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映画『正欲』の感想

正欲を見ましたー。めちゃくちゃ良い作品でした。
感想文を書いてみたくなったので、書いてみます。
この感想文では、めちゃくちゃネタバレを含み、またテーマがセンシティブであることから必然と感想文もセンシティブなものになるかと思います。
承知の上で読んでくれたら嬉しいです。
※もしかしたら適当なこと書いてるかもしれないです。それも踏まえた上で読んでもらえたらと思います。


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まずは感想を書く前に、それぞれの登場人物を整理していきたい。
主要な登場人物は5人。(以下、画像はホームページから引用)

寺井啓喜(稲垣吾郎)
検事で一児の父
桐生夏月(新垣結衣)
寝具屋に勤めている
佐々木佳道(磯村勇斗)
桐生の同級生
諸橋大也(佐藤寛太)
ダンスサークルに所属する大学生
神戸八重子(東野絢香)
諸橋の同級生で学園祭の実行委員

さて感想だが、まずは佐々木と寺井を比較して書いていきたい。

特殊性癖であること以外は“普通“であり、その性癖も周りに迷惑をかけることのないよう振る舞っていた佐々木が逮捕され、正しさに縛られ自分の尺度でしかモノを測れず、周りに迷惑をかけてしまう寺井が裁く側になっている構造に違和感を覚えた。おそらくこの違和感は不公平さに依るものだと思う。
特殊性癖は感情の一つであり、それを性的に感じないようにすることは不可能だと僕は思う。ただ寺井の正しさを追求し、それ以外を悪とする考えは感情ではなく、価値観であり、登場人物の中で唯一改善できうる人間であると考える。最後のシーンで、寺井は桐生との会話により、ようやく改善するきっかけを得ていたが、実際に改善、成長したかまでは描かれていない。
この不公平さへの唯一の救いは、佐々木には桐生という帰る場所があることだと思う。佐々木は自身の弱点や性格、性癖などを自身が理解し、それを理解する人間がいる。またそういう人間が一定数存在することも理解している。寺井は周り(主に家族)への理解をしようとしなかったが故に、帰る場所を無くしてしまった。
理解できずとも、理解しようとする姿勢は大事だと感じた。

次に桐生と佐々木に注目して書いていきたい。
桐生は寝具屋で自分を気にかけてくれる同僚に冷たく接していること、同窓会の幹部である人への対応が悪いこと、見たくないテレビの時に構わずチャンネルを変えることなど、かなりわがままなのではないかと思う。
佐々木はおそらくその辺の人付き合いはある程度できる人間だと思う。同窓会をきっかけに女性からご飯に誘われても断らずに行っていたり、ネット上で自分と同じ性癖の人に一人じゃないことを伝えるために小規模ながらコミュニティを作成したりと、社会性があると感じた。
桐生は佐々木と結婚、同棲することで社会性を得ていき、より人間らしく生きていけるようになるんだろうと感じた。
自身への理解者がいること、自分にとってかけがえのない人間がいることは生きていく上でいろんな手立てになるんだと感じた。


最後に諸橋と神戸に注目して書いていこうと思う。
正直今回のストーリーの中で、一番分からなかった部分が多い二人だった。ダンス部長の高見はなぜ神戸に「諸橋をよろしく」と声をかけたのか、なぜ諸橋はダンスサークルを辞めたのか(神戸の追っかけが本当の理由なのか)、同じ性癖を持つ学校教員の矢田部とどのように諸橋はつながったのか、神戸が諸橋へ男性恐怖症を告白するきっかけはなんだったのかなど、分からないところだけである。
諸橋は自身の性格なのか、性癖が理由なのかは分からないが、極力人とは関わらぬよう生きており、周りへの関心の薄いという点では、寺井の考えと近いと思った。神戸はおそらくそれさえ理解していて、自身の男性恐怖症のことや諸橋が孤独ではないことを伝えているところは、今までの行動や性格では考えられないことであり、とてつもない努力が感じられた。
諸橋が心を開くきっかけはもしかしたら一緒に撮影をしようと話した佐々木だったかもしれないが、僕は神戸がきっかけでよかったと思う。当然にストーリーとしての綺麗さは神戸がきっかけになる方が良いが、神戸がきっかけを作れたことが、今後の神戸の成長につながるし、何か努力が報われたように思える。
この二人のストーリーは、佐々木と寺井、桐生と佐々木での感想と同じく、理解しようとする姿勢の大事さや自身の理解者がいることの重要性が改めて感じた。


地球に留学したような感覚と発言する桐生。恋愛や結婚は自分には縁がないと思っていた桐生がちゃんと佐々木を好きになっていて、人間らしい人間に近づいていっていると思った。特殊性癖を持つ彼らや男性恐怖症である神戸にとって人間に擬態すること(周りの人間っぽく生きること)が彼らにとっての正しさであり、正欲なんだろうと解釈した。ちゃんと学校に通い、定職に就き、結婚をすることが正しいものであり、自身もそうしてきた寺井。おそらく一般にそれは正しいものであり、親世代なんかはこれが当然だと思う文化もあったと思う。ただそれ以外を排他的にしてしまうことで正しくない方向にいってしまっていると思う。
一般に正しくないとされてしまう桐生や佐々木がより人間らしく、一般に正しいとされている寺井が人間らしくなくなるストーリーはとても興味深かった。


今回の感想文では「改善」や「正しい」という言葉を用いているが、特殊性癖が悪だとは思っていない。現に魚が死ぬ間際に性的魅力を感じる人や、ウルトラマンやポケモンに対して性的魅力を感じる人、蛙化(好意を向けられると嫌悪感を抱く)人がこの世には存在していて、性癖を隠しつつ、人生を全うしていることを知っている。窃盗癖などの周りに迷惑がかかる癖は別として、そうでない限り悪でないと思う。

この映画がいつまで上映されているか分からない。もうそろそろ終わってしまうのではないかと思う。現に僕の地元ではもう上映はしていなかった。
まだ見ていない人はここまで読んでいないと思うが、もし見ていなかったらぜひ見てほしい。僕もアマプラなどで見れるようになったらもう一回見たい。
感想をコメントなどで共有してほしい。この映画に対してどういう感情になったのか気になる。一緒に見にいった友人とも話したが、だいぶ違う感想を持っていたし。
以上、感想文でした!!読んでくれてありがとうございました〜。

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