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マッドパーティードブキュア 234
「イモ引いたわけじゃあ、ないでやすよ」
怯えながらもしっかりとメンチの目を見返しながら、ズウラが言う。
「それは分かってる。だから、何が狙いなのかを聞いている」
メンチは答える。別に安心させるためではない。本当にズウラが何を思ってあの場を去ったのかを知りたかったのだ。けれども、ズウラは少し表情を緩めて言葉を続けた。
「あのお姉さんはなにかを隠していやした」
「ああ、そうだな」
「あの反応を見るに」
ズウラはそこで一度言葉を区切った。記憶を反芻するように一瞬目をつむり、すぐに開いた。
「どうやら、例の袋について、何かを知っているようでやした」
「じゃあ、なんであそこで問い詰めなかったんだよ」
「お婆さんを助けるためでやす」
「……悪かったよ」
きまり悪そうに、老婆は言った。地面を見つめて、ぎゅっと拳を握りしめている。
「行かせたのはあっしでやすから、謝るのはこっちのほうでやす」
「いや、油断したつもりもなかったんだが」
「なにがあったんでやすか?」
老婆はそっと棲家の方に目をやった。ズウラとメンチもつられてそちらに目を移す。
棲家に動きはない。誰も、何もいないかのように静まり返っている。
「何もいないと思ったんだよ」
「なにも?」
「ああ、あのブルーシートの近くまで行って、気配を探った。中に何かがいる気配はなかった。でも……」
「でも?」
メンチが途切れた言葉の先を促す。
「中に入ると、ぎっしりと『子どもたち』がいた」
「あのおっさんたちのことでやすね?」
「身構える暇もなかった。一瞬で取り囲まれて、座らせられた」
老婆はぶるりと体を震わせた。メンチの知る限り、老婆の潜入技術はかなり高い。聞き耳を立てたり、気配を消すことは得意なはずだ。その老婆が薄い壁越しに気配を察知できなかったとは考えにくい。
「あのおっさんたちは何者なんでやすかね」
「『子どもたち』といっていたけれども……ん?」
メンチの頭に違和感が浮かんだ。
【つづく】
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