見出し画像

シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』について

 シェイクスピアは一応四大悲劇は読んだことがあるのだが、この『ジュリアス・シーザー』もそれらに引けを取らず、すごく面白かった。『マクベス』みたいにテンポがいいし、『オセロー』みたいに筋が分かりやすかった。

 まず思うのは、タイトルが『ジュリアス・シーザー』なのだが、主役はカエサルではなく、むしろブルータスの方だということだ。自分の正義と理想のためにカエサルを暗殺し、そのために追われて遂には自害するブルータスの報われなさと高潔さに泣けてくる。日本史でいうと、本能寺の変と山崎の戦いにおける明智光秀みたいやなと思った。それでいうとカエサルは織田信長か。ブルータスって、世界史上の有名な裏切り者の一人ってイメージがあったけど、むしろ国の未来を思って行動した高潔な人物だったんやなと、イメージがすごく変わった。

 あと、カエサルが死に、ブルータスが群衆に演説した後、アントニーが演説するというシーンがあるんやけど、群衆の心変わりの早さというか、その愚かさに本当にがっかりする。同時に、いつの時代も群衆ってこんなもんなんやなと思う。この衆愚っぷりを描き出したシェイクスピアはすごいなと思う。

 いずれにせよ、世界史の教科書だったら「カエサル暗殺→三頭政治」みたいにさらっと流れてしまうところに、こんな人間臭いドラマがあったんやなと勉強にもなった。キケロもこの流れの中でブルータスに共感を示すことで処刑されとったんですね。買ってからまだ手をつけてない『老年について・友情について』もまた読んでみたいなと思います。

 そして、本作では勝者(?)として描かれたアントニーが殺されるまでが、同じくシェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』という作品で書かれているらしい。こちらも読んでみたいと思う。やっぱり歴史物って面白い。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?