【三人組メモ】先生と潜入大作戦4

「いいわ…三人とも主様の前に差し出してあげる!」
俺たちは抵抗する間もなく、三人まとめてロープで縛られてしまった。
…しまった!通報ボタンを押し損ねた!
拾井よ…どうか空気を読んで助けを寄越してくれ…!
「…どうすんだよ」
一方、俺たちを捕らえておきながら、やつらはひそひそと相談を始めた。
「本当にあいつらを差し出すのかよ…」
「当たり前じゃない!危うくあたしたちが罰せられるところだったのよ!?わかってる!?」
「長江を引き渡したらそれで十分じゃないのか?あの子だけ…」
「あの紅葉って子は逃がせって言うわけ!?あんた、あたしに犠牲になれって言うの?」
「そ、そういうつもりじゃ… 」
無計画かよ。
「おい」
呆れていると、俺と佳一と背中合わせになっている先生が手をつついてきた。
ん?何か作戦でもあるのだろうか…
「今みたいに手を触ったら、数秒だけ息を止めろ。あと、俺と目を合わせるな」
わかった。と、小さい声で俺たちは答えた。
ここは先生に委ねよう。
「いいから黙ってあたしに従いなさい!あいつらを連れて行くのよ!」
どやされた二人は、転がるように俺たちのところへやって来た。
しかし、二人とも俺と佳一のことなんぞ目もくれず、背後にいる紅紅葉へと直行した。
こいつら…
「さて…長江向日葵はどうしようかしら…」
そうとは知らずに、やつは長江に気を取られていた。
なにやらぶつぶつ言っている。
「このまま差し出すしかないわね…」
「彼女を差し出して…一体何をする気だ?その主様とやらは」
佳一が尋ねる。
「うるさいわね。あんたに関係ないでしょ」
ここまできたら関係大ありだっつーの。
「お前、わかってんのか。人一人の人生壊すかもしれねぇんだぞ。責任取れるのかよ!」
「だからうるさいって言ってるでしょ!」
やつは俺たちに背を向けた。
そのとき、先生が俺たちの手をつついてきた。
合図だ!
俺と佳一は顔を見合わせ、言われた通り息を止めた。
息を止めたのと同時に、俺たちを縛っていた縄がほどけた。
やった!
立ち上がり振り向くと、先生はまだ座り込んだままだった。
しかし、その目の前にいる二人は…跪いていた。
何だ!?何が起きた!?
「もういいぞ」と言われ、俺たちはようやく呼吸をし始めた。
「あんた…!何をしたのよ…!?」
あいつの苦しそうな声が聞こえ、見ると、男二人のようにはいかないが、壁に手をついて立っているのもやっとという状態だった。
よっこらせ。と、女子高生には似合わないことを言って、先生は立ち上がる。
「さすがに完全には効かないか…」
魔法を使ったのだろうけど…一体何の魔法を…
「私たちを主様のもとへと案内してもらおうかしら?」
「そんなことっ…」
できるわけない、とでも言いたかったのだろうが…
「かしこまりました…紅葉様…」
「紅葉様の仰せの通りに…」
男二人は、すっかり紅紅葉という人物の言いなりになっている。
今の一瞬で…マジで何をしたんだ…
「あ…あんた…!そいつらに…!」
「あなたと同じことをしてあげたのよ。天原紫蘭さん」
「どうしてあたしの名を…!」
どうして。
それはお前の担任の先生だからだよ。
「知っているわよ。あなたが力を乱用して二人を従わせていることも。ぜーんぶ知ってるわよ」
「…!」
「長江向日葵さんばかり人気なのが気に入らないのも、彼女が持つ力があなたにはないことも全部全部」
先生…やめてやれよ…
本人めちゃくちゃ怒りやら恥ずかしさで震えてんぞ…
「残念だったわね。上には上がいるのよ」
「くっ…」
悔しそうにしているが、天原の体は思うように動かない。
もがいている。
「さぁ、連れて行ってちょうだい。主様のところへ」

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