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海月里ほとり
2021年8月16日 22:39
第三管区外れの廃倉庫前 廃倉庫のひさしから落ちた雨だれが分厚い外套に染み込んでくる。ドブケ丘に降る雨は町のあらゆるものと同じように耐え難い悪臭を放っている。匂いが肌に侵食されているような気がしてサナダは手を鼻に運んだ。気分の悪くなるような悪臭に外套の裾で手を拭った。匂いは消えず、ただひどくなっただけの気がする。サナダはため息をついた 通りにむかう角に目をやる。アイモトが立っている影だけが
2021年8月19日 22:33
【前】 倉庫の中「今後も、良い取引が続くことを期待していますよ」 取引相手の男は笑って契約書を鞄にしまった。爬虫類のような笑み。今後この関係は良い結果をもたらすだろうか。クニハラの胸の内に暗い不安がよぎった。十分に考え、裏もとった。 それでも大きな決断をしたときにはいつも本当に良かったのかという疑念が残り続ける。組織のボスには向いていないのではないかと思う。 向いてないからといって抜
2021年8月23日 20:52
【前】下水道 ドブヶ丘にかつて文明があった証として下水道の存在があげられる。いつ誰が掘ったのかも、どこに続いているのかも皆目わからない下水道には、町の淀みという淀み、濁りと言う濁りが流れ込み、悪臭と混沌が濃縮され続けている。その全貌を把握する者はいない。 この町で地図を作ろうとする変わり者は少ないし、数少ない変わり者はたいてい短い生涯を終える。好奇心が猫をも殺すのはドブヶ丘においても同様な