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マッドパーティードブキュア 239

「袋? でやすか? 依頼が来て探してほしいって言われたっていう」
 ズウラが素知らぬ顔で口を挟んだ。まったく何の話をしているかわか習いという口調で。
「隠さなくたっていいでしょう。あなたたちが探してるのも袋なのでしょう。おそらく、その袋ですよ。私も聞いていましたもの、あの女との話は」
「あの女の人は知らないって言っていたでやすよ」
「あんな言葉が本当だと思うのですか?」
 受注担当官はズウラの目を見返して尋ねた。ズウラは首を振って答える。
「あんたの話しが本当だっていう証拠もないでやす。なんらかの方向であっしらを嵌めようとしてる可能性もあるでやすから」
「私は……私たちはあの女の支配から逃れたいのです」
「でもでやすね」
「話すだけ話してみなよ」
 受注担当官の言葉を遮ろうとするズウラを、メンチはさらに遮った。受注担当官の目を見て、先を促す。受注担当官の話には何かしらの真実が含まれているように思えた。もちろん、すべてが真実だとは思わないし、メンチではそれを見破ることはできないかもしれない。その部分についてはズウラと老婆が見破ってくれるだろう。
 受注担当官は頷いて、言葉を続ける。
「何人かにその袋を回収に行かせて、帰ってこなかったので、私が行くことになりました」
「なんでまた、わざわざあんたが?」
 メンチの記憶の中で、受注担当官はあくまで仕事を回すだけの役割であり、現場に出張っているところを見たことはなかった。
「私も調達屋ですから」
「あ?」
 平坦な顔で、受注担当官は言葉をつづけた。
「これでも、昔はそれなりにやっていたのですよ」
「嘘つけ」
「誰かがへまをしたときにけつを拭かないといけませんから、ちゃんと腕がないと連盟では上に行けないんですよ」
「でも、今回はあんたもへまをしたってことだろ」
「ええ」
 受注担当官の顔が曇った。
「何があった?」
「何があったの何もありませんでしたよ。あの女に挑んで負けたのです」

【つづく】 

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