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マッドパーティードブキュア 94
「おや」
勢い込んで皿の上を何かをかきこんで、ソファにもたれかかったところで、テツノは視界が少しだけ明瞭になっているのに気がついた。相変わらず照明は薄暗くて遠くまでは見えないけれど、先程まで店全体にかかっていた霞のような影は薄くなっているように思える。
古いレストランのように見えた。広いレストランだ。世界の果てまで席が続いているように見える。どの席にも影のような客が座っている。
「あれ? あの人たち」
一際大きな席に詰め込まれるように何人かの集団が座っていた。顔を寄せて、ささやきあっているようだ。その姿にはどことなく見覚えがあった。崩壊した以前のアジト、その一角に住み着いていた集団がちょうどいつもあのように身を寄せ合って話をしていた。それとなく観察していると、向こうもこちらに気がついたのか、集団の意識が向いてくるのを感じた。
「ねえ、あの人たちって」
「ああ、ここまでの道知らせてくれた奴らだな」
テツノの言葉にマラキイが頷く。
この店に到る道を開いたのはあの集団の指示だった。
「話を聞いたらなにかわかるかな」
「あー、それはどうでやしょうかね? 状況がはっきりしないでやすから」
ズウラは顔を顰める。ズウラの考えはテツノにもわかる。彼らが敵なのか味方なのかそれさえもわからない。話しかけて安全かさえわからない
「何もわからないなら話を聞いて情報得たほうがよくないかな?」
「それはそうでやすけど」
「道を教えてもらってとりあえず助かったんだし、敵……ではない気もするんだけど」
ふうむ、とズウラは考え込んだ。テツノも少しだけ考えてから口を開いた。
「それなら、あたしが行ってくるよ」
「やめろよ」
口を挟むメンチにテツノは首を振った。テツノは自分が行くのが適切なように思えた。メンチとマラキイの顔を見ながら言う。
「あたしが声かけて見るから、もし危なそうだったら援護して」
「お客様」
背後から声が聞こえた。
【つづく】
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