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オンラインの特性をどう活かすか?東北大の「片平まつり」に見る、ニュー・オンライン学園祭の可能性。

10月に入り学園祭シーズンに差し掛かってきました。学園祭を告知するプレスリリースを見ていると、どうも今年もオンライン開催が多いようです。オンライン開催も2年目とはいえ、まだまだ試行錯誤の真っ只中という印象を受けています。そんななか、もしかしたらこのアプローチがオンライン学園祭の正解の一つかもしれない、という取り組みを見つけたので、これについてご紹介したいと思います。

記事を読んでいただけるとわかると思うのですが、この取り組み、学園祭じゃないんですね。「片平まつり」という東北大学のオンラインイベントで、11の研究所やセンター、史料館がリレー形式で最先端の研究施設や研究、実験の様子などをYouTubeで生配信するというものです。テーマも、未来のコミュニケーションやスマート・エイジング、材料科学、東北大学の歴史など多種多様です。

オンラインと相性がいい研究系コンテンツ

一部ですが実際に見てみました。生配信の動画では、研究等を説明するために映像資料が途中に挟み込まれたり、研究室から研究室へと画面が切り替わったり、テンポもよくわかりやすくて面白かったです。教員だけでなく、在学生らしき人物が出演していたのも印象的でした。また時間ごとにキーワード紹介があり、3つキーワードを集めて応募するとプレゼントがもらえるという企画もありました。個人的には、このキーワード企画がけっこうツボでした。こういう工夫があると一気にお祭り感が出るんですよね。ウェビナーでも、研究紹介番組でもなく、これは片平“まつり”なんだぞ!と、アピールしているように感じられてよかったです。

片平まつりを見て改めて感じたのですが、研究関連のコンテンツとオンラインは相性がいい。研究関連の情報は基本的に中身が濃い。中身が濃いというのはいいことばかりなわけじゃなくて、ちゃんと説明しないと伝わらない(=面白くない)んですね。イベント会場の高揚感は、説明するうえでノイズになる可能性もあります。対面であれば、体験を交えて伝えられるというよさもあるのですが、でも少なくとも、対面>オンラインではないのが研究系コンテンツの強みなように感じました。

学園祭は、そもそもオンラインに向いていない!?

学園祭のプログラムを眺めていると、リアルで実施していたものを、単純に可能な範囲でオンラインに置き換えた、というものをよく見かけます。でも学園祭のプログラムは、その場のノリや雰囲気、実演の迫力というものがあってこそ面白いものが多く、単純に置き換えても魅力が半減してしまう場合が大半です。魅力が半減しないように工夫するというのも、アプローチとしてはありです。でもそのステップにいく前に、伝えようとしているものが、そもそもオンライン向きなのか、リアル向きなのかを判断するというのが重要なように思います。

それでまぁ、やや決めつけで言ってしまい恐縮なのですが、けっこうな数のプログラムが、リアル向きなように思うのです。屋台はそもそもできないし、ライブやパフォーマンスもオンライン化すると迫力が伝わりにくい、ミスコン/ミスターコンも生で見てこそ盛り上がれる。ずっとリアルでやっていたんだから、そりゃあそうでしょうよ、とツッコミを受けそうですが、いやまさにそうなんです。

リアルありきで作り込まれてきた学園祭を、オンラインにカスタムするのってものすごく大変です。それであれば、オンラインに特化した学園祭に代わるオンラインイベントをゼロベースで組み立てていった方がいいものができるし、かける労力も減らすことができるように思います。もちろん、対面の学園祭を超えやろうという野心があっての話ですが…。

片平まつりは、このニュー・オンライン学園祭とでも言うべきものを考えるうえでのヒントがたくさん詰まっていました(オンライン向きなコンテンツ、学生たちの参加の仕方、お祭り感、などなど)。コロナが収まったら学園祭もリアルに戻るんだから、わざわざ考えなくてもいいでしょう、という声も聞こえてきそうです。でも、急速に家庭のIT環境が整ってきたわけで、学園祭と銘打つかどうかは別としても、広く社会をターゲットにしたオンライン・ビッグイベントは、今後やる価値があるように思います。大学と社会との距離をさらに近づけるチャレンジとして、ぜひいろんな大学に取りくでもらいたいです。

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