見出し画像

学生のニーズが変わると、打ち出すべき教員の魅力も変わる?大阪国際大のイベントから考える、イマドキの教員像。

大学、とくに私立大学にとって、受験生にアピールするうえで、キャリアサポートや就活支援をいかに充実させるかは非常に重要なポイントです。職員はもちろん、教員もこれら活動の支援にかかわるのは、当然のことになっています。今回、見つけた大阪国際大学の取り組みも、そんなイマドキの大学らしさが強く出ているキャリア関連のイベントでした。時代の変化を感じつつも、こういう視点を大事にしなくてはいけないのだろうなと、しみじみ感じました。

大阪国際大のイベント内容は、実務家教員たちが大学3年生を対象に、自身の就職活動や仕事での経験を語るトークセッションになります。これを読んで最初に思ったのは、登壇する先生方は、いまは大阪国際大の教員なわけで、良いことを言ったとしても、みんなその仕事を辞めてますやん……という素朴なツッコミです。また、辿ってきた道はそれぞれ異なるにしても、現在は教員ないし研究者になっているわけで、考え方や志向に似通うところがありそうで、キャリアへの考え方を伝えるという意味でも偏りがでるのかなという気がしました。

そもそもですが、業界について知りたいのであれば、教員が語る必要はないと思うんですね。教員たちは以前その業界で活躍していたとしても、今はそこから身を引いています。また、大学であれば、卒業生を中心に、各業界で現役で働いている人たちとのつながりもあるわけで、そういう人たちに話してもらう方が、在学生にとって価値があります。

さらに言ってしまえば、人によりけりでしょうが、前職(ないしもっと昔の職)の話なんて進んでしたいとは思わないと思うんですよ。だって、そのときの職場で満足していたなら今もそこにいるわけで、そうじゃないから教員をしているわけです。そう思うと、いくらその業界が魅力的だとか、やりがいがあるとか話しても、イマイチ説得力がかけるんじゃないかなという気がします。

では、なぜそんなツッコミどころがいっぱいあっても、教員たちが仕事の話を学生たちの前でするのか。おそらくですが、理由の一つとしてあるのは、業界で働いていたという経験を具体的に伝えることで、学生たちのその教員に対するリスペクトをより上げられるから、ではないかと思います。

研究者をめざしていたり、研究に対してリスペクトがあったりする学生であれば、研究者の業績を聞くと、その研究者に対しての興味が増すように思います。でも、そもそも研究者になりたいわけではなく、就職のために大学に来ている学生であれば、研究業績の話はそんなに響かない。それより、実は教員があこがれの業界や有名企業で活躍していたということの方が、ずっと尊敬の念を持つはずです。だって、学生からしたら、研究者よりもそっちの方がずっとなりたいものだからです。もちろん、すべての大学・学部学科がそうというわけではないです。でも、専門とする学問領域であったり、偏差値帯によっては、そういう学生が大多数という大学や学部学科はあるでしょう。今回の大阪国際大は、どちからというとそっち側……つまり在学生が企業人や業界人に興味を持つ側の大学のように思います。

よりよい教育を実践していくうえで、教員へのあこがれやリスペクトというのは、数値化はできないものの非常に重要な要素だと思います。であるなら、就職活動が具体化し、ゼミ活動がはじまる3年生に向けて、実務家教員の“企業人”としての側面を伝えるというのは、けっこう理にかなっているのかなという気もします。教員の役割も押し出すべき魅力も、時代や大学によって変わるわけで、それを上手く理解し、教育の推進力に変えていかなければいけません。今回の大阪国際大の取り組みは、ひと昔、ふた昔前ならいろんなツッコミがあったのではないかと思います。でも今の時勢を考えると、必要な取り組みなように感じました。受験生や在学生の大学へのニーズが変わると、こういったディティール部分もまた変わっていくのだと、あらためて感じました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?