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マッドパーティードブキュア 83
マラキイは鋭い痛み地面についていた右手を見る。地面から突き出した金属がざくりと指の間を切り裂いていた。
マラキイの赤黒い血が金属の表面を伝って流れ落ちていく。金属は七色に鈍く輝いていた。見たことのある輝きで、見たことのある形状だった。
「これで終わりだよ」
老婆が呟き、ナイフを構え、投げる。その音をマラキイは背中で聞いていた。瞬間で考える。目の前の金属、背後のナイフ、足元の瓦礫、なすべきこと。危機の中で思考が高速で回転する。頭脳がマラキイの身体を動かす。ぎりぎりまで引き付けて、前に転がる。マラキイのうずくまっていた瓦礫にナイフが突き刺さる。転がりざま、握りこんだ小石をナイフの柄にぶつける。ナイフが爆ぜた。
「なに!?」
老婆の慌てた声が聞こえる。爆発しないはずのナイフだった。マラキイが投げた小石が信管を直撃したのだ。しかし何のために? 爆風にマラキイは吹き飛ばされる。
「うう」
マラキイは立ち上がり、身構える。
「別にそんなんじゃあ陣は崩れないよ」
思いがけないマラキイの行動に一瞬動揺したものの、老婆はすぐに立ち直りマラキイの動きに目を凝らす。わずかに乱れた陣、その隙間にマラキイを到達させないように牽制のナイフを投げる。マラキイは大きくナイフを避けていく。だが、避けた先には不発ナイフのトラップがある。老婆は躊躇いなくナイフを投げる。マラキイに爆発を避ける余力も、衝撃と爆炎に耐える体力もない。爆発音。地面に突き刺さったナイフは、マラキイを吹き飛ばす。そのはずだった。
「え?」
ナイフは明後日の方向の床に突き刺さっていた。
「遅いじゃないか」
「うるさいな」
マラキイの姿は大きな斧で隠されていた。斧を片手で捧げ持つのは背の高いドブ色の魔法少女。
「メンチちゃん」
老婆が残念そうな口調で言う。
「大人しく寝ててくれたら、ありがたいんだけどね」
「アホ言ってろ」
どろりとメンチは大斧を構えなおした。
【つづく】
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