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千葉商科大の「自然エネルギー100%大学」活動に気づかされる、大学ブランディングの効果的なアプローチ。

大学ブランディングというと、大学の在るべき姿や在りたい姿をメッセージやビジュアルに落とし込んで社会に浸透させる取り組みのように受け取られがちです。確かにこれはブランディング活動の大事な一部なのですが、とはいえ一部でしかなく、活動は他にもたくさんあるように思います。以前よりいいなあと思っていた千葉商科大学の活動が、今回プレスリリースで紹介されていたのですが、この取り組みもまた社会に大学の在り方を伝えるという意味で、とてもよいブランディング活動のように思えます。

長期的に積み重ねることで、大学の認知を広げていく

今回、プレスリリースされていたのは、千葉商科大の2022年度「自然エネルギー100%大学」の達成・取り組み状況について。同大学では、電気とガスを含めたキャンパスの総エネルギー消費量に相当するエネルギーを、学内で再生可能エネルギーとして発電する「自然エネルギー100%大学」をめざしています。この取り組みは、2013年に日本の大学単体では日本一大きいメガソーラー発電所を建設したことからはじまり、2017年に「自然エネルギー100%大学」をめざすことを宣言。その後、今日まで続いています。

2017年以降、千葉商科大ではこのテーマに関わるプレスリリースを定期的に配信しており、過去のリリースを辿っていくと環境関連の賞の受賞や、取り組みを書籍化したというものもありました。取り組みを継続的に続けていき、それが社会から評価されるようになっていく過程を丁寧に伝えていく。こういった事実の積み重ねによって、大学のイメージを形成していくというのは、まさにブランディング活動の在るべき姿の一つなのだと思います。

なぜ?と思わせる状況をつくることが、ブランディングの肝

千葉商科大の取り組みが、ブランディング的に価値がある理由は何かを、自分なりに考えてみたのですが、それは3つの要素があるからのように思います。1つは、長期間継続して行っていること。2つは、他ではあまりやまっていない、めずらしい取り組みだということ。そして3つは、自大学の利益のためではなく、社会のためにやっている、ということです。これって言ってしまえば、“大学の利益に直接つながらないユニークな慈善活動を何年もやっている“わけで、誰もがなんで?って思うわけです。やらなくてもいいんじゃないのって。でも、それを何かしらの使命感をもってずっと続けている。そこに、その大学の在り方(≒ブランド)が垣間見えるように思うのです。

いわゆる大学のブランディング広告というのは、はいはい、私はこんなんです!と、聞かれもしていないのに喧伝しているようなもので、やや品がないというか、社会への伝え方としては説得力が弱いようにも思えます。では、無言実行で取り組んで、その背中で語るのがいいのかというと、それはそれで効率が悪く、よっぽど注意深くその大学を見ていないと気づきません。当たり前な気もしますが、効率的なのは有言実行、つまり両方をやっておくのがいいのでしょう(ほんと当たり前ですが…)。ただ両方やるにしても、今回の千葉商科大の取り組みを見て、ブランディング広告はアンサーを伝える活動であり、それを問われるような状況(なぜこの大学はこういう活動をするのか?)をいかにたくさんつくるかが、説得力のある伝え方をする肝になるように感じました。

ちなみにここまで書いておいて恐縮ですが、千葉商科大のアンサーを、私は見つけられていないんですね。「自然エネルギー100%大学」がどのようにしてはじまり、達成状況はどうなのかといった情報は、とても丁寧にウェブサイトにまとめられているのですが、大学がこういった取り組みをする想いや熱の源泉、その先に描く大学像といったアンサーが伝わってくるページは見当たりませんでした。ぜひ何かしらのかたちで教えてもらいたい。そう思って、サイトのあちこちを調べたり、千葉商科大の動向が気になってしまっているところで、もしかしたら私はすでに千葉商科大の術中にはまっているのかもしれません…。


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