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Episode 594 技術は万能でないのです。

これは私が先日、Twitterで呟いたひと言です。

実は…このハナシには「裏」があってですね。

このツイートに対しての反響の中に、私の意図したモノとは違ったニュアンスのものが混ざっていました。
いや、ほとんど私の意図したものではないイメージでツイートが伝わってしまったように思います。

私は「男女による差は存在するもの」という立場です。
ただし、それはあくまでも「身体的な機能差」に起因する生理的・肉体的な部分のハナシであって、それ故に性別による男女の得手不得手が決まるのだ…とは考えていません。
ただ…昭和高度経済成長期までの社会は、オフィスでの事務作業にしても工場労働にしても家庭内の家事労働にしても、今ほど便利な世の中ではなく、それぞれの仕事はそれぞれに重労働であった…これは前回の記事でお話しした通りです。

それ故に、多くの作業をひとりですることが難しかった…これは分業が理に適っていた理由になり得ると考えます。
子どもを産み育てる側の性…つまり女性が家を預かる一方で、男性は食い扶持を得るために仕事に出る…は、分業せざるを得ないほど世の中が便利ではなかったことの裏返しなのだと、私は思うのです。

女性の社会進出は、この世の中の「重労働」が軽減されてきた成果だということも、前回の記事で指摘したことです。
ただ…現状の世の中は、この女性の社会進出を促す一方で、家庭内での男性の役割を広げて行くことにまだまだ消極的だと感じます。
いや、少しずつ広がってきているとは思いますよ…男性の育休取得に関することとかね。
でも、まだまだ十分とは言えない…社会的な透明度が求められる外仕事環境と異なり、プライベートでプライバシーの問題を多く含む家庭環境は、なかなか外からの「指導」が届きにくいのだ…と思うのです。
ここがジェンダーと呼ばれる問題の大きな温床になっていると感じるのです。

冒頭の私のツイートは、この家庭内での「伝統的な性別による家事分担」の成り立ちを理解した上で、男性の家事労働とASD的なルーティンの相性の良さを指摘したものです。

現代の家事労働はね、ルーティンワークなのですよ…育児を除けばね。
起床してから就寝するまでの家事労働は、炊事・洗濯・掃除に係わる作業でほぼ9割以上です。
では買い物は…と言えば、大体この3点から発生するモノですからね。
女性が一日がかりでこれに取り組まなければならないほど、世の中は便利ではなかった…これが高度経済成長期以前の日本の姿です。
それが、家事労働の自動化・省力化によって、重労働の「重」の部分が相当量緩和されたワケです。
結果として家事労働は、家を守るための重労働から日々の「ルーティンワーク」にポジションを変えたのだと思います。
その上で、女性はこの家事というルーティンワークをこなしながら、社会に出て仕事をする…ここに不平等が発生するワケですね。
一方の男性は「伝統的な社会構成」から家事労働に対して消極的なことが多い…未だにメディアで「家族サービス」などという言葉が生きているくらいに。

ルーティンワークが得意なASDは、家事労働が専業で取り組まなければならない重労働から、省力化されたルーティンワークになったことにアドバンテージが生まれたのだ…と、私は感じます。
日々の安定したルーティンワークは、ASDの生活安定のライフハックの場合が多いからね。
でもね…このルーティンワークには、この「家事労働というルーティンワークがライフハックである」という認識が重要だと思うのです。

日々の安定した反復行動が得意なASDにとって、日々安定した家事労働をこなすことがルーティン化されれば、社会性の枠組みに抵触せずに安心して行動できるワケです。
ただ…この背景としてあるものが「伝統的(昭和の)価値基準」である場合、ルーティンで得られる安心は「家族サービス」という発想と結びつく自分の優位性の確保であって、あなたと私の平等性に根差したものではない可能性が高いと思うのです。

結果として「積極的に家事をしてれば何でも許されると思っているの?」という疑問にぶち当たったあなたが、そのライフハックに疑問を持つ…。

はい、そうなんですよ。
つまりね、障害受容や自己知覚がない(弱い)状態でライフハックに頼るとは、つまりこう言うことなのだと思うのです。

必要なのはライフハックに至るまでの障害受容や自己知覚です。
分かった上で、自分の不安を緩和するためのライフハックなら、上手に使えば良い…ということです。

あなたと私の平等性をナチュラルに考えて行動することが苦手な私が、あなたと私の平等性を機械的に確保できる部分を探し出してルーティンに組み込む…結果としてのライフハックなら、上手く使えばよいと思うのです。

冒頭のツイートは、その背景についての説明がなされていませんでした。
ライフハックとは「小手先のテクニック」であって、本質の解決ではない…ということを、改めて理解する必要があると、私は思うのです。

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