![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124963715/rectangle_large_type_2_901e4683da81a440d5beccbbe8c25c2e.png?width=1200)
マッドパーティードブキュア 85
瓦礫の中に、マラキイとメンチは呆然と立ち尽くしていた。煙幕が晴れた後に、老婆とセエジの姿はない。
「逃げられたか」
「ああ」
メンチの言葉にマラキイが頷く。メンチは振り向いてマラキイが酷く険しい顔をしてるのに気がついた。
「どうした?」
「最初から繋がっていたのか?」
「なにか心当たりでも?」
「いや」
マラキイは首を振り、黙り込む。
「ああいった陣を使う奴らはそんなに多くないでやす」
背後からズウラが声をかけた。テツノと肩を組み、支え合いながらメンチたちの隣にやってくる。
「お前もそう思うか」
「ええ、兄ぃ」
ズウラとマラキイはうなずきあう。
「正黄金律教会でやす」
「そうなのか?」
メンチが尋ねる。
「ああ、爆炎ナイフを使うやつは少ない。それで陣を組むなんて普通の奴らができることじゃない。何かしらの組織がバックについているはずだ」
「それが正黄金律教会だと?」
「たぶんな」
「でも、セエジは教会のやつらに命を狙われてたじゃないか」
メンチはセエジと出会ったときの事を思い出す。あのとき混沌の獣をけしかけてきた男、ラゲドは正黄金律教会の手の者だ。少なくともメンチはマラキイからそう聞いていた。
マラキイは頷いて答える。
「状況が変わったのか、奴らも一枚岩じゃないってことなのか」
「ってことはよ」
はっ、となにかに気がつき、メンチは眉間にしわを寄せた。
「ここに居続けるのはまずいんじゃねえか」
「ああ、そうだな」
セエジと老婆が正黄金律教会に通じているのであれば、この隠れ家のことが向こうに知れてしまう。もはやこの場所は安全ではない。とはいえ
「どうする? 他に良い場所あるか?」
「いや」
ズウラとマラキイが揃って首を振った」
「不動産に行く金もねえよな」
「ああ」
三人は険しい顔で見つめ合う。
「どうしたの?」
声を上げたのはテツノだった。
「なんだ?」
「あれ」
テツノが指を伸ばした。その指の先で影の一団が手招きをしていた。
【つづく】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?