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入試広報にもブランディングにも使える!?駒澤大学の「MiMi KOMA」が伝える、音声ARと大学の相性の良さ。

街を歩くと至るところで桜が咲いており、春らんまんといった感じです。大学では先々週、先週ぐらいに春のオープンキャンパスを開催するところが多かったようで、それに関わるプレスリリースをいくつか目にしました。今回、取り上げるのも、そんな春のオープンキャンパスのひとつ、駒澤大学の取り組みです。このアプローチは、大学と相性がいいというか、すごく可能性を感じるのですが、いかがでしょうか?

人気芸人の学生時代を現地に訪れて聞く、というエンタメ

では、どのような取り組みなのかというと、「駒澤大学キャンパスガイド MiMi KOMA」という、音声AR技術を活用した「Locatone(TM)」というアプリのコンテンツです。このコンテンツはキャンパス案内を目的にしており、コンテンツを起動させた状態で大学の所定の場所に訪れると、音声で説明を聞くことができます。この音声での説明が、いわゆる事務的な説明ではなく、同大学の卒業生であるオズワルドの伊藤俊介さんとアナウンサーの久代萌美さんの掛け合いになっています。

とりあえず、アプリをダウンロードしてMiMi KOMAを開けてみたところ、お二人がプロローグ的なことを話すのを「視聴」で聞くことができました。お二人ともジャンルは違えど、さすがは話すプロ。プロローグを聞くだけでも面白く、続きを知りたくなるものになっていました。

また「視聴」では、オズワルド・伊藤さんの卒論の話が出てくるのですが、本編のキャンパスガイドではさらに、学生時代の思い出やエピソードが盛り込まれているとのこと。駒澤大学の施設について詳しく知りたいかと言われると、そうでもない人もまぁまぁいるように思います。でも、人気芸人であるオズワルド・伊藤さんの学生時代のエピソードを聞きたい人はかなりいそうです。しかもそれを、現地をめぐりながら聞くというのは、けっこうなエンタメなように思います。受験生でなくても、この企画を知って、駒澤大学に来たいと思う人は、きっといるんじゃないでしょうか。

受験生が本当に見てみたい場所に、受験生を誘うには?

コンテンツとして、すごく面白そう!という話をつらつらと書いたのですが、実はこの取り組みにグッときたのは、そこではないんですね。興味深かったのは、リリースの下記のくだりです。

同コンテンツは、コロナ禍における新たなオープンキャンパスのあり方を検討することを目的に開発されたもの。密を避けつつ、入構可能な時間であればいつでも自由に自分の好きなタイミングで安心してツアーを楽しんでもらうことができる。なお、提供期間は2023年9月15日(金)までを予定している。

駒澤大学のプレスリリースより

コロナ禍における新たなオープンキャンパスのあり方……のところではなくて、入構可能な時間であればいつでも自由に好きなときに個人でキャンパスツアーができる、ここがすごくいいなと思いました。

昔に比べると、大学関係者でなくてもだいぶ大学に入りやすい雰囲気になりました。しかしそうはいっても訪れるのは、学食であったり、図書館であったり、博物館であったり、決められた場所が中心で、いろんなところ(とくに建物の中)を歩き回るのって勇気がいるように思います。でもですよ、実際のところ、受験生はこういった(学外者が入りにくい)普段づかいの場所こそ、入学したら自分たちが日常的に使う場所になるので、本当はじっくり見てみたいんじゃないかと思うのです。

今回のMiMi KOMAは、そういったニーズにも応えられるように、ツアーで巡るスポットに「種月館5F 留学相談室」とか「種月館4F 情報グループ学習室 PAO」とか「本部棟(2Fのピロティから)」など、学外の人が足を踏み入れようとあまり思わなさそうなところも挙がっています。オズワルド・伊藤さんの思い出深い場所がスポットに含まれているため、そういう意味では、リアルに学生たちが普段づかいしている場所が入っていると言えるのかもしれません。

オーキャンのキャンパスツアーであれば、こういった場所も気兼ねなく見学できるのでしょうが、一人の場合、たとえ公式サイトに「見学可」と書かれていてもかなり躊躇してしまいます。MiMi KOMAは、エンタメ企画として魅力的なだけでなく、こういった心理的なハードルを大きく下げてくれるという意味でも価値があるように思いました。実際はまずないでしょうが、守衛さんに「ここで何をしてる!?」なんて聞かれても、MiMi KOMAの画面を見せればすぐに理解してもらえる……、そう思えるだけでけっこう安心できるのではないでしょうか。

大学をまるごと伝えるブランディング企画としての可能性

そして、もう一つ伝えておきたいことがあります。MiMi KOMAのアプローチは、受験生だけでなく、一般向けにやっても、ものすごくいいんじゃないかと思うのです。むしろこのリリースを見たときに、これが最初に頭に浮かびました。

大学は、歴史のある建物から最新の研究施設まで、ほんとさまざまなものがあります。これを、ブラタモリ的な感じに、ゆかりのある著名人が解説しながら巡るコンテンツにできれば、大学に訪れる人が増えるし、大学のイメージも変わっていくように思うのです。これは利用者にとってメリットになるだけでなく、大学ブランディングという意味でも大いに価値があるはずです。

というのも、公開講座や図書館や学食の一般開放など、社会に開かれた取り組みや施設はいろいろあるものの、どうしてもパーツになってしまい、大学全体の魅力を伝えることにはなりません。言い方を変えるなら、これら取り組みや施設を目当てで訪れる人って、講座のテーマや学食のメニューに興味があるだけで、大学そのものに興味があるかというと、そうでもないと思うのです。大学そのものに対して興味を持ってもらうためには、やはり大学そのものについて知ってもらわないといけません。でも、単純に説明してもほら?みなさん、きっと聞かないと思うんですよね。であれば、著名人の視点で大学を解説するというのは、アプローチとしてありなように思います。しかも先ほど書いたように、MiMi KOMAのような取り組みであれば、それをやること自体が、大学に来て欲しい、門戸を開放している、というわかりやすいメッセージにもなります。

繰り返しますが、いろんな大学をいろんな人が解説する、そんなコンテンツ群ができると、ほんとすごくいいと思うんですよねー。”ぶらりと一人で行ける、おとなのキャンパスツアー”みたいのを、ぜひとも流行らしたいものです。


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