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マッドパーティードブキュア 233
女性もどこか不思議そうな目でメンチを眺めている。一撃を防がれるつもりがなかったのかもしれない。女性は黙って頭をふって腰を下ろした。
「それで」
口を開いたのはメンチの方だった。何かを言われる前に、女性のゆらぎが収まる前に、切り出す。
「あたしらはここに前に住んでた人の忘れ物を取りに来たんだ。あんたらがここに来たときに袋はなかったか?」
「袋かい?」
きしり、と女性の顔がこわばった。メンチにはそのように見えた。
「生憎だけれど、まったく心当たりがないねえ。あんたの知り合いがいつここからいなくなったのかはしらないけれども、その間にいた誰かが持って行っちまったんじゃないかな」
「でも」
「そうでやすか、それは残念でやすね」
追求しようとした矢先、ズウラが口を挟んだ。臆したか。抗議の目をズウラに向ける。しかし、ズウラの目は抜け目なくきらめいた目だった。女性の腕力に恐れをなしたわけではなく、なにかの策があるようだった。
なので、メンチは何も言わないでおくことにした。黙って、ズウラの次の言葉を待つ。
「無いってあなたが仰るのであれば、家探しをするわけにもいかないでやすものね。あっしらはここらでお暇させていただきやすよ」
「もう行くのかい?」
以外そうな顔で女性が答える。
「ええ、ないところを探しても仕方がないでやすから」
「そうかい、お構いもできませんで」
「いえいえ、それじゃあ、婆さんも」
「ああ」
さりげない口調で老婆に手を伸ばして立たせると、ズウラは頭を下げた。
「お邪魔しやした」
正座した「子どもたち」を掻き分けて、ズウラとメンチと老婆は棲家の外に出た。
「失礼します」
「はいはい、どうもね」
女性が気楽な調子で手をふる。
メンチたちは棲家に背を向けて歩き始める。冷静を装ってゆっくりとした歩調で。
肩越しに振り返り、棲家から十分に離れたのを確認してからメンチは小声でズウラに話しかけた。
「どういうつもりだ」
【つづく】
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