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#1 小学校の就学旅行説明会が「ちょっと、何言っているか分からない」だった件


国内の新型コロナ感染者数が1日で1672人、隣の県でも100人を超えている今日このごろ(2021年6月24日現在)。

そんな中、小学生の娘の父兄に向けて実施された修学旅行説明会は、父兄の時代から続く定番の「京都&奈良観光」という概念を打ち破る、なかなかに斬新なものであった。

1.修学旅行のパワーワード

京都

では、説明会に参加した1人の母親の脳裏に飛びかったワードを順に見て行こう。

文化遺産、歴史、世界、SDGs、宿泊、集団生活、公衆道徳、仲間、絆

このあたりは、修学旅行の定番っぽいワードたち。続いて、

リ〇ワールド、コスプレ七変化、世界のグルメ、テント、設営、帰宅、再登校

まだまだ続く。

VR、京都&奈良、夜食、学校の怪談、高原、陣屋、高級フランス料理、散策、さるぼぼ

まあ、こんなところだろう。テントと高級フランス料理だなんて、一体どうなっているんだ。

2.どうしてこうなった その①

悲鳴

実はこれには深いわけがある。
コロナ禍における修学旅行の実施には、御上から厳しいしばりが課せられている。

まずは「距離」。例年のように京都まで団体バスで行くのなら片道3時間はかかるだろうが、コロナ禍では感染防止の観点から「移動中は一切喋るんじゃねえぞ」と決められているらしい。箸が転んでも笑い出す多感な10代前半の少年少女たちにとって、それは拷問のようなものだろう。児童たちにそれを強いなければならない先生方のストレスも半端なさそうだ。

さらに、もしも旅行の途中で児童が体調不良になったら、父兄が現地まで即迎えに行かなくてはならない。そのときは「公共交通機関の使用は禁止」。わが地元から、平日に自家用車で、しかも観光シーズンまっただなかの京都まで来いというのは、多くのお母さんたちにとってはかなりの難題だ。

3.どうしてこうなった その②

札束

そしてもう一つが「宿泊」。泊まるなら1部屋に2人まで。そうなると引率の教師陣も含めて120人を超える集団を収容するには、計算上60部屋が必要となる。仮抑えした宿にはそんなに部屋数がないらしい。しかも、例年は1部屋に8人収容していたらしく、2人部屋などにしたら費用が跳ね上がってしまうんだとか。

とどめが、緊急事態宣言などが出された時点で、宿泊することが即アウトとなってしまうことである。直前の団体キャンセルでは、キャンセル料なども当然返ってこないであろう。

そう。正直言って、今の御時世で11月に宿泊つきの団体旅行を設定することは、かなりのギャンブルなのである。

4.「宿泊先:自分の学校(教室)」

教室

しかし、先生たちは考えた。子どもたちは

「修学旅行、泊まれるよね?」

とすがるような眼をして連日問いかけてくる。

社会見学も遠足もプールもないこの状況下で、なんとか子どもたちの望みをかなえてあげる方法はないものか。

その結果、
「ホテルに泊まれなきゃ、学校に泊まればいいじゃない」
という、マリー・アントワネットもびっくり(?)の宿泊先が決定された。

こうして、もしも緊急事態宣言が発令されたとしても2日間の日程の修学旅行をやりとげるため、先生方があらゆる知恵をしぼりまくったという、前代未聞の修学旅行が計画されたのである。

5.テーマパークの中心でSDGsを叫ぶ

民俗衣装

まず、1日目はふつうに登校。その後バスで地元民御用達の某テーマパークへ行く。


この某テーマパークは、地元某幼稚園の「お別れ遠足」で、交通費をうかせるために「現地集合・現地解散」という荒業を駆使できる程度の距離。だから、バスでの移動時間もまあまあ少なくてすむらしい。

そして、そこにて

世界の国々への理解を深め(略)SDGsへの理解を深める(説明会配付資料より)。

昭和の高度成長期に建てられたあの「小さな世界」において、一体どうやってSDGsへの理解を深めろというのだろうか。

まあ、パーク内で民族衣装を着たり、外国の料理を食べたりして楽しむことはできそうだ。また、ここで児童たちをたっぷり歩かせて体力を消耗させ、夜しっかり寝させようという先生たちの魂胆も透けて見える。

6.避難所運営シミュレーションも?

テント

その後学校へもどり、校舎を広ーく使って教室の中に1人分のテントをそれぞれ設営。さすがに11月にグラウンドでのテント泊は寒いからだそうだ。なんだか、幼稚園時代のお泊り保育をほうふつとさせる。

それと、コロナ禍での災害発生時における避難所運営のシミュレーションもかねられているような気がしないではないが、とにかくソーシャルディスタンスはこれでばっちりである。

そして、お風呂なしではきついであろう現代っ子たちのために、なんとここで児童全員が一時帰宅。夕食も家で食べて、ふたたび学校へ集合する。

7.修学旅行でアレはできるの

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そして体育館でVR眼鏡を使っての「京都・奈良修学旅行体験」。このあたりには今どき感が漂う。その後は校内で、児童たちが自由に企画するというお化け屋敷なり、逃走中なりのレクリエーションを楽しみ、テントにて各自就寝。もしも緊急事態宣言が出てしまったら宿泊をとりやめ、この時点での一時帰宅となる。

それを聞いた娘氏。
「夜、枕投げはできるの?」
……テントと下に敷くマットと寝袋のレンタルセットの中に枕が含まれているかはいささか疑問だが、いざとなったら、競技としての「枕投げ」や、それ専用の枕などもあるらしいから、児童企画のレクリエーションとして提案してみたらいいんじゃないかな。


8.地元観光業救済おフランス料理

洋風料理

翌日は、観光バスで県内の某有名観光地へ向かう。例え片道2時間半かかろうと、「県内」というところがポイントである。

そこを観光し、お昼には観光地のホテルにて、フランス料理のフルコースによる「テーブルマナー講習」を兼ねたランチ。なんだかこのあたりにも、地元観光業の応援をかねている感がうかがえる。

その後も観光やら散策やらを楽しみ、お土産も買って帰路につくという行程である。そこに修学旅行御用達、「木刀」が販売されているかどうかはわからない。

9.ギリギリで生きていたいから

マスク

ということで、県内にとどまりながらも、「京都&奈良」、果ては「世界」までカバーしてしまう前代未聞の修学旅行案が完成した。

万が一緊急事態宣言っぽいものが出てしまっても、「外部宿泊なし」「県内移動」ならいいでしょう、というギリギリの攻防なのだ。

10.つまりは単純に君のこと

子供の笑顔

まあ、こうやって見てきたわけだが、京都&奈良の観光なら大人になってからでもできるけど、学校に泊まるなんて、ちょっとほかではできない。

正直、親たちにとっては、行き場所はどこでもいいから、とにかく楽しんできてほしい。君たちがそうやって過ごす時間が笑顔であるならば、もうそれだけでいいいんだよ。

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