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マッドパーティードブキュア 93

「追跡は?」
 ラゲドの言葉にメリアは首を振る。
「もうこの入り口は閉じてしまっています」
「そうですか。どこに繋がっていたかはわかりますか?」
 しばらく、断面を見つめてから再びメリアは首を振った。
「申し訳ありません。切り口が完全にランダマイズされてしまっています。逆スクランブルには時間がかかるかと」
「なるほど。では仕方がありませんね」
「ただ」
 メリアはそう言って、断面に指を押し当てた。
「この混沌には見覚えがあります」
「ほう」
 興味深そうに唸るとラゲドはメリアの隣に座りこんだ。メリアはグネグネと入り組んだ断面の輪郭を撫でながら言った。
「例の斧女、あいつに切断された本の断面がちょうどこのような形に」

◆◆◆

「なんでげすか? これ」
「さあ」
 机の上に置かれた物体を見て、一同は首を傾げた。皿の上のそれは湯気に隠れているのかどんなに近くで見てもぼんやりとしか見えない。その数は五つ。無視するには多すぎる数だ。
「あー、皿にのってるってことは食えるんだろ」
 マラキイはナイフとフォークをメンチに押し付けながら言った。メンチは腕を組み、断固して受け取ろうとしない。しかたなくマラキイはテツノに渡そうとして、やっぱり受け取ろうとしないのを見て、ズウラにも首を振られ、興味深そうに手を伸ばしてくる女神を無視してから、しぶしぶ自分でナイフとフォークを構えた。
 マラキイは恐る恐る皿の一つに手を伸ばした。湯気の中を探るナイフにふわりと柔らかな感触が伝わる。手探りならぬナイフ探りで柔らかなそれを一片切り取り、苦労してフォークに刺して口に運ぶ。
「ん? これは」
 マラキイは目を見開く。勢い込んでナイフを閃かせフォークを突き刺し、口いっぱいに頬張る。
「旨いのか?」
 疑わそうにメンチとテツノも皿に手を伸ばし、その上に載せられた物体を口に運ぶ。
「あ」
「お」
 それだけ声を漏らすと二人はわき目もふらずがつがつと物体を食べ始めた。

【つづく】

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