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創る喜びを手軽に味わう。オンラインイベントは、芸術系大学の間口を広げる新たなコンテンツになりえるか?

コロナによって、大学と高校生や受験生とのコミュニケーションにオンラインが大きく取り入れられるようになりました。オンラインでは、なかなか大学の魅力が上手く伝わらないと嘆く大学関係者の声も聞きますが、ターゲットによっては、リアルよりも効果的なのかもしれません。今回、明星大学のオンライン公開講座をきっかけに、そんなことをあれこれ考えてみました。

では、まずどんな講座を見つけたのかから紹介しましょう。講座名は、「DeXT」。明星大学の高校生向けのオンライン公開講座で、デザインの本質や基本について合計3回の講座で伝えるというものです。定員16名ということもあり、かなり濃密な講座なように感じました。

この講座を見つけて思ったのは、そういえば、芸術系大学とその他の大学では、出だしからして大きく違うよな、ということです。芸術系の大学は、専門に特化していることが魅力ではありますが、良くも悪くもつぶしが効きにくい。国家資格取得をめざす大学や学部にも同じことが言えるかもしれませんが、国家資格系はつぶしが効きにくくても、資格があるので就職ではあまり困らないんですよね。一方、デザインや芸術関連は、めざす職業がクリエイターや芸術家などが中心になるので、フリーランスも多く不安定というイメージが、どうしてもつきまといます。しかも、入試ではデッサンなどの実技試験もあるので、デザイン学部と経済学部の両方を受験しよう、なんてことはなかなかできない。早い話、芸術系大学を志望するには、他の大学を志望するよりも何倍も覚悟がいるわけです。こういった覚悟を育てるうえで、今回の「DeXT」のような密度の高い講座は効果的なように思いました。

一方で、「DeXT」のような講座に参加する高校生は、すでに芸術系大学に対して、かなり興味があります。こういった高校生の興味を育てることも大事ですが、18歳人口がますます減少していくことを考えると、これだけやっていれば安心とはなりません。分母を増やすというか、できるだけたくさんの高校生に、わずかでもデザインや芸術に興味を持ってもらう、そのための活動がすごく大事になってくるように思うのです。

こういった活動をするうえで、オンラインのイベントや講座を上手く取り入れることはできないのでしょうか。というのも、デザインや芸術関連の魅力というのは、やはり創る喜びだと思うんですね。もちろんこれを実感できるのは、リアルのイベントだと思います。でも、わざわざ参加してくれるぐらいの意識がある人たちは、すでに十分に興味がある人たちで、分母を増やす、という活動のターゲットから外れてしまいます。一方、パンフやウェブサイトでの情報発信だけでは、創る喜びを実感することはできません。オンラインのイベントや講座は、ちょうどその中間あたりでいいのではないか、そう思ったわけです。

何かいい事例がないかと探してみたら、大阪芸術大学と京都芸術大学で昨年開催された「オンライン体験イベント」がヒントになりそうでした。この2大学の取り組みはどちらも受験生対象ではあるのですが、間口をもっと広げて、受験を考える前の高校生であったり、場合によっては小中学生を対象にしてやってみると、今回、書いている内容に近いことができそうです。

分母を増やすという活動は、すべての芸術系大学にとって重要な課題です。加えて、オンラインならリアルでやるほどの手間はかからないし、場所に縛られることもありません。であれば、いろんな芸術系大学が一緒になって、大きなオンライン・アートフェスとして、こういった活動に取り組んでいくことはできないのでしょうか。できたら、すっごく面白そうです。コロナは大学にとって、いろいろと打撃でしたが、ヒントも多くもらえました。もしこういった新たな動きを生むことができたら、コロナも捨てたものじゃない、そう思えるかもしれません。

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