マッドパーティードブキュア 219
「たしか、その斧は女神様がメンチさんにあげたのでしたね」
「たぶん、そうだよ」
セエジの問いに女神が自信なさげに頷く。
「昔の私の時のことは、なんだかぼんやりとしていてうまく思い出せないけれども、その斧を渡したことだけはちゃんと覚えているよ」
「その斧が、なんなのかは、わかりますか?」
女神は首を振った。
「もともとそんなことは知らないよ」
「あなたが渡したのでしょう?」
「私はあの袋から取り出して、メンチちゃんに渡しただけ。最初に手に触れたのがあの斧だったから」
「そんな適当だったのか?」
メンチが驚いて問いかける。その割には最初からあの斧はメンチの手に馴染んでいた。
「ごめんなさい、でもそういうものだから」
「女神さん、あなたはそれ以前にもその袋から出てきたものを誰かに与えたりしていましたか?」
「うん、していたよ。昔から、力が欲しいって、何かをくれる人はたくさんいたから、その度にあの袋から出てきたものを渡してたよ」
「何を渡したことがあるか、覚えていますか?」
「そうだな」
女神は呟いて考え込んだ。靄のかかった記憶の向こうを見透かそうと、彼方を睨む、
「ちゃんと覚えているわけじゃないけど、ジェットの付いたカジキマグロとか、空獺の爪でできた鉤爪とかを渡したことが、ある、と思う」
ゆっくりと女神は言葉を紡ぐ。
「ジェットのついたカジキマグロって、まさか仮面カジキマグロ颱風のあれでやすか?」
ズウラが口を挟んだ。仮面カジキマグロ颱風はドブヶ丘超人の一人だ。仮面をつけたカジキマグロ颱風に乗り、高速で狼藉者を轢き殺して去っていく。
「わかんない。渡したのしか覚えてないから」
「空獺の爪もウソバリンのことじゃないでやすかね」
「もしかしてですが、女神様、その袋とは何らかの神器の類だったのではありませんか?」
「わかんないよ」
女神はまた首を振った。メンチは口を挟んだ。
「でも、それって、あの洞窟と何か関係あるのかよ」
【つづく】
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