正解であり、すべての学内広報誌がこうあるべきという話ではありません。

大学案内であれば、どの大学でも作成する目的は同じです。でも、学内広報誌は、大学ごとに目的が異なるし、そもそも目的が明確になっていないのに慣例的につくり続けているということも、多々あるように思います。そういう意味では、学内広報誌は冊子がいいか、ウェブがいいかといった議論をする前に、何のための学内広報誌なのかをしっかり考えなければいけません。これができていないと、どんな情報発信が正解なのか誰も判断のしようがありません。

『神大スタイル』が、多くの学生(若者)に知ってもらうことに極フリした展開ができているのは、学内広報誌の役目を学内でしっかり握っているからでしょう。学内広報誌に限ったことではないのですが、思い切ったことができているのって、クリエイティビティが高いからではなく、ゆるがない芯があるからだと思うんですね。今回、『神大スタイル』からは、これが強く感じとれました。

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